「平素より」という言葉は、普段からの感謝の念を丁寧に伝えることができるため、スムーズに使いこなしたい表現です。
本記事では「平素より」の詳しい意味や成り立ち、豊富な例文を紹介。社内や初めての相手に使えるのかなど、正しい使い方と注意点、「平素は」との違い、言い換えに英語表現もまとめました。
「平素より」の意味とは
「平素より」という言葉は、「常日頃から」や「普段から」という意味を表しています。
分解すると、「平素」の意味は、「常日頃」「いつも」という意味です。そして「より」という言葉は、「~から」といった意味です。
例えば「平素よりお世話になっております」という言葉は、「常日頃からお世話になっている」という意味になります。
「平素より」はビジネスシーンで目にする機会が多い言葉で、主に手紙やメール、お知らせ文などの書き言葉として使われます。丁寧で、かしこまった印象の言葉です。
読み方は「へいそより」です。
熟語の成り立ちについて
「平」は、平らな状態を表しており、凹凸のない状態、穏やかな様子を表現しています。「平穏・平和」という言葉にも使われていることから、普通な毎日のことを意味しています。
「素」は、ありのままの様子を表現しており、この2つの漢字が組み合わさることで、「変わらない毎日・変哲のない日々」を表現できるのです。
「平素は」との違い
「平素より」と「平素は」について、同じ漢字が使われていることもあり、同じように使えると勘違いしている方もいるかもしれません。
「平素は」は、過去にあったことを表しており、定型文として活用されます。手紙や招待状など硬い場面で使うことが多いです。
「平素より」の方がくだけた表現で、過去から現在に至るまでのことを表しています。また、定型文以外でも使われているので、聞きなじみのある言葉でしょう。
「平素より」の正しい使い方と注意点
ここからは、失礼のないように「平素より」を使うためのポイントについて解説していきます。お世話になっている相手に失礼のないように、使い方をマスターしていきましょう。
ビジネスメール・文書の書き出しに使うことが多い
一般的には、ビジネスメールやビジネス文書、手紙などの冒頭に記載することが多い言葉です。「平素よりお世話になっております」から始まる文面を目にしたことがある人は非常に多いのではないでしょうか。
挨拶の定型句として使われることが多いので、ビジネスメールを作成する際には、この文言を使ってみるのがおすすめです。
初めての相手には使わない
「いつも」「普段から」という意味を持つ「平素より」は初対面の相手や面識のない人には使いません。初めて連絡する相手なのに、いつもお世話になっているという表現には違和感があるはずです。
これまで面識がある相手に対してのみ、使うように気をつけてましょう。
また、店舗の新オープンを伝える挨拶状などにも、「平素より」は好ましくありません。自分と相手の関係性を見直して、使っても問題ないかどうかを判断してください。
文章全体のバランスに気をつける
「平素より」は、いつも・普段からといった表現よりも硬い表現になります。そのため、それ以降の文章がフランクな感じでつながっていると、なんとなく違和感を生じさせてしまいます。
挨拶文だけが硬くなってしまう場合、「いつもお世話になっております」など少しくだけた表現に置き換えてもいいでしょう。
社内メールでは使用しない
「平素より」は硬い表現であるため、社内メールや、親しい人への手紙などで使うことはほとんどありません。
特に日常的なやりとりに使用すると、丁寧過ぎて違和感を与えてしまいます。
社内文書に用いられることはありますが、その場合、辞令などかなりフォーマルな文書に限定されます。
「平素より~」と連絡が来たら同じように返す
相手方から、「平素よりお世話になっております。」から始まるメールや手紙をもらった場合は、同じように「平素よりお世話になっております」から始めて返信をしましょう。決まったルールはありませんが、いつもお世話になっていることの感謝を述べておくと関係性も良好に保てるはずです。
「平素より」を使った例文を紹介
注意点をおさえたうえで、例文と共に使える場面を把握していきましょう。
「平素より大変お世話になっております」
最も使われる機会の多い言い回しでしょう。本題に入る前の挨拶として使い、日頃の感謝を伝える文面になります。「いつもお世話になっております」よりも硬い表現になるので、目上の人に対してだったりかしこまった文章を作ったりするときに使ってみましょう。
「平素よりご厚情を賜りありがとうございます」
「ご厚情」は、目上の人から受ける思いやりや心配りを意味しています。そのためこの例文は、いつも特にお世話になっている目上の方への感謝を述べたい場合などに使います。特にかしこまった文面で使うことが多く、年賀状やお礼状でも使える表現です。
「平素より弊社にご尽力いただきありがとうございます」
尽力という言葉が入っていますが、「ご~いただき」の形になっているので目上の人にも使える表現です。プロジェクトへの協力など、業務を助けてもらったことへの感謝を伝えたいときに使いましょう。取引先からいただいた助言のおかげで成功したという場面で使ってみても、喜んでもらえるでしょう。
類語・言い換え表現との違い
ここからは「平素より」と似ている言葉について紹介していくので、違いを把握して、正しく使い分けられるようにしましょう。
「日頃より」との違い
ほとんど同じ意味をもちますが、ややくだけた表現になっているのが「日頃より」です。身近な相手やカジュアルな場では、この表現に置き換えてみるのもいいでしょう。
ただ、目上の人ばかりいるような場や、かしこまったスピーチをする場合には、「平素より」を使うことをおすすめします。
「常々」との違い
こちらも同じ意味の言葉で、丁寧な印象を与えることができます。
「常々お世話になっております」という表現は、ビジネスシーンでも使われることがありますが、メールなどの挨拶文よりも口頭での会話などで使われることが多いようです。
「毎度」との違い
いつもという意味を持つため、類義語ではありますがカジュアルな印象が強い言葉です。くだけた印象を与えるので、かしこまった場面や文章では使うことが少なく、親しい間柄で口語的に使われるのが一般的です。
小売店などで「毎度ありがとうございます」と使われることが多いです。
「平素より」の英語表現
「いつも」「普段」という意味を持つ「平素より」を英語で表現したいのであれば、「always」を使うのが適しています。いつもという意味を持っており、単語一つで成立するので、「from」などを使わないように気をつけましょう。
「Thank you for always supporting us」とすれば、「いつもお世話になっております」という気持ちを表現することができます。しかし通常のメールのやりとりなどではこういった表現は使わず、「Hi」といった簡単な挨拶だけで、すぐに用件に入ります。
いつもお世話になっている相手に「平素より」で丁寧に感謝を伝えよう
いつもお世話になっていることを伝えたい場合に、少しかしこまった表現になる「平素より」はメールや手紙などで使われることが多い言葉です。上司や先輩に対する感謝の気持ちを伝えるのにも使えますが、どちらかと言えば取引先など社外の人に対して使う言葉です。
日常会話では使わないのでなじみがない言葉かもしれませんが、初対面の方に使ってしまったり、文章全体とのバランスがとれていなかったり、使い方を間違えてしまうとかえって失礼になってしまうこともあります。正しく感謝を伝えるためにも、ポイントを守って使いましょう。