• 『今夜はナゾトレ』(フジテレビ系 毎週火曜19:00~) (C)フジテレビ

――そんな火曜7時台で戦っている皆さんですが、裏になるお互いの番組について、印象はいかがでしょうか?

加藤:『ナゾトレ』は、視聴者さんに見てもらうための工夫がすごくされているなという印象があります。『オモウマい店』でゴールデンをやるにあたっていろんな番組を見て研究をしてたんですけど、テロップで「小学生が解ける」とか「教科書に載ってる」という言葉が乗っけられていて、それを見ると「自分も解けるかなあ」と思っちゃうんですよね。さらによく見ると「解けたらナゾトレIQ150」とも小さく書いてあって、やる気をかき立てられる。その画面構成がすごく勉強になりました。あれがテロップされていることで視聴者も考えるし、後輩と見ていたんですけど、研究のつもりだったのが「俺、IQ150だわ~」とか言って楽しんじゃって、気づいたら1時間経ってて、「あーしまった!」みたいな(笑)

木月:何年かでようやく行き着いた結果ですけどね。ゴールデンって試行錯誤の繰り返しですよね、米田さん。

米田:そうですね。僕も『ナゾトレ』をめちゃめちゃ見てるんですけど、ちょっと恐ろしい裏番組だと思ってて(笑)

木月:恐ろしいですか?(笑)

米田:クイズや謎解きをやる番組のふりをしてるけど、実は仮面をかぶった総合バラエティだと思ってます(笑)。何でもできるようになっていて、流行や時事ネタもものすごい早さでタイムリーに入ってますし。

木月:見抜かれましたね(笑)

米田:どうにでもできるような作りになってるから、それは強いなと。こっちは「家事が飽きられちゃったらどうしよう」というのがありますから。あとは加藤さんのおっしゃっていた画面の構成や加工もめちゃくちゃ参考になって、スタッフにも『ナゾトレ』の話はよくしています。例えば情報のテロップって、カッコつけて雰囲気で入れたくなっちゃうんですけど、『ナゾトレ』は本当に視聴者に一緒に考えてもらうための文字や絵の最適なサイズが考えられているから、あの画面を見るとつい解いちゃうんですよね。そこって、すごく意識されてるんじゃないですか?

木月:クイズの正解となる言葉の文字を、ヒントとしてひらがな1文字とか2文字だけ部分的に開けているのですが、一番意識してるのはその開け方ですね。ここは「っ」を開けようとか、ここは「ー(伸ばし棒)」だけ出そうかとか、1個1個チェックして、一番面白く考えたくなるのはどれかというのを考えるクイズ会議をずっとやってます。

加藤:へぇ~

米田:そうなんだ! それでまんまとハメられてたんだ(笑)。でも、すごく完成されてますよね。

木月:まだ試行錯誤しながらですけどね。

米田:音楽も途中でテンポが上がったり、いろいろ考えられていて総合的ですよね。そういう“引っかかる”要素がいっぱいあるようにちゃんと作られてるのも、今日のテーマでもある「7時」という感じがすごくします。

木月:そうですね。7時で戦う上でどうしようかというのは、考えますよね。

■熟成されたチームプレーを生かすために

米田:あと、『ナゾトレ』って、クイズのパッケージなのにめちゃくちゃ笑いが多いですよね。くりぃむさんやタカトシさんが短い尺で笑いを作るということに長けていることもあると思うんですけど、クイズって問題を振ってから正解が出るというスタートとゴールがあるから、そのブロックで別に笑いがなくても完結できるじゃないですか。でも、『ナゾトレ』って毎回ちゃんと笑いでそのブロックを落としているんですよ。本題のクイズに時間を割いてるから、演者さんたちのやり取りの尺ってある程度限られてるはずなので、笑いが多いのはすごいことだし、丁寧だなと思って。

木月:本当にくりぃむさん、タカトシさん、柳原(可奈子)さんたちが短いスパンで笑いをとるチームプレーにものすごく長けてらっしゃるんですよね。『ペケ×ポン』から14年くらいやられているのでものすごく熟成されたチームプレーです。そして僕は『ペケ×ポン』のチームから受け継いで初めて上田(晋也)さんの回しを収録で体験したんですけど、この回しが本当にすごいんですよね。トークの立ち上げからオチまで、ものすごいスピードで持っていかれる。そういうこともあって最近では収録上、VTR出題のクイズ問題を減らしたんです。VTR中だと尺制限もあって自由にトークするのは比較的難しいですが、静止画出題だと問題が一旦出題された後は、いくらボケてツッコんでのトークがあっても、視聴者さんにとっては楽しいシンキングタイムになりますので、尺をあまり気にせず自由にトークしていただけるようになりました。

米田:だからライブ感があって、あんまりスタジオパートが分断されてないんですね。なるほどなあ。それだと本線の中で笑いを作れるから、クイズなのにあんなに笑いを入れられるんですね。

次回予告…激戦!火7バラエティ演出編~<2> 企画書に書けない『オモウマい店』が発明になった理由

●米田裕一
1981年生まれ、新潟県出身。東京理科大学大学院卒業後、07年にテレビ朝日入社。『くりぃむナントカ』『いきなり!黄金伝説。』『中居正広のミになる図書館』『陸海空 地球征服するなんて』のほか、『濱キス』~『キスマイレージ』までKis-My-Ft2の全番組を担当。現在は『家事ヤロウ!!!』のほか、『サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん』『帰れマンデー見っけ隊!!』『10万円でできるかな』で演出を務める。

●加藤優一
1986年生まれ、愛知県出身。豊橋商業高校卒業後、07年に制作会社「マーナイス」に入社し中京テレビ放送制作部に配属。『PS』『前略、大徳さん』『PS純金』などを担当し、現在は『ヒューマングルメンタリー オモウマい店』の演出を務める。

●木月洋介
1979年生まれ、神奈川県出身。東京大学卒業後、04年にフジテレビジョン入社。『笑っていいとも!』『ピカルの定理』『ヨルタモリ』などを経て、現在は『新しいカギ』『痛快TV スカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』『出川と爆問田中と岡村のスモール3』『千鳥の対決旅』『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』などを担当する。