「ひもとく」という言葉は漢字で「紐解く」と書くように、書物や巻物の紐を開いて読むことから生まれた言葉です。しかし、漢字では「繙く」と見慣れない書き方もあり、本来の意味を知らない方もいるのではないでしょうか。

この記事では「ひもとく」の意味や使い方、類語について解説します。ビジネスシーンで役立つ英語表現についても紹介していますので、ぜひ読んでみてください。

  • 「ひもとく」の意味

    「ひもとく」の意味

「ひもとく」の意味

「ひもとく」という言葉は漢字で「紐解く」「繙く」と書き、漢字によって意味が異なります。それぞれの意味を見てみましょう。

■紐解く

「衣服の紐を解くこと」という意味があり、特に下紐をほどくことを意味しています。辞書では「つぼみが開くこと」という意味でも記載されています。

■繙く

「書物の帙(チツ)の紐を開いて読むこと」「書物の知識に触れること」という意味があります。

現代は「繙く」の意味でも「書物の知識に触れること」という意味だけではなく、「真実を明らかにする」「疑問を解明する」という意味でも使われています。しかし、「繙」は常用漢字ではないため、ひらがなに開いた「ひもとく」という表記が主流になっています。

  • 「ひもとく」の使い方を見ていきましょう

    「ひもとく」の意味

「ひもとく」の使い方と例文

「ひもとく」はもともとは「書物を開く」「書物を読む」という意味で使われていました。現在では、それ以外に新たな意味も加わっています。使い方と例文を見てみましょう。

・町の歴史をひもとく

この表現は、以前は「町の歴史について記録した書物を読む」という意味で使われていました。現在では「町の歴史についてそれぞれの時代背景や変遷などくわしく知る」という意味で使われるようになりました。

・こちらの絵画に秘められた謎について講師がひもときます

絵画に秘められた謎や作者の意図、書かれた内容、モチーフの意味や魅力について、講師が解説して明らかにするという意味で使われています。

そもそも「ひもとく」は書物を開いて読むという意味。書物を開いただけでは詳細はわかりません。書物を「ひもといた」あとに、知識を得られたり疑問が解明できたりするということから、現在のような用例が広がったと考えられます。

  • 「ひもとく」という言葉は昔と今で用途が異なっています

    「ひもとく」の使い方と例文

「ひもとく」の類語

「ひもとく」には意味が複数あるように、似ている言葉もいくつか存在します。もともとの意味と現代多用されている意味と似ている類語をご紹介します。

■閲覧

「閲覧」は「調べながら読む」という意味の動詞です。書物や新聞、ウェブページなどの情報媒体で内容を調べながら読むことを表しています。

「調べて読む」意味を持つ「閲」と、「広く見渡す」意味を持つ「覧」から成り立っていることから、情報量のある書物や、いくつかの本をじっくりと読む、調べみるという意味があることがわかります。

・このパソコンのファイルは誰でも閲覧が可能です
・サイト閲覧者はいつも右端に表示される

図書館の「閲覧コーナー」は基本的に見て楽しむものであり、借りることはできません。そのため、上記の例文ではファイルの閲覧はできるがダウンロードはできないことを表しています。

■多読

「多読」は文字どおり、多くの本を読むことを表している言葉です。「多読」は以下のように使います。

・英語の学習方法には「多読」が効果的だ
・彼の性格上、向いているのは精読よりも多読のほうだろう

同じジャンルの本を多く読んで知識を得る「多読」に対して、内容をさらに掘り下げていくことを「精読」といいます。「ひもとく」の類語としては「多読」だけではなく、ニュアンス的には「精読」も含まれるでしょう。

■拝読

「拝読」は「読むこと」の謙譲語です。本の筆者やメールの差出人を敬うときに使われます。上司から借りた本に対して「拝読しました」という使い方だと上司には敬意を払っていないことになります。誰に対して敬意を払っているのか、意識して使うのがポイントです。

・ご著書を拝読しました
・さきほど営業部の方からいただいた資料を拝読しましたが、誤りがありました

ビジネスシーンでは「拝読いたしました」とよく目にしますが、「拝読する」と「する」の二重敬語にあたるため、正しくは「拝読します」です。同じように「拝読させていただきます」も文法的には誤った表現です。しかし、よく使われていることもあるので自身で使うときのみ気を付ける程度でいいでしょう。

■解き明かす

「解き明かす」は「問題を解いて意味を明らかにする」という意味を持つ言葉です。「解明する」ともいいます。近年使われるようになった「ひもとく」の意味ととてもよく似た意味を持っている言葉です。

・ピラミッドの謎を解き明かす
・彼の研究により真実が解き明かされた

「解き明かす」は「解く」と「明かす」から成り立っています。「ひもとく」を使って同じような言葉を作るなら「ひもといて調べる」があっているでしょう。

ただし、今は「ひもとく=解き明かす」と認識している方も多くいます。ニュアンスの違いを意識して使いわけてみましょう。

  • 「ひもとく」の類語

    「ひもとく」やその類語の持つニュアンスに着目して使い分けるとよいでしょう

「ひもとく」の英語表現

「ひもとく」は英語で「paruse」「Unravel」と表現できます。それぞれの使い方を見ていきましょう。

■ paruse

「paruse」は「精読する」「熟読する」という意味がありますが、「ひもとく」としても表現できます。

・This novel was perused by her
彼女によってこの小説はひもとかれた

■ unravel

「unravel」は「解明する」という意味で「ひもとく」を表現できます。伝統用法の「紐を解く」という意味でも使用することが可です。

・I unraveled my aunt's tangled yarn
私は叔母のもつれた毛糸を解きほぐした

・Unravel the mystery of the area
その地域の謎を解き明かす

「ひもとく」を英語で表現する際は、単語の持つニュアンスに着目してうまく使いわけましょう。

  • 「ひもとく」の英語表現

    「ひもとく」の意味を理解して、ビジネスシーンでも役立ててください

「ひもとく」は昔と使い方が違う言葉

「ひもとく」という言葉は書物を開く、本を読むといった意味があります。しかし、現代において書物や本を読む際に「紐解く」シーンはないことから、歴史などを解明する、明らかにするといったニュアンスで使われていることが多いです。

この記事では「ひもとく」の意味や使い方、類語について解説しました。辞書に掲載されている意味と異なる用途のほうを目にする機会が多いため、戸惑う方もいるでしょう。

日常会話ではあまり使わない言葉ですが、新聞や広告、本などではよく目にする言葉です。動詞的な意味から変化した「ひもとく」のニュアンスを知ることで、表現の幅を広げることができるでしょう。

本を広げて新たな知識を得る際にも「ひもとく」は使われます。文章に応じて「ひもとく」の持つニュアンスを意識して使ってみてください。