「ひどくて手がつけられない」「何も取り柄がない」などの意味で使用される「箸にも棒にも掛からない」。日常会話やビジネスシーンで利用されることも多い表現ですが、文脈によって意味が異なってくるため正確に把握していないと相手の意図を取り違えてしまうことも。

この記事では、シーンによって違う「箸にも棒にも掛からない」の意味を、例文とともに確認します。語源や類語、英語の表現についても確認します。

「箸にも棒にも掛からない」と言われた時に、どの意味をさしているのかが正確にわかるように覚えておきましょう。

  • 箸にも棒にも掛からないの意味

    箸にも棒にも掛からないの意味は「ひどくて手がつけられない」

「箸にも棒にも掛からない」の意味

箸にも棒にも掛からない、とは「ひどすぎてどうにもならない」「どうしようもない」という意味の慣用句です。そこから、「(ひどすぎて)改善しようがない」、「(あまりにもひどくて)使い物にならない」、「(ひどいところばかりで)取り柄がない」などという意味にも使用されます。

「箸にも棒にも掛からぬ」も同じ意味です。「とてもひどい」という根底の意味はいつも同じですが、文脈によってさしている内容が変わってくる慣用句でもあります。場面に合わせて、「何がひどいのか」を考えることで、適切な意味を理解できるようになるでしょう。

ちなみに、言葉の見た目から「引っ掛からない」という意味が連想されるため、「捜索の手がかりがない」という意味で誤解される場合もありますが、そのような意味はありません。「家出したお姉さんの手がかりは、箸にも棒にもかからなかった」などとは使わないようにしましょう。

「箸にも棒にも掛からない」の語源

「箸にも棒にも掛からない」とは、見た目通り短い箸にも長い棒にも引っ掛からないものが、どうにも扱いづらく手に負えないところから生まれた言葉です。引っかけられるような部分がなく、箸を使うには大きすぎる、だからといってもっと大きな棒を使ってもうまく扱えないところから、「取り柄がない」「どうにも持て余してしまう」という意味になりました。

「箸にも棒にも掛からない」の使い方・例文

文脈によって意味する内容が変わってくる「箸にも棒にも掛からない」。ビジネスシーンでは、見当違いのことをしている場合や手がつけられない際に使われますし、人間の性格などに対して使用される場合は取り柄がない、などの意味になるでしょう。受験や試験の際には見込みがないなどという意味にもなります。

また、「箸にも棒にも掛からない」は強く否定的なニュアンスのある言葉となります。そのため、目上の人間に使ったり、相手に面と向かって使用したりするのは避けるべきです。

ビジネスシーンや日常会話に使える例文

例文をもとに、どのように使うべきかを確認してみましょう。

・うちの弟は働かずにいつもゴロゴロしてばかりで、箸にも棒にも掛からない男だ (= ひどくて取り柄が思いつかない)
・新入社員の作ったプレゼンテーションは、箸にも棒にも掛からないものだった (= ひどい出来で使い物にならなかった)
・箸にも棒にも掛からない新人に、教育係が手を焼いている (= 改善しようがないほどダメだ)
・「大学受験をしたい」と親に言ったら、「あんたじゃ箸にも棒にも掛からないよ」と笑われてしまった (= まったく見込みがない)
  • 箸にも棒にも掛からないの意味

    箸にも棒にも掛からないは、「何がひどいのか」を読み取るようにしましょう

「箸にも棒にも掛からない」の類語や言い換え表現

とてもひどくて手に負えない、取り柄がないなどの意味で使用される「箸にも棒にも掛からない」。例文とともに、言い換え表現も一緒に確認しておきましょう。

話にならない

「話にならない」は「話し合うだけの値打ちもない」「問題外である」という意味の慣用句。「お話にならない」とも言います。あまりにも条件が違っていたり、的はずれなことを言っていたりして、話をするだけ時間の無駄になってしまうという場合に使用します。 「あまりにもひどくて問題にもならない」「見込みがない」という際に、箸にも棒にも掛からないの言い換え表現として利用できます。

・彼に具体的な改善案を聞いたが、精神論しか言わず話にならなかった
・採用希望者の履歴書が送られてきたが、どれもお話にならないレベルだった。面接する必要なんてないよ

手がつけられない

「手がつけられない」は、「どうにかする方法がない」「処置の施しようがない」という慣用句。何かの程度がはなはだしく、もうどんなに頑張ってもその状況を変えられない、あるいは変化させるための手段がないという意味です。

「箸にも棒にも掛からない」は、程度が低すぎて方法がない場合に使いますが、「手がつけられない」は、程度や勢いが激しすぎて制御ができない場合にも利用できます。

・彼は手のつけられない乱暴者で、毎日酔っ払ってはケンカばかりしている
・納屋に住みついたネズミは増える一方で、手がつけられなかった

煮ても焼いても食えない

「煮ても焼いても食えない」は見た目通り、どうやっても食べることのできないもの、つまり「どうしようもない相手」「どうやってもうまく扱えない様子」を表します。主に人の性格や性質について表し、一筋縄でいかない相手だったり、相手のほうが経験豊富であったりするために扱いがうまくいかない際に使う言葉です。

「煮ても焼いても食えぬ」とも言いますが、「煮ても焼いても食べられない」とは言わない点に注意しましょう。

・噂通り、彼は煮ても焼いても食えない男だった。うまくしてやられたよ
・ちょっとよい返事をもらえたからと言って安心しちゃいけないよ、あの政治家は煮ても焼いても食えないんだから

同じ意味の慣用句に「酢でも蒟蒻でも」もあります。こちらも、下には必ず打ち消しの言葉をつけて使います。

  • 箸にも棒にも掛からないの類語

    箸にも棒にも掛からないの類語は「手がつけられない」「話にならない」など

「箸にも棒にも掛からない」の英語表現

「箸にも棒にも掛からない」を英語で表現する場合、当然ですがそのまま英訳しても意味が通じません。場面や文脈に合わせて、hopeless (見込みがない、絶望的な)、unmanageable (手に負えない)、incorrigible (救いがたい、矯正できない)などの表現に言い換えましょう。

・She is a hopeless woman who can only think of herself
(彼女は自分のことしか考えられない、箸にも棒にも掛からない女だ)
・The person who has been transferred is unmanageable, and the boss is wondering what kind of work he can do
(転勤してきた人が箸にも棒にもかからず、彼がどんな仕事ができるのか、上司は頭を抱えている)
・All of the design proposals he submitted were incorrigible bad
(彼が提出したデザイン案は、どれも手に負えないほど悪いものだった)
  • 箸にも棒にも掛からないを英語で表現すると?

    箸にも棒にも掛からないの英訳はhopeless 、unmanageable 、incorrigible など

「箸にも棒にも掛からない」を目上の人に使わないよう注意

まったく違うことをしていたり、手がつけられないほどひどかったりする様子をさして使われる「箸にも棒にも掛からない」。「ダメだ」というニュアンスを含むので、目上の人や親しくない相手に使用するのは避けたほうが無難です。

よりコンパクトな表現にしたい時は「見込みがない」「取り柄がない」などに言い換えるといいでしょう。また、類語表現として「煮ても焼いても食えない」などがあります。

ビジネスシーンで「箸にも棒にも掛からない」と言われないよう、顧客ニーズを正確に汲みとった企画を作ったり、自分の得意スキルを伸ばしたりしていきましょう。