「愕然(がくぜん)」は、非常に驚いた様子を表す表現のひとつです。比較的堅い言い回しですので、ビジネスシーンでも活用しやすく、社会人なら覚えておいて損はありません。

この記事では、「愕然」の意味や使い方とともに、「茫然」「唖然」など似た意味を持つ言葉との違いを紹介。類語や対義語、英語表現についてもまとめました。

  • 「愕然」とは

    愕然(がくぜん)の意味や使い方、「唖然」「茫然」との違いなどを紹介する記事です

愕然(がくぜん)とは

「愕然」は「がくぜん」と読み、大変驚く様子を表す表現です。

「愕然」の「愕」という漢字は常用漢字ではなく、「驚く」という意味があります。「然」は、状態を表す漢字の後に添えて使われる漢字です。

比較的ネガティブな意味で思いのほか驚いた状況を、「愕然とした」などと表現し使用されます。

古くから使われている表現

「愕然」という表現は日本で古くから使われており、9世紀頃の「続日本後紀」という書物の中ですでに登場しています。他にも16世紀頃の「寛永刊本蒙求抄」や、19世紀頃の「西洋聞見録」でも使われていました。

つまり「愕然」は少なくとも平安時代から使用されている表現で、日本人の言葉として馴染み深いものであることがわかります。

「愕然」の使用例

「愕然」は比較的ネガティブな驚きに対して使われることが多い言葉です。日常会話はもちろん、ビジネスシーンでもしばしば使われます。

下記の例文を参考にして、「愕然」を使うことができるシーンを押さえておきましょう。

・夕方になって明日が締め切りだということに気付いて愕然とした
・あまりにも冷たい彼女からのメールを見て愕然とした
・真実が明かされたがあまりにも突飛な内容に、皆愕然としていた
・彼らの表情から愕然としている様子が見て取れる
・急な路線変更に皆愕然とした様子だったが、彼女は即座に次の一手を考えていた

  • 「愕然」の使用例

    「愕然」の具体的な使用例を紹介しました

「愕然」の類語・対義語

「愕然」は大変な驚きを表すのに適した表現ですが、少し大げさな印象を持たれることもあります。状況に合わせて使い分けるために、言い換え表現も覚えておきましょう。ここでは、「愕然」の代表的な類語と対義語を紹介します。

驚嘆(きょうたん)

「驚嘆(きょうたん) 」は、いいできごとや想像もしなかった物ごとに遭遇したことで、驚いて心を奪われるという意味です。

「驚」という漢字には「驚く」という意味があります。「嘆」の意味は「なげく」と「感心する」とがありますが、「驚嘆」で使われる場合は「感心する」という意味です。

「愕然」は比較的ネガティブなシーンで使われることが多く、「驚嘆」と使われる状況は少し異なるものの、「驚く」ということでは一致しています。

驚愕(きょうがく)

「驚愕(きょうがく)」とは、「大変驚くこと」という意味がある言葉です。

「驚」も「愕」も「驚く」という意味があり、2種類の同じ意味の言葉を重ねて強調しています。「驚愕」はいい意味でも悪い意味でも使われることから、「愕然」に比べると少し広い意味で使われる言葉です。

驚き

「驚き」とは、「驚くこと」「驚くべき事柄」などの意味がある名詞です。いい意味でも悪い意味でも使える表現で、「愕然とした」を「驚きだった」などに言い換えられます。

目を洗われる思い

「目を洗われる思い」とは、とある物ごとに対して驚くことです。いい意味での驚きに対して使われることが多く、「愕然」と使われる状況はやや異なるものの、「驚く」という意味では共通しています。

対義語は「平然(へいぜん)」

「平然(へいぜん)」は、「何も起こらなかったかのように落ち着いている様子」という意味の言葉です。とあるできごとが起こった時に愕然とする様子とは対極の意味を表します。

「あの発表を聞いて皆愕然としていたが、彼女だけは平然としていた」などのように、「愕然」と正反対の様子を表す表現として覚えておきましょう。

  • 「愕然」の類義語

    「愕然」にはさまざまな類語がありますので状況に応じて言い換えましょう

「愕然」と誤用しやすい? 注意したい表現

「愕然」は同じ「然」という漢字を用いた「唖然」「茫然」「呆然」などの表現と意味を混同しやすい表現でもありますので使い方には気を付けましょう。ここでは、「愕然」と「唖然」「茫然」「呆然」との違いを紹介します。

唖然(あぜん)との違い

・大臣の失言に、居合わせた全員が唖然としていた

「唖然(あぜん)」の意味は、「思いもよらないできごとに遭遇した結果、驚きとあきれて声も出ない様子」「あっけにとられる様子」などです。「唖然」の「唖」には「言葉が話せない」という意味があることから、声も出ないほどのあきれや驚きに対して「唖然」が使われます。

「愕然」は「驚き」であるのに対して「唖然」には「驚き」「あきれる」両方の意味が含まれている点に気を付けて使い分けましょう。

呆然(ぼうぜん)・ 茫然(ぼうぜん)との違い

・プロジェクトの急な路線変更が発表されたせいで、茫然(呆然)として何も手に付かなかった
・あの会社の社長は記者会見での失言が多く、周りをしばし茫然(呆然)とさせている

「呆然(ぼうぜん)」「茫然(ぼうぜん)」は、「あっけにとられる様子」「気が抜けてぼんやりする」といった同じ意味がある言葉です。それぞれの漢字「茫」には「ぼんやりしてうつろな様子」、「呆」には「ぼんやりとした」「あっけにとられる」などの意味があります。

「愕然」が「驚く」という意味が強いのに対して「呆然」「茫然」は「あっけにとられる」または「ぼんやりする」などの意味が強い点に注意して使い分けましょう。

  • 「愕然」と誤用しやすい? 注意したい表現

    「愕然」と「唖然」「茫然」「呆然」との違いや使い分け方を紹介しました

「愕然」の英語表現

ビジネスや日常生活で英語を使う機会があるなら、「愕然」の英語表現も覚えておくと便利です。ここでは、「愕然」の代表的な英語表現を紹介していきます。

in astonishment

「astonishment」は「驚き」という意味がある英単語です。「in astonishment」という表現が、「愕然として」「驚いて」などの意味で使われます。

・He opened his eyes wide in astonishment.(彼は愕然として目を見開いた)

shock

「shock」には「衝撃」「驚き」などの意味があります。動詞として使う場合、「be shocked」などの受動態で「愕然とする」の英語表現として使われます。

・ She was shocked to hear the news. (彼女はそのニュースを聞いて愕然とした)

amazement

「amazement」は「驚き」という意味がある言葉です。「in amazement」という表現が「愕然として」という意味で使われることがあります。

・They looked on that report in amazement.(彼らは愕然としてそのレポートを眺めていた)

  • 「愕然」の英語表現

    「愕然」の英語表現として使える英単語はいくつかあります

愕然はビジネスシーンでも使える驚く様子を表す言葉

「愕然」とは、非常に驚く様子を表した言葉で、「愕然とした」などの表現が一般的です。「茫然」「唖然」など似た意味を持つ言葉は多いですが少しニュアンスが異なるので使い分けられるようになりましょう。

また、「愕然」は少し堅い言い回しでビジネスシーンでも使いやすい言葉です。よりカジュアルな場面であれば「驚き」に言い換えるなど類語も一緒に覚えておきましょう。