JR九州は12日、D&S列車「36ぷらす3」を博多~長崎間で臨時運行し、報道関係者向けの試乗会を実施した。「36ぷらす3」は10時30分頃、博多駅6番のりばに入線。JR九州の職員たちに見送られ、10時51分に博多駅を発車した。

  • 「36ぷらす3」が博多駅6番のりばに入線

    「36ぷらす3」が博多駅6番のりばに入線

「36ぷらす3」は特急形電車787系1編成(6両編成)をリニューアルし、2020年10月から運行開始したJR九州のD&S列車。黒い森をイメージしたメタリック塗装を施し、車体の各所にロゴマークをあしらった外観、1~3号車をグリーン個室、4号車をマルチカー、5~6号車をグリーン席とし、3号車にビュッフェを設け、落ち着きと快適な居住性の提供をめざした車内空間が特徴となっている。木曜日から月曜日まで5日間かけて九州7県を巡り、月曜日ルートでは日中時間帯の博多発長崎行に加え、折返しの長崎発博多駅にて同列車唯一のディナータイム運行を行う。

6月22日から7月14日まで、梅雨に伴う計画的な運休期間が設定され、この間に車両の点検・整備を実施。7月15日から夏・秋の運行を再開する。これに先立ち、7月12日に博多~長崎間で臨時運行が行い、報道関係者らを対象に試乗の機会が設けられた。今回は月曜日ルート(博多発長崎行)と同様の行程で鹿児島本線・長崎本線を走行。ランチプランの食事提供に加え、途中の肥前浜駅で約55分間停車し、駅ホーム直結の日本酒バー「HAMA BAR」でのおもてなしなど行うとのこと。

  • 「36ぷらす3」は博多駅を10時51分に発車し、長崎駅へ向かう

  • ランチプラン(座席)の「世界を旅するフュージョンBOX」

  • ランチプラン(個室)の「博多から西九州へ味めぐり」

  • 「36ぷらす3」の3号車。障子の枚数を変更している

「36ぷらす3」の月曜日ルート(博多発長崎行)では、3月からランチプラン(座席)の弁当が変更され、福岡市の「ニシムラタカヒト・ラ・キュイジヌ・クリアテヴィテ」による「世界を旅するフュージョンBOX」を提供している。フランス料理の枠にとらわれず、日本料理・中国料理・イタリア料理などさまざまなジャンル・技法を融合させた「“その日”だけのスペシャリテを詰め込んだ特製弁当」で、「九州の旬な食材を通して世界を感じていただきたい」との思いを込めたという。なお、ランチプラン(個室)は福岡市の「日本料理 ながおか」による「博多から西九州へ味めぐり」を提供する。

車内において、3号車の障子がリニューアルされており、障子の枚数を2枚から4枚に変更。窓中央部の視界をより広くしている。7月15日の運行再開に合わせ、車内で販売される「“季節の日本酒”飲み比べセット」(1,800円)もリニューアル。「三井の寿 夏吟醸 Cicara」(福岡・みいの寿)、「鷹来屋 特別純米 夏酒」(大分・浜嶋酒造)、「天吹 純米大吟醸 夏色」(佐賀・天吹酒造)をセットにした。7月15日以降、車内でのエピソード紹介もリニューアルする予定となっている。

佐賀駅を12時20分に発車した「36ぷらす3」は、長崎本線と佐世保線が接続する肥前山口駅で列車待ち合わせ。肥前山口駅は2022年秋頃、駅名を町名と同じ「江北(こうほく)」へ改称する予定となっている。肥前浜駅には13時4分に到着。13時58分に発車するまで、「肥前浜宿水とまちなみの会」の協力により、肥前浜宿酒蔵通り散策が行われたほか、駅前広場に物販ブースが設けられ、「HAMA BAR」にて肥前浜宿のお酒も提供された。

  • 肥前山口駅は2022年秋頃、「江北(こうほく)駅」へ改称予定

  • 4号車「マルチカー」で肥前浜宿を紹介する動画が放映される

  • 肥前浜駅に到着。横断幕を掲げ、「36ぷらす3」を出迎えた

  • 肥前浜駅に停車中の「36ぷらす3」

  • 駅前には物販ブースが設けられた。駅隣接の「HAMA BAR」で肥前浜宿のお酒も楽しめる

肥前浜駅から先、進行方向左側の車窓に有明海が見え、諫早駅が近づくにつれて島原半島も眺められる風光明媚な区間となる。なお、2022年秋頃に予定される西九州新幹線武雄温泉~長崎間の開業後、並行在来線となる長崎本線肥前山口~諫早間は引き続きJR九州が運行を担う一方、鉄道施設を佐賀県・長崎県が買い取って所有し、その大部分を非電化区間にする予定と報じられている。当初、並行在来線のうち電化を維持する区間は肥前山口~肥前鹿島間のみとされたが、徹底したコスト低減を実施するため電化区間を肥前浜駅まで延伸することを佐賀県、長崎県とJR九州の3者が確認し、これにともない追加となる電化設備の維持・更新費はJR九州が負担することとなった。

「36ぷらす3」は昨年10月のデビュー後、今年6月21日までに計189本を運行し、約1万人が利用したという。これまでに梅雨の大雨による影響で2本が運休(うち1本は一部区間のみ運休)となったものの、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う運休はなく、7月1日時点で予約率は約50%。ここにきて団体の利用が増え、7月の連休を皮切りに予約数も増えており、「とくに木曜日の鮨プランはほぼ完売している状況」との説明もあった。現在は9月分まで予約を受け付けている。