JR九州が新D&S列車「36ぷらす3」の報道試乗会を実施。前日の金曜日ルート「黒の路」(鹿児島中央発宮崎行)に続き、10月10日は土曜日ルート「緑の路」(宮崎空港発別府行)と同様のスケジュールで運行された。

  • 重岡駅に停車中の「36ぷらす3」。土曜日ルート「緑の路」の報道試乗会が10月10日に行われた

土曜日ルート「緑の路」については、「神話にまつわる地が多く存在する宮崎から、湯煙立つ大分・別府へ。自然と共生した九州東海岸の旅」と紹介されている。宮崎ブーゲンビリア空港に隣接する宮崎空港駅から出発するため、関東・関西など各地の空港から飛行機で訪れ、「36ぷらす3」に乗車することもできる。

11時すぎ、「36ぷらす3」は1号車を先頭に、宮崎空港駅の1番のりばに入線。2番のりばで発車を待つ783系「ハイパーサルーン」の特急「にちりん」と並んだ。前日に続いて「36ぷらす3」のグリーン席へ通され、今回は5号車のD席(1人掛けの座席)に座る。「にちりん12号」が11時19分に発車した後、報道関係者らを乗せた「36ぷらす3」は11時25分に発車。南宮崎駅から日豊本線に入り、大淀川を渡って高架の宮崎駅に停車する。11時43分に宮崎駅を発車すると、しばらくして客室乗務員による車内放送が流れる。

「今日も、ディスカバー九州エクスプレス『36ぷらす3』にご乗車くださいまして、ありがとうございます。『36ぷらす3』は、『九州のすべてが、ぎゅーっと詰まった“走る九州”といえる列車』です。この列車の『36ぷらす3』は、世界で36番目に大きい島、九州を5日間にわたり、35個のエピソードをのせて走行してまいります。お客様ご自身で36番目のエピソードを語っていただき、驚き、感動、幸せをお届けします。お客様、地域の皆様、私達がひとつとなって、39、サンキュー、感謝の輪を広げていきます」

  • 宮崎空港駅で発車を待つ「36ぷらす3」。783系の特急「にちりん」と並ぶ

  • 宮崎駅の手前で大淀川を渡る。都農駅から美々津駅まで、宮崎リニア実験線の跡地も見ることができる

「36ぷらす3」はしばらく宮崎平野を走り、一ツ瀬川(佐土原~日向新富間)や小丸川(高鍋~川南間)を渡る際に徐行する。小丸川を渡った後も、進行方向右側に日向灘が見え、日豊本線における車窓ポイントとなっている。都農駅から美々津駅まで、日豊本線と並行する宮崎リニア実験線の跡地も見ることができる。

車内ではランチプランの料理提供が行われていた。グリーン個室(1~3号車)は「季節料理 かわの」(宮崎市)の特別懐石昼膳、グリーン席(5~6号車)は「パッパカルボーネ」(宮崎市)による「宮崎の“わ”イタリアン」の特製弁当が用意されている。

  • 前日に続いてグリーン席を利用。この日は5号車のD席だった。正午すぎにランチプランの特製弁当が提供される

  • 延岡駅ではホームで特産品販売が行われていた。延岡駅を発車後、4号車のマルチカーにて、「宗太郎・重岡」の歴史に関する動画が放映される

13時5分、延岡駅に到着し、10分間停車。延岡市観光協会と、駅前の複合施設「エンクロス」による地元の特産品販売などが行われる。前日と同様、発車時刻が近づくと客室乗務員がハンドベルを鳴らして知らせ、13時15分に延岡駅を発車した。ここから先、佐伯駅まで「宗太郎越え」と呼ばれる峠越えがあり、難所とされる区間。日中時間帯に特急「にちりん」が走るものの、途中駅はすべて通過する。普通列車も極端に少なくなる。

延岡駅発車後、4号車のマルチカーにて、「宗太郎・重岡」の歴史に関する動画を放映。「岡藩のお抱えの山がたくさんあり、その山を見回りする人の名前が『洲本宗太郎』という方で、その名前を取ってその地区が『宗太郎』となりました」「重岡駅が一番賑やかだったのは昭和30~40年代くらい。1日の乗降客数は600名以上いたそうです。当時は凄く大きな駅舎で、駅員や保線の人を合わせると60名以上の人が働いていたそうです」「重岡駅はたくさん人が集まる場所だったので、旅館が5軒、料亭が2軒もあり、そこには芸者さんもいたそうです」といったエピソードが紹介された。

宮崎県・大分県の県境を越えた「36ぷらす3」は、13時39分、“特別停車駅”の宗太郎駅に到着。通常、宗太郎駅に停車する普通列車は佐伯行の上り2本(6時39分発・20時7分発)、延岡行の下りは朝の1本(6時54分発)しかなく、鉄道でこの駅を訪問することは難しい。並行する国道10号から自動車・バイク等で訪れることは可能だが、宗太郎駅はいわゆる「秘境駅」のひとつに挙げられている。

  • 普段は佐伯行(上り)2本、延岡行(下り)1本のみ停車する宗太郎駅。「36ぷらす3」は10分間停車する

  • 重岡駅には約20分間停車。ホームで特産品販売などが行われ、「おかえりなさいき」の横断幕も

  • 重岡駅の駅舎。駅前にバス停があり、佐伯方面からのバスが発着する

  • 787系の特急「にちりん」が黒い787系「36ぷらす3」を抜き去っていく

  • 重岡駅発車後、佐伯市宇目地区の和栗を使った生どら焼きが提供された

宗太郎駅で10分間停車し、次の重岡駅でも約20分間停車(13時57分着・14時18分発)。ここで上り「にちりん14号」に抜かれる。重岡駅は「36ぷらす3」の“おもてなし駅”となっており、佐伯市に本社を置くスーパー「マルミヤストア」が佐伯市観光協会の委託を受け、特産品販売などを行う。佐伯市宇目地域の特産品である和栗を使った生どら焼きも販売されるとのことで、重岡駅発車後、車内で生どら焼きが提供された。

4号車のマルチカーでは、大分県日田市大山産の梅を使い、梅酒づくりの体験イベントが行われた。通常営業時、このイベントは有料で、車内での事前予約制で行われるという。体験イベントを終えた後のマルチカーで、土曜日ルートの「緑の路」にちなんだ「幸せな緑」(青島神社・鬼の洗濯板)、「緑の神話」(西都原古墳群)、「意外な緑」(スコール)など7つのエピソード紹介も行われた。

  • 4号車のマルチカーにて、梅酒づくりの体験イベントや、「緑の路」に関するエピソードの紹介が行われる

佐伯駅を通過した後、進行方向右側の車窓に豊後水道の多島美を見ることができ、津久見駅・臼杵駅のあたりまで美しい車窓風景が続く。津久見駅付近では、進行方向右側にセメント工場、左側に鉱山も見える。臼杵駅のホームには石仏の顔のレプリカがあり、近年はハートマークの入った駅名標でも知られるようになった。

途中の駅で列車待ち合わせも行いつつ、「36ぷらす3」は大分市の市街地へ。大分駅には16時23分に到着した。発車後、客室乗務員が車内放送を行い、「『36ぷらす3』へぜひまたお越しください。皆様とまたお会いできる日を楽しみにしております」と挨拶。最後は「また来るのを待っちょるけんね、会えるのを楽しみにしておるよ」と方言で締めくくった。別府湾の車窓風景を眺めつつ、終点の別府駅には16時46分に到着した。

  • 大分駅には16時23分、終点の別府駅には16時46分に到着する

土曜日ルート「緑の路」の宮崎空港駅から別府駅までの所要時間は約5時間20分。「36ぷらす3」の中でも長めのルートだが、車窓風景は変化に富んでいる。鉄道で訪れることが難しかった宗太郎駅・重岡駅にも停車し、10~20分の停車時間を設けるなど、鉄道ファンにとっても魅力的な行程になっているのではないかと感じた。

新D&S列車「36ぷらす3」は10月16日から運行開始。金曜日ルート「黒の路」(鹿児島中央発宮崎行)に続き、10月17日に土曜日ルート「緑の路」(宮崎空港発別府行)が運行され、延岡駅と重岡駅で特産品販売などのおもてなしが行われる。10月18日に日曜日ルート「青の路」(大分発小倉・博多行)、10月19日に月曜日ルート「金の路」(博多~長崎間)の運行を予定している。

  • 「36ぷらす3」1~6号車の車体側面と、1~3号車(グリーン個室・ビュッフェ)の車内