政府が企業にテレワーク推進を呼びかける中、経理部門のテレワークがなかなか進まない現状がある。請求書を電子化し経理業務をオンライン化しようとしても取引先が対応できないために、結局紙ベースでの取引が存続し、その結果、経理部門がコロナ禍でも出社せざるを得ないといったケースも多いだろう。

日本の経理をもっと自由にプロジェクト」が実施した「経理1000人に聞いた請求書電子化と働き方に関する実態調査」によると、 社会の働き方が変化する中、経理の仕事は変わらないと答えた経理は83.4%で、「在宅勤務を希望しても全くできない」と回答した経理は56.6%にも上っている。

  • 半数以上の経理が「在宅勤務を希望しても全くできない」 出典:「日本の経理をもっと自由にプロジェクト」経理1000人に聞いた請求書電子化と働き方に関する実態調査

    出典:「日本の経理をもっと自由にプロジェクト」経理1000人に聞いた請求書電子化と働き方に関する実態調査

請求書に限らず、紙の書類が残っている業務において「ペーパーレス化しよう」といった声は10年前から上がっている。にもかかわらず、慣れたものを変更することへの障壁や企業ごとのITリテラシーの差が、社会全体のペーパーレス化を遠ざけ、バックオフィス部門の不安を募らせている。

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請求書受領は完全電子化できる

9割程度の国内企業が紙ベースで業務をしている現状を鑑みると、完全な電子化を達成するのは実質的に不可能なのかもしれないといった考えも浮かぶ。BEARTAILではこうした背景から、あらゆる種類の請求書をあらかじめ電子化された状態で受領できるサービス「INVOICE POST(インボイスポスト)」を提供している。

  • 「INVOICE POST」サービスイメージ

「INVOICE POST」は、メールPDFや紙、システム発行などさまざまな形式で届く請求書をBEARTAILが代わりに受領し、回収した請求書を電子化(PDF化)、データ入力したものをクラウド上に納品するサービス。平均約3時間で電子化することが可能で、紙の請求書の原本はBEARTAILの提携先の倉庫で10年間保管される。同サービスを利用することで、経理は紙のスキャンや印刷、押印、ホチキスで止めて原本管理など、出社しなければできない物理作業から解放される。

  • 「INVOICE POST」請求書一覧画面イメージ

  • 「INVOICE POST」請求書詳細画面イメージ

「誰かが代わりに受領する」手法をとることで、受取側ではすべて電子化が済んでいる状態が実現される。「取引先すべてが、1つのプラットフォームに合わせて請求書を発行してくれるとは限らないし、それは少なくとも現段階で求めるべきではないと考える」と、BEARTAIL Expense事業部 営業部の松原亮氏は語る。

  • BEARTAIL Expense事業部 営業部 松原亮氏

取引先からの紙の請求書が残り続ける状況で、請求書の受け取りに関しては、完全なペーパーレス化が実現できるというわけだ。

差別化のポイントは会計ソフトとの連携

「INVOICE POST」と同様なサービスは他にもたくさんある。例えば、オンライン名刺管理サービスを手掛けるSansanの「Bill One」が挙げられる。両サービスとも仕組みは同じで、紙の請求書を代理で受け取りスキャンも代行する。どちらのサービスも人力での補正により、99.9%の精度で請求書のデータ化を実現している。

両サービスの違いとしては、会計ソフトとのデータ連携ができるかどうかだ。「Bill One」では請求書の受取がメインで、同システムに取り込まれた情報を見ながら、各社で利用している会計システムに金額・仕訳情報などをユーザー自身で入力する必要がある(弥生会計、勘定奉行を除く)。

一方、「INVOICE POST」はCSVファイルを取り込めるすべての会計システムで連携することが可能。クラウド上で承認作業・仕訳情報を確認し、会計ソフトへデータ連携をすることで、会計処理をすべてクラウド上で完結させることができる。またFBデータ(全銀データ)も出力することが可能だ。

  • 「INVOICE POST」明細確認画面イメージ。複数明細を作成し、仕訳内容を会計システムに連携することが可能

松原氏は「当社では、2015年より経費精算システムである『RECEIPT POST』を運営しているため、会計処理や経理業務に関する運用ナレッジや、サポート体制に一日の長がある」と、他社製品との差異を強調した。

全社導入より1事業部からの導入を

しかし、請求書の受領に第三者が介在することに対して、不安感や懸念があることも否めないだろう。セキュリティはきちんと保障されているのか、円滑なオペレーションが実現できるのかといった点は実際に導入して運用してみないと分からない。

そこでBEARTAILでは、全社で一括導入するのではなく、一部部署から順次拡大させていく進め方を積極的に推奨している。「概念として新しすぎる」「導入に踏み切るのが難しい」といった企業の懸念を解消するためだ。

実際に、同サービスを当初から導入しているという某大手企業(商社グループ)では、1事業部から導入を開始した。同社は、「INVOICE POST」がテレワークでも運用できたことや、請求書の受領から数時間以内にデータ化できたことなどを受け、順次導入部署を拡大していくと検討したという。

「今後、紙の請求書が減ることはあっても増えることはない。企業規模問わず、スモールスタートでもいいから、ペーパーレスやオンライン化に着々と対応していくことが重要だ」(松原氏)

2023年開始のインボイス制度の認知度、経理で2割以下

2022年1月からは改正電子帳簿保存法が施行され、2023年にはインボイス制度(請求書フォーマットの規格化)も施行される予定だ。政府が書類の電子化を推奨しており、国として紙の請求書を明らかに減らしたい意図がある。

しかし、「日本の経理をもっと自由にプロジェクト」の調査によると、「インボイス制度」を詳しく把握できている経理は15.3%にすぎず、 電子インボイス対応の準備をしている企業は5社中1社と、企業の対応が遅れているのが現状だ。

  • 出典:「日本の経理をもっと自由にプロジェクト」経理1000人に聞いた請求書電子化と働き方に関する実態調査

「紙を減らすこと」は、森林伐採などの自然破壊を抑制するだけではない。企業や団体において、コストの削減や業務効率の向上、セキュリティ対策の強化にもつながる。請求書を電子化しオンラインで対応できるようになれば、経理部門のテレワークも進む。新しい取り組みへ難色を示したままだと、社員からの不満が積もって離職率が上がるといった事業運営上のリスクに発展する可能性もあるだろう。

収まりを見せない新型コロナウイルス感染症が、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革に関する課題解消・検討を加速させている。その第一歩として、バックオフィス部門のテレワーク対応を進めてみてはどうだろうか。