ROBOT PAYMENTは9月30日、同社が立ち上げた経理の新しい働き方を共創するプロジェクト「日本の経理をもっと自由に」の取り組みとして、経済産業省 商務・サービスグループサービス政策課へ「IT導入補助金拡充と経理部門の働き方改善を実現する産官学連携の促進に関する嘆願書」を提出すると発表した。また同日、記者会見を開催し嘆願書提出を含めた5つの新たなアクションを示した。

2020年10月1日より、電子帳簿保存法が改正され、電子取引を行った場合の電磁的記録の保存要件が緩和される。

  • 左から ワークスアプリケーションズ 代表取締役 最高執行責任者 秦修氏、ROBOT PAYMENT 執行役員 フィナンシャルクラウド事業部部長 藤田豪人氏、国税庁 課税総括課 課長補佐 小倉啓太郎氏、ROBOT PAYMENT 代表取締役社長 清久健也氏、花王 会計財務部門 経理企画部 上野篤氏、インフォマート 事業推進・戦略営業 執行役員 木村慎氏

経理の働き方を変えるプロジェクト

「日本の経理をもっと自由に」プロジェクトは、経理の新しい働き方の実現を目指し、みずほ銀行やサイボウズなどの賛同企業51社と7月2日に共創されたプロジェクト。9月30日現在、賛同企業は100社にまで増えている。

「日本の経理をもっと自由に」プロジェクト 賛同企業一覧

「日本の経理をもっと自由に」プロジェクトは7月2日の立ち上げ以降、「#さよなら紙の請求書」というスローガンを掲げ、「紙の請求書の電子化」を推進している。

一方で、10月1日に改正される電子帳簿保存法に適応するには、税務署への申請とITツールの導入が必要だが、IT導入における課題として「コストの負担が大きい」と回答した中小企業は約7割と、予算確保が障壁になっているという。

そこで、ITツールを導入しようとする事業者に対して、導入費用の一部を補助するIT導入補助金を推進している経済産業省へ対応を進言する運びになったとしている。

同プロジェクトの責任者である藤田氏は、「10月1日より施行される電子帳簿保存法改正によって、請求書や領収書などの電子化が加速する。しかしこれは、電子化しやすい環境を整備する法律であって、請求書電子化サービスの導入を支援するものではなく、経理担当の従業員が出社しなければいけない状況は法律では変わらない」と、嘆願書提出に至った考えを示した。

  • フィナンシャルクラウドの藤田氏。嘆願書の内容は朝日新聞(9月30日付け)に全面広告として掲載された‐

藤田氏は、「プロジェクトが開始してから世論に対して、経理の働き方についての問題提起はできたと感じている。しかしこれからは、世の中の注目度を高めるだけでなく、実行フェーズまで変えていかなければならない」とし、嘆願書提出以外の請求書の電子化を推進する新たな4つアクションについての説明を行った。

電子化を促進する新たな4つのアクション

新たなアクションとは、以下の4点となる。

  • 嘆願書提出を含む新たな4つのアクション

エコシステムの構築

同プロジェクトの新たなアクションの1つが「エコシステムの構築」だ。具体的には、多くの企業で導入が進んでいる経理部門向けITツールに、同社が提供する請求書管理の自動化クラウドサービス「請求管理ロボ」の機能を提供し、電子化推進を促進する。

「既にさまざまなサービス導入してある企業が、追加で電子化サービスを導入することは、コスト面からみて障壁が高いと感じている」(藤田氏)

インフォマートが実施した調査によると、経理部門では3年間で27%しかITツールが導入されていない状況があり、請求書電子化における障壁の1つとなっているという。そこで、同社から機能提供をすることによって、システムを改変することなく請求書の電子化を実現するとしている。

自治体の経理業務のデジタル化支援に向けたサポート

2つ目のアクションは、自治体の経理業務のデジタル化支援に向けたサポートだ。自治体職員の88.1%が書類の電子化を希望しているという調査結果(ペッパーロジック調べ)を受け、同社は全国の自治体においても紙ベースの業務を変えていく必要があるという。

そこで、経理業務の生産性向上を実現したい自治体に対して、「日本の経理をもっと自由に」プロジェクトが、 賛同企業の中で経理向けサービスを提供している企業を課題ごとにマッチングし、業務改善を支援するとのことだ。

経理に関するカンファレンスの開催

3つ目のアクションとして、ITツール導入の決定権限がある経営者層に電子化への機運を高めるべく、2020年10月22日に 「日本の経理をもっと自由にカンファレンス 2020」をオンラインで開催することが発表された。

カンファレンスには同プロジェクトの賛同企業の中で、経理向けソリューションを提供しているベンダーが集い、電子化による生産性向上のケーススタディを発信するとしている。

藤田氏は「現在、多種多様の電子化ツールがある中で、自社に適合したツールを選択するのは難しいこと。カンファレンスを通じて、具体的な経理の働き方などを発信し、さまざまな企業に電子化の気付きを提供していきたい」と、コメントした。

経理部門による経営層への代理申請

最後の4つ目のアクションとして、請求書業務の電子化を行いたい経理部門の従業員に代わり、プロジェクトが支援する代理申請の実施を行う。

同プロジェクトが実施した調査によると、紙の請求書業務の電子化を進めるよう、勤務先に IT導入をお願いした経理は14.4%しかいなかったという。そこで、社内へIT導入のお願いをする経理担当者を支援すべく、代理で提案書を作成する施策を特設サイト上で行うとしている。

請求書の電子化による経済効果は約1兆円超え

関西大学の宮本勝浩名誉教授と同プロジェクトが共同で、請求書の電子化による経済効果 を試算したところ、約1兆1,424億2,182万円 になることが分かったという。

  • 請求書の電子化による経済効果 同プロジェクト試算

これは、日本の企業全体を大企業・中規模企業・小規模企業に分け、それぞれの請求書を電子化することによる発送費用(郵送費)のコスト削減や請求書の作成、発送業務の省略化によってもたらされる人件費削減を導き出し合算した後に、請求書の電子化が行われていないと推定される企業の割合を掛け合わせて算出したものだ。

請求書の電子化でこれほどの経済効果が生じるだけでなく、従業員の生産性の向上も確実だ。ハンコのために出社しなければいけない経理をなくすべく、同プロジェクトは世の中に対して、さらなる電子化の需要性を訴えていく方針だ。