最近「ブラック企業」があまり話題に上がらなくなりましたが、ホワイト化が進んでいるのでしょうか? いわゆる『働き方改革』への取り組みや法律で残業時間に上限が設けられたことなどが影響していると思われますが、ブラックに多少のホワイトが混じってグレー化したに過ぎずのではないでしょうか。

そこで今回はブラックかどうかの見極めについてサービス残業の視点で3つのポイントを紹介していきます。

  • ブラック企業はグレー化して見分けにくい?

残業削減を強要されても、仕事は減らせるか?

長時間労働が禁止され強制的に残業時間を削減させられるということはないでしょうか。働いた分の残業代がきちんと支払われるならブラック企業(組織)とは言えませんが、残業時間分の超過勤務手当が出ないとなるとブラックです。

ですが、昨今の働き方改革や残業時間の上限規制の法案が施行され、いきなり「残業禁止!無駄な仕事を減らせ!」と号令をかけるだけで、具体的な指示がなく「あとは君たちに任せた」という会社はブラック気質が残っている会社(組織)かもしれません。

そもそも上層部の号令だけで残業(仕事)が減らせるのなら、最初からそうしているはずで、残業前提で仕事が成り立っているという構造を上層部や管理職が理解せずに指令を出している可能性があります。

国家公務員制度担当大臣である河野太郎氏は6月18日、公務員残業未払い問題について「まだ考えの切り替わっていない恐竜みたいな人がいる」と発言しましたが、公務員だけでなく一般企業でもあります。

商社勤務の事務員のAさんはこう言っていました。

「役員が推進する働き方改革のせいで、残業が付けづらい雰囲気になってしまいましたが、業務はそれほど減らせないので、月の中ごろに累計20時間の残業に達してしまうと、それ以降はサービス残業になってしまいます。以前は長時間労働でもしっかり残業代を貰っていたので、そのほうがよかった」。

業務効率の方法論を示さず、残業削減だけを連呼する会社はイマドキのブラックかも。

サービス残業 見て見ぬふり上司か?

残業は基本的に上司の指示のもとに行われる行為です。定時で終わらない量の仕事があり、残業の必要性を上司に伝え、了承を得てはじめて残業時間が認定されるのが原則です。

ところが常に高評価を得ようという出世志向の社員は残業時間を申告しないか、過少報告をする傾向があります。

会社員の仕事振りはどんな評価制度であれ、質と量とスピードの3つの要素で評価されます。つまり「どれだけ質の高いアウトプットを出したか」「限られた時間でどれだけ多くの量をこなせたか」「より速く仕事を処理したか」ということを総合的に判断して人事評価が行われます。

当然ですが、これらのことが短時間でできれば上司は『優秀』な部下という印象を持ち、単年度の人事評価だけではなく、2~3年のパフォーマンスで判断する昇進・昇格に有利になるということです。

つまり、「評価=パフォーマンス/申告労働時間」 という公式が成り立ち、圧倒的なパフォーマンスを出すか、分母である申告労働時間を少なく報告するかが高評価を得られるかどうかのポイントなるのです。

この仕組みを理解している出世志向の社員は、短時間で多くの仕事をこなしているというアピールを上司にするのですが、キャリア組の公務員のサービス残業が減らない理由の一つはそういうことでもあります。

ただ「出世に興味ないから」といって安心はできません。そのような行為をして現在の地位についている50代以上の管理職があなたの上司ではないでしょうか。

能力が低くて残業になってしまう社員には厳しく見ますが、結果を出そうと頑張って残業時間を過少申告してくる部下には別の形で報いたいと思うのはある意味当然の心理です。

ただそれが高じて上司は部下の長時間労働/サービス残業に見て見ぬふりをし、標準的な部下たちもそうしなければいけない空気を敏感に感じ取り、サービス残業当たり前の組織風土が出来上がってしまうとブラックに近づくことになりそうです。

特にコロナ禍以降はリモートワークが増え、サービス残業が表面化しにくいので、出世志向の方には追い風かもしれませんが、標準・平均キープ志向の方は空気読めないフリが必要かもしれません。

業務命令せず、同調圧力を使う上司では?

業務命令ではなく、同調圧力によって部下を働かせようとする上司には気を付けなければなりません。

2019年度から(中小企業は2020年度から)の適用となった残業時間の上限規制の法制化などを契機として、上司は残業命令が出しにくくなりました。実際に社員一人当たりの労働時間は減少傾向にありますが、一方で一部はサービス残業化しているという指摘もあります。

そんな状況下でも統括する組織の業績達成のプレッシャーがある上司の中には、同調圧力をかけてくる人がいます(本人はリーダーシップを発揮していると思っていたりするので厄介)。

業務命令が出されれば、嫌でも部下はそれに従う必要がある代わりに、上司は結果責任を負わなければなりません。

ところがいいとこ取りをしようと考えるズルい上司は、しくじった時に自身の責任が問われるリスクを想定し「みんなつらいけど、頑張っているんだ。一緒に頑張ろう! ここを乗り切れば未来が見える」などと言葉巧みに命令でなく自主的な活動をほのめかします。

同調圧力は具体的な指示をしなくても部下が空気を読んで動いてくれるので、仮に失敗しても「指示してないのに部下が勝手にやった」という言い逃れができます。部下も上司の意を汲んで活動することで「一を聞いて十を知る」という優秀な部下のアピールができるので、この誘いに乗ってしまい勝ちです。

また、上場企業や有名企業に勤める社員ほどこの傾向が顕著です。せっかくいい企業に入ったのだから、親や親戚縁者、配偶者、子どもの期待(有名企業での出世)がチラつくので、多少のことは我慢して、上司に合わせようとします。

「どうせ数年で上司は異動するのだからそれまでの辛抱だ」と考えるため「こんな上司のいる会社なんか辞めてやる」という結論には至りづらいのです。

しかし、ここで気を付けないといけないのは、辞めるという選択肢を持ちづらいために、過度な我慢を強いられ、メンタル不全に陥ることです。

一人前のビジネスパーソンとして認められるには、一定レベルのストレス耐性は必要なことですが、精神が壊れてしまうほどの我慢は絶対にすべきではありません。メンタル不全に陥ると自分の人生がブラックになってしまいます。