コスメティックブランド「SHIRO」を展開するシロがこのほど、創業地の北海道砂川市で「みんなのすながわプロジェクト」を始動させた。"子どもたちと市民が主役のまちづくり"がコンセプト。市内の小学校跡地に交流施設を兼ねた新工場を建設するほか、野球チームの新設など、地域住民へのアンケートやワークショップを通じて、地域住民参加型のまちづくりを全面的にバックアップしていく。

  • 「SHIRO」創業の地、北海道砂川市

SHIROは、国内に26店舗・海外に3店舗を展開する、北海道砂川市発のコスメティックブランド。もとはOEMブランドとしてさまざまな企業の製品を作っていたが、2009年に初の自社ブランド「LAUREL」を立ち上げ、2015年にブランド名を「shiro」に変更、2019年にリブランドしてSHIROとなった。シンプルで洗練されたデザインや、特産物を活用したエシカルな製品で知られている。

  • 「みんなのすながわプロジェクト」地域説明会に登壇した、シロ代表取締役社長(7月1日から代表取締役会長)の今井浩恵氏

このプロジェクトは、同社創業の地である砂川に対する、社としての思いが発端にある。プロジェクトの舵きり役で、代表取締役社長の今井浩恵氏は、6月27日に行われた地域説明会で「私自身にとって、就職から2014年まで過ごした砂川は人生で最も長く過ごした場所であり、第二の故郷」と語り、「砂川を今以上に楽しいまちに、みんなでしませんか」と呼びかけた。

交流施設併設の新工場やプロ野球チーム設立

みんなのすながわプロジェクトは、SHIROの新工場を建設する江陽小学校跡地での取り組みと、砂川市全体での取り組みの2本柱で進行する。

  • 「みんなのすながわプロジェクト」で江陽小学校跡地に建設する、交流施設を併設した新工場のイメージ

まち全体の活性化を目的に、SHIROと地域の各分野の人々が参画する実行委員会を組成し、アンケートやワークショップなどで市民の意見を取り入れながら、ものづくり・教育・観光をテーマとした施設や環境を市民と作り上げていく予定だ。

新工場は、現在市内にある自社工場を移設増床させる形で建設し、そこには放課後学校やアスレチックなど、子どもたちが集い楽しめる場を計画している。それ以外にもSHIRO初のアウトレットショップやカフェ、工場見学など集客的な面も兼ね備えた施設となる予定だ。2022年12月に工場を稼働し、2023年には施設全体の開業をめざす。

  • 「みんなのすながわプロジェクト」ロゴ

また、市全体での取り組みとして動き出しているのが、北海道ベースボールリーグの新球団設立だ。2021年中にトライアウトを行い、2022年春の参入を予定している。選手は新たな砂川市民となり、子どもたちにプロの選手の姿を間近に見せることも期待される。

このほかにも、私立小学校設置の検討や、離農・事業継承課題の改善など市民の率直な意見を参考にした具体的な取り組みが地域説明会では発表された。

実行委員長代行を務める多比良和伸氏は「私も紙一枚にやりたいことを書いて、SHIROに伝えたひとり。みんな率直に、あったらいいなと思うことを言ってみてほしい」と地域住民に呼びかけた。

「人口減は地方にとって仕方ないこと」と諦めない

同社では2018年ごろから、事業拡大により砂川市西豊沼にある生産拠点を移転・拡大することが検討事項となっていた。新工場は東京本社からアクセスの良い関東圏も候補にあがったものの、決めかねていたという。

そこで浮上したのが、同社が保有する砂川市内の旧江陽小学校跡地だった。当初は工場の建設のみを考えていたが、地元住民らと触れ合う中で、人口減やシャッター街など、市の現状を知っていき、今井氏の砂川に対する思いがふくらんだ。

「子どもたちが学び、笑顔が集まる場所だったここに、またそういった場所を作り、返していきたい。2060年には人口が9,000人を割る統計データもあるが、『地方なんでそんなもの』と見過ごすのではなく、子どもや孫たちのためにも、みんなで一緒に考えて、みんなでつくっていきませんか。そんなお誘いです」(今井氏)

今井氏は7月1日、このプロジェクトに注力するため代表取締役社長を退任し、代表取締役会長となる。引き続きブランドプロデューサーとしても、ブランディングをさらに強固なものにしていくという。新代表取締役社長には、専務取締役の福永敬弘氏が就任する。

  • 7月1日からシロ代表取締役社長に就任する福永敬弘氏

これまでにも10年以上、砂川で職業体験イベントを継続してきたSHIRO。新工場をきっかけにギアをトップに上げて、地域住民と一丸となったまちづくりへの挑戦が始まる。