サラリーマンにとって、仕事のストレスは必ずありますよね。仕事が思い通り進まない、上司が理不尽、仕事相手が無理難題を押し付ける……など、探せばきりがないでしょう。 そんなストレスがもたらす「イライラ」を溜めるのはよくない! として注目されているのがアンガーマネジメントという手法。昨今ではパワハラ防止につながるとして、注目されることもありますね。

しかし、このアンガーマネジメントが裏目に出ている!? という指摘を筒井@Excel関数擬人化スタンプ販売中(@Tsutsui0524)さんがツイッターに投稿し、大きな注目を集めていました。その内容とは?

  • 感情をうまくマネジメントできていますか? ※画像はイメージ

アンガーマネジメントの研修受けてきた上司が6秒溜めた後にめちゃくちゃ怒るようになったというのはたまに耳にします
(@Tsutsui0524)より引用

このツイートには、「全然怒りマネジメントできてなくて草」「その6秒の間にガード固めなきゃならんのか……辛え」「怒りのゲージをあげていく6秒間」「6秒分濃厚w」「6秒チャージは笑うわ」「怒りをチャージ武器扱いする上司さん……」など、真逆となる状況を揶揄するコメントが多く寄せられていました。

また、「波動砲も呪力もかめはめ波も、タメが長いほど威力も増大しますからね」「ロックバスターやんけ……(震え声)」「気をためて威力高めてるのだ」など、漫画やゲームのキャラの必殺技に見立てる読者もいました。

しかし、中には「本当は6秒は『冷静になれないか試みる時間』なんだろうけど、怒るの好きな人はまぁ、怒ること前提で6秒数えたりするしなwww」「クールダウンさせる目的が怒りを増幅させるための6秒に……」など、本来の使い方ができていないのでは? という声もありました。

怒りという感情への関心

(@Tsutsui0524)さんにツイートの経緯を聞いたところ、「受講経験はないですが、アンガーマネジメントに関する書籍を読んだことがあります。ですから、大体の察しはつきました」と言います。

また、大きな反響を呼んだことについては、「引用ツイートで自身に当てはまると自覚する声がありました。自分の感情なのに『制御が難しい』怒りへの関心は高いのかもしれませんね」と自身の考えを披露してくれました。

筆者もアンガーマネジメントの受講経験はないですが、上手に気持ちを切り替える方法、感情をリセットするスイッチなど聞いたことがあります。また切り替えるための「6秒」についても、よく耳にします。

そもそも、アンガーマネジメントはどのように使うのが適切なのでしょうか。ここは専門家に聞くしかない! ということで、日本アンガーマネジメント協会さんに尋ねてみました。

日本アンガーマネジメント協会理事に聞いた

対応してくれたのは、同協会の代表理事を務める安藤俊介さんです。

――そもそも、アンガーマネジメント研修の目的は何でしょうか。

安藤さん 「目的はさまざまですが、最近ではハラスメント防止に取り入れる企業が増えています。例えばパワーハラスメント防止に法律の研修は行われますが、頭では分かっているのに感情に負けてパワハラ的な言動をしてしまっている人が後を絶ちません。そこで法律の理解とともに、アンガーマネジメントでパワハラを防止するのです」。

――企業にはどれくらい浸透しているのでしょうか。

安藤さん 「厚生労働省が平成28年にまとめた『職場のパワーハラスメント対策取組好事例集』で50社の事例が紹介され、その内6社がアンガーマネジメントをパワハラ防止のために取り組んでいると説明されています」。

昨今、企業のコンプライアンスが強く求められるので、導入する企業は増えているのでしょうね。せっかくなので、有名? な「6秒」についても改めて聞いてみました。

――「6秒」の意味や目的を教えてもらえますか。

安藤さん 「怒りが生まれてから6秒あれば理性が働くと考えられています。逆に6秒以内であれば感情にハイジャックされた状態で『言わなくていい余計なこと』等を言ってしまう可能性が高くなります。6秒待つのは理性を働かせるためです。決して怒りがなくなるわけではありません」。

――なるほど! では、6秒間に何かするのもよいのでしょうか。

安藤さん 「6秒待つためのテクニックはにいろいろとありますが、例えば単純に深呼吸するだけでOKです。その際、息を吐くことから始めてください。息を吐くことで弛緩することができるからです」。

――シンプルかつ手っ取り早い方法ですね。ちなみに、今回のツイートも含め「6秒」が注目されがちです。これについてどう思いますか。

安藤さん 「アンガーマネジメントや6秒という言葉が広がるのはとても嬉しいことですが、意味を間違えていたり、曲解しているケースを見る機会も増えました。

インターネットにある『誰かが言った情報』を鵜呑みにせず、元の情報ソースではどう言われているのかをぜひ確認する癖を付けてほしいです。アンガーマネジメントに限らず、伝聞情報から間違った理解や判断をしないようにする上で、とても大切な習慣と言えます」。


ちょっとしたTIPSや便利な方法に目がいきがちですが、本質を理解したうえで判断する、これは心に留めておきたいことですね。皆さんの周囲では、適切に「6秒ルール」を使えていますか?

記事協力:安藤俊介(あんどう・しゅんすけ)

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事。
怒りの感情と上手に付き合うための心理トレーニング「アンガーマネジメント」の日本の第一人者。ナショナルアンガーマネジメント協会では15 名しか選ばれていない最高ランクのトレーニングプロフェッショナルにアジア人としてただ一人選ばれている。主な著書に『アンガーマネジメント入門』(朝日新聞出版)等がある。著作はアメリカ、中国、台湾、韓国、タイ、ベトナムでも翻訳され累計65万部を超える。