「ご笑納ください」は、お歳暮や内祝いなど贈り物をする際に使う表現の一つです。しかし使う相手や場面に気を付けないと、失礼だと思われてしまう可能性があります。

本記事では「ご笑納ください」の意味や、正しい使い方と注意点を具体的に解説します。受け取った際の返事の仕方や、言い換え、英語表現もまとめました。

  • 「ご笑納ください」の意味とは?

    「ご笑納ください」の意味や使い方を紹介します

「ご笑納ください」の意味と読み方とは?

「ご笑納ください」は、接頭辞の「ご」、名詞の「笑納」、補助動詞の「ください」を組み合わせた言葉です。

ここでは、「ご笑納」と「ご笑納ください」の意味を分けて紹介します。

「ご笑納」の意味

「笑納」は「笑って納める」と書きます。品物を差し出すとき、「つまらないものなので笑って納めてほしい」という気持ちを込めて用いる言葉です。

「ご笑納ください」の意味

「ご笑納ください」は前述の「ご笑納」に、丁寧に何かをお願いするときの補助動詞である「ください」が合わさっています。

そのため「粗末でつまらないものですが、どうぞ笑って納めてください」や「大したものではありませんが、笑って受け取ってください」という意味の言葉になります。この場合、本当につまらないものを渡すということではなく、受け取る相手が負担に感じないよう、謙遜し、へりくだった表現として「笑納」が使われています。

「ご笑納ください」は、仕事などで使う書類や資料を渡すときには使いません。お中元やお歳暮、内祝い、お菓子など、お世話になっている人への感謝の気持ちを贈るときに使用しましょう。

書き言葉で使うのが一般的

「ご笑納ください」は一般的に書き言葉として使用され、品物を贈る際など手紙に添える一文として使えます。

「ご笑納ください」の読み方は「ごしょうのうください」

「ご笑納ください」は「ごしょうのうください」と読みます。なお「ください」は補助動詞のため、「ご笑納下さい」ではなく「ご笑納ください」とひらがなで記載するのが一般的です。

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「ご笑納ください」の間違った使い方や注意点

「ご笑納ください」は品物を贈る際にへりくだって使う表現ですが、使い方には注意が必要です。ここでは、「ご笑納ください」を使わない方がいい相手や場面を紹介します。

敬語表現ではあるが、目上の人や上司には避けた方がベター

「ご笑納ください」は敬語表現ではありますが、「笑って納める」という「笑納」によって、軽い表現に仕上がっています。そのため親しみを感じさせる一方で、軽々しい印象を与えてしまう可能性もあります。

失礼だと感じられてしまう場合もあるので、目上の人や上司に使うのは避けた方が無難でしょう。

取引先も同様に避ける

自分が働く企業の得意先や取引先は大切な存在です。たとえ親しい間柄でもどのような印象を受けるかは相手次第なので、「ご笑納ください」を使って失礼な人だと思われないためにも、ビジネスシーンでの使用は控えた方がいいでしょう。

謝罪・お詫びするときにはNG

「ご笑納ください」の「つまらないものですが、どうぞ笑顔で納めてください」という意味を謝罪のときに使うのは不適切です。相手をより怒らせてしまう可能性が高くなります。

相手が写った写真を送るときもNG

「ご笑納ください」は「つまらないもの」というニュアンスも含んでいるため、相手の顔が写っている写真を送るときに使うのはやめましょう。相手の写った写真を「つまらないもの」扱いすることになり、大変失礼にあたります。

例えば目上の人や上司、取引先との会食やゴルフコンペで写した集合写真などを品物と一緒に送るときは、使用しないように気をつけましょう。

ご祝儀(お金)を渡す際は避け、代わりに「心ばかりですが」などを用いる

お祝いやお礼のお金・商品券を渡すときは、「ご笑納ください」と伝えるのは一般的ではありません。「心ばかりですが~」「ささやかですが~」「ほんの気持ちですが~」などと添えるといいでしょう。

贈り物がなく手紙のみのときは「ご笑覧ください」

贈り物がないのに手紙に「ご笑納ください」と添えるのは間違いです。手紙だけの場合は「つまらない内容ですが、笑って見てください」という意味の「ご笑覧ください」を使います。

「ご笑納ください」はあくまでも、品物があるときに使用する言葉ということを覚えておきましょう。

  • 「ご笑納ください」の間違った使い方に注意

    「ご笑納ください」は使う相手や場面に注意が必要な言葉です

「ご笑納ください」の正しい使い方と返事の例文

「ご笑納ください」はビジネスシーンで使うと失礼な印象を与えてしまう可能性があるので、友人や同僚など気心の知れた相手に対して使用するようにしましょう。

ここでは、「ご笑納ください」の使い方の例文と、「ご笑納ください」が書かれた手紙をもらったときの返事について解説します。

「ご笑納」「ご笑納ください」を使うときの例文

贈り物に関して言及したあと、文の最後に加えるといいでしょう。

<例文>

  • 心ばかりの品をお送りいたします。どうぞご笑納ください。
  • 別便にてお菓子をお送りいたしましたので、どうぞご笑納くださいませ。
  • 結婚祝いをお送りしますので、ご笑納くださいますよう、よろしくお願いいたします。
  • お歳暮をお送りいたしましたので、ご笑納いただけると幸いです。
  • ささやかではございますが、どうぞご笑納いただけますようお願いいたします。

「ご笑納ください」に対しての返事

品物をもらう立場で、相手から「ご笑納ください」を使われた場合は、相手が品物を選んだり用意したりした努力や気持ちを受け止める返事が好ましいです。

「ご笑納ください」は贈り主が相手を立てるために使った言葉なので、真に受けず感謝の気持ちを書きましょう。

<例文>

  • 先日送っていただいた〇〇、ありがたく頂きます。
  • お心遣い、誠にありがとうございました。
  • 〇〇をありがとうございました。大切に使わせていただきますね。
  • お送りいただいた○○は、早速、家族皆でおいしく頂きました。ありがとうございます。
  • お忙しい中、お気遣いいただきありがとうございます。頂戴します。
  • 「ご笑納ください」の使い方の例文と返事

    「ご笑納ください」の使い方の例文と返事を紹介

「ご笑納ください」の類語・言い換え表現

「ご笑納ください」の言い換え表現を紹介します。相手や場面を選ぶ「ご笑納ください」が使えない場合のために覚えておきましょう。

お納めください

「お納めください」は贈り物をする際、相手に敬意を表す表現です。目上の人や上司、取引先にも使えるためビジネスシーンでもよく聞かれます。また、謝罪するときにも使用可能なため、改まった場面で使うといいでしょう。

お受け取りください

「お受け取りください」も、相手に敬意を表す表現です。「受け取る」という表現が「納める」よりも強い印象のため、品物の受け取りを強くうながす言葉となります。

目上の人や上司、取引先にも使用できるため、ビジネスシーンでは「ご笑納ください」の代わりに「お受け取りください」を使いましょう。

ご笑味ください

「ご笑味ください」は「ごしょうみください」と読みます。「笑い草の一つとして食べてください」という意味のため、食べ物や飲み物を贈るときに使用可能です。謙遜の気持ちを表現でき、目上の人や上司などにも使えます。

ただし、同じ読み方の「ご賞味ください」と混同される恐れがあるため、手紙に添える書き言葉として使いましょう。また、「笑う」という文字があるため、謝罪など改まった場面では使わないように気をつけてください。

お召し上がりください

「お召し上がりください」も食べ物や飲み物を贈るときに使えます。相手にお茶を出し、その場で飲んでもらうときなどにも使える汎用性(はんようせい)の高い表現です。

  • 「ご笑納ください」の言い換え

    ビジネスシーンでは「ご笑納ください」の言い換え表現を使いましょう

「ご笑納ください」の英語表現

「ご笑納ください」は英語でどう表現するのか、いくつか例文を見てみましょう。

<例文>

  • Please accept this little something.
    (つまらないものですが受け取ってください。)

  • It's just a token of my gratitude. I hope you enjoy it.
    (ほんの感謝の印です。どうぞご笑納ください。)

  • I sent a gift. It's just little thanks.
    (プレゼントを送りました。ちょっとしたお礼です。)

  • 「ご笑納ください」の英語表現

    「ご笑納ください」の英語表現

「ご笑納ください」のビジネスシーンでの使用には注意しよう

「ご笑納ください」は「つまらないものですが笑って納めてください」という意味になり、自分を下げて相手を敬う気持ちを表現しています。しかし、「笑って納める」という意味を持つので、目上の人や上司、取引先などに使うのは失礼だと思われる可能性があります。贈り物をして「ご笑納ください」を使う相手は友人や同僚など親しい人にするといいでしょう。

仮に上司や取引先などに使用したい場合は、「お納めください」や「お召し上がりください」など言い換え表現がいくつかあるので、そちらを使用する方が無難です。