ローリスク資産形成の方法として、個人向け国債があります。個人向け国債の金利は定期預金・普通預金の金利より高く、国が元本と利子の支払いを保証してくれます。しかし、個人向け国債は本当にオススメできる商品なのでしょうか。この記事では、個人向け国債のメリット・デメリットについて解説していきます。

個人向け国債とは

個人向け国債は、国が発行し、個人しか買えない債券のことです。そもそも債券とは、企業や地方公共団体等が投資家からお金を借りるときに発行する「借用証書」のようなものです。つまり、国債を買うことは、国にお金を貸すことと同じと言えます。個人向け国債の特徴は大きく分けて「金利タイプ」「購入単価」「購入方法」の3つです。1つずつ解説していきます。

金利タイプ

個人向け国債には「変動10年」「固定5年」「固定3年」の3種類があります。固定金利と変動金利のタイプについて、それぞれ解説していきます。

◆変動金利タイプ

変動金利タイプは「変動10年」が該当し、半年毎の基準金利に応じて金利が変動します。「変動10年」の基準金利とは、直前に行われた「10年利付国債」の平均落札利回りのことです。基準金利に0.66を掛けたものが適用されます。もし基準金利が上昇した場合、「変動10年」の利率も同様に上昇する為、受け取れる利息も増えます。もし金利が上昇しなくても、年率0.05%の最低金利保証があります。例えば、個人向け国債で1000万円運用した場合、以下のようになります。

①基準金利が1%では金利が0.66%になり、年間の受取利子は66,000円
②基準金利が-1%でも最低金利の0.05%になり、年間の受取利子は5,000円

◆固定金利タイプ

固定金利タイプは「固定5年」「固定3年」の2種類があり、発行時の利率が5年、又は3年変わりません。その為、「最終的にいくらになるか」という投資結果がわかりやすいです。例えば、発行時の利率が0.05%であれば、5年間0.05%の利子を受け取れる、ということが確定します。

購入単価

個人向け国債は最低1万円から1万円単位で購入可能です。まとまったお金を用意しなくてもいいので、気軽に始めやすいという特徴があります。

購入方法

個人向け国債は銀行や証券会社で購入できます。購入手数料は不要です。また、個人向け国債は毎月購入することができ、パソコンやスマートフォンからでも購入することができます。

個人向け国債のメリット

個人向け国債の大きなメリットとして「元本保証」が挙げられますが、それ以外にも「購入価格」「金利タイプ」の2つがあります。

メリット①購入価格

先述した通り、個人向け国債は個人が買いやすいように1万円から購入可能です。最低保証金利が0.05%なので、ローリスクの金融商品の中では、比較的有利な運用ができます。

メリット②金利タイプ

金利タイプは変動金利タイプと固定金利タイプから選ぶことが可能です。変動金利タイプは金利上昇に強いです。現在のような低金利の状況でも最低0.05%を保障しつつ、金利が上昇した場合はその時の金利が適用されます。固定金利タイプは金利が高い場合、その金利がずっと固定になるので、その後金利が下がってしまった場合でも高金利を維持できる部分はメリットと言えます。

個人向け国債のデメリット

個人向け国債のデメリットは、「低金利」「換金性」の大きく2つがあります。

デメリット①低金利

2021年3月現在、個人向け国債の金利は最低保証の0.05%です。銀行よりは高いですが、他の金融商品と比較した時に、決して高いとは言えない金利です。その為、金利が低いので、少ない金額を購入しても全く増えないのが現状です。例えば、1万円の個人向け国債を購入した場合、1年間で5円増えることになります。100万円預けても500円です。お金を増やしたいと思い個人向け国債を購入する場合、ある程度まとまったお金が必要になります。

デメリット②換金性が低い

個人向け国債は発行から1年経過以降、いつでも取扱金融機関にて額面1万円単位で中途換金することができます。ただし、満期を迎える前に中途換金する場合の金額は、「中途解約調整額」が差引かれます。「中途換金調整額」は、「直近2回分の各利子相当額(税引前)×0.79685」で計算されます。

また、中途換金実施日は、取扱機関に中途換金を申し込まれた日ではありません。中途換金を申し込まれた日を含め、おおむね3営業日後となります。つまり銀行預金のようにすぐにお金をおろせたり、換金できるわけでは無いということです。

資産形成に向いている金融商品

個人向け国債は、資産がものすごく増える商品とは言えません。では、これから資産形成をしていきたい方に向いている金融商品として、他はどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、投資信託や、資産形成を後押しする国の制度としてNISA、つみたてNISA、iDeCoをご紹介します。

■投資信託

投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用のプロが株式や債券などに投資する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品です。投資信託は100円から購入できるものもあり、国債と同じようにまとまったお金がなくても始めることができます。投資信託の運用成績は市場環境などによって変動します。投資信託の購入後に、投資信託の運用がうまくいって利益が得られることもあれば、運用がうまくいかず投資した額を下回って損をすることもあります。

通常、投資信託などの金融商品に投資をした場合、売却して得た利益や受け取った配当に対して20.315%の税金がかかります(2021年4月現在)。しかし、国の制度であるNISAは、「NISA口座」内で、毎年120万円まで購入した金融商品から得られる利益が5年間非課税になる制度です。つみたてNISAは年間40万円まで投資した金額の利益が20年間非課税になる制度です。

■iDeCo

iDeCoは、自分で運用先を投資信託や定期預金等から決めて、資産形成をする年金制度です。最低5,000円から始めることができ、NISAや国債と同じようにまとまったお金がなくても始めることができます。iDeCoは掛金を60歳になるまで拠出し、60歳以降に老齢給付金を受け取ります。掛金が全額所得控除されるので、課税所得が減り、所得税と住民税が軽減されます。また、NISAやつみたてNISAと同じように運用益は非課税です。ただし、職業によって「加入資格」や「掛け金の限度額」、「勤務先の年金制度」等の条件が異なります。加入を検討する場合、事前に確認しましょう。

まとめ

個人向け国債は、国が元本と利子の支払いを保証してくれる安全性の高い金融商品です。しかし、現在の低金利では資産形成していく方にとってはなかなかおすすめできる金融商品とは言えません。これから資産形成をしていきたい方は、NISA、つみたてNISA、iDeCo等の制度を利用して投資信託や株に投資し、時間と金利を味方にして資産形成することをおすすめします。