今年の鼻血はやっかい。マスクで蒸れた、花粉による炎症、鼻をかみすぎて切れて出血など、原因も対処法も人それぞれ。また、「鼻くそに血が混じる」というケースも増加中とのこと。耳鼻咽喉科医の木村至信氏(以下、キムシノ氏)に聞きました。

  • 鼻くそに血が混じるのは乾燥のため?

大人も鼻血、意外と深刻な例も

子どもは鼻の粘膜が弱く、よく鼻血を出すものです。これは大人にも意外と起こり、鼻をぶつけた、風邪をひいた、お風呂でのぼせたなど、何気ないことが原因となります。

――鼻血といったいどんな病気、症状なのでしょうか。

キムシノ氏 「鼻血は、正確には鼻出血といいます。鼻出血の中で最も多いのは、小鼻の内側にあるキーゼルバッハという部位からの出血です。ここはちょうど、鼻の穴の皮膚が粘膜に変わる部分で、非常に細い血管が集中しているため、軽い刺激でも出血しやすいのです。鼻をほじるクセ、転倒や衝突などによる外傷、のぼせ、強く鼻をかむなどにより粘膜が傷つき、これらのほとんどはこの部分から出血するケースとなります」。

――鼻血が出ると、鼻をつまんだり、ティッシュで押さえていたりするうちに止まります。この方法で合っていますか?

キムシノ氏 「止血できているなら、特に問題になることはありません。鼻の浅い部分の出血は量も少なく、適切な処置をすれば30分以内に止まります。座ったまま安静にして、小鼻の上の辺りをつまんでいるよいでしょう。落ち着いて適切な方法で止血処置を行い、それでも出血が止まらないときは医療機関を受診しましょう。

大量出血、止まらない、日常的に繰り返す、持病や他の症状もあるといった場合には、重大な病気が潜んでいる恐れもあります。鼻の奥の部分からの大量出血は、太い血管が破れた可能性が考えられます。この場合も、医療機関受診を検討してください」。

鼻くそに血が混じるのは病気?

――鼻くそに血が混じることもありますよね? これも同様ですか?

キムシノ氏 「ほとんどの場合は、鼻血が原因となっています。鼻血に気付いて病院で診察すると、いわゆる鼻血の治療として、鼻の中に綿やタンポンなどを詰められることがあります。ゼリー状のフタをするスポンゼルというものもあります。医師の指示があると思いますが、これらが入っている1週間は洗顔や入浴に気をつけ、日常生活では鼻を強くかまないようにしなければなりません」。

――鼻血の自覚がないのに、鼻くそに血が混じるときはどうすればいいですか?

キムシノ氏 「無意識のうちに鼻をいじったり、鼻がムズムズするのでこすったりして、粘膜が切れてしまう方が増えています。アレルギー性鼻炎を持つ方は粘膜が傷んでいるので、少しの負荷でも血管が切れます。何回も切れている場所はくせになりやすく、子どもだと、寝ている間にいじったりして寝起きに大出血などもあります。

対処方法としては、鼻をいじらなくなるよう、原因に対して投薬します。アレルギー剤などですね。内服の鼻血を止める薬、液体の粘膜収縮剤を使うことがあります。

そして、高血圧や糖尿病などの慢性疾患がある方はそれらを治療し、健康状態を良好に保つことも重要です」。

マスク生活で鼻トラブル増加中!

コロナ禍が長引き、マスク生活は終わりが見えません。鼻が長時間マスクで蒸れているせいもあり、鼻の粘膜がムズムズすること、ありますよね。

――不快、かゆいとはいえ、マスク越しに鼻を触るのは感染予防の観点からダメですが、マスクを取って触るのも良くないですよね?

キムシノ氏 「直に鼻を触るとウイルス感染のリスクが増えます。かといって、マスク越しだと強くかいたり、繊維の刺激でかゆく、さらにこすったりすることも。鼻周りを保湿し、かゆみを防ぎましょう。

鼻を外からマスク越しで強くいじって、傷がついた結果、鼻くそが大量に出る、出血する、といった症状が起きて来院する患者さんが増えています。鼻の粘膜に炎症があるところに、花粉や黄砂でムズムズ感が増し、さらにマスクで蒸れると、鼻くその量が増えたり、鼻血が出たりしやすいです。

通常なら抗生剤の軟膏を鼻の入り口の粘膜に塗布すれば治る例がほとんどですが、今年は例年より治りにくいと感じています。抗生剤やアレルギー剤内服、点鼻薬の合わせ技でやっと治る、という印象です」。

――たかが鼻血、たかが鼻くそとあなどってはいけませんね。

キムシノ氏 「鼻血も鼻くそもよくある疾患で、軽度で続かないなら心配はありません。私たちの身体はよくできていて、例えば鼻血などの出血が多くなると人間は血圧を下げて、出血量を減らそうとします。鼻くそも傷を治そうとしている反応の一つです。

鼻血の場合は焦らず、鼻をぎゅっと押さえて、下を向いて血液を飲まないようにしましょう。首の後ろを叩いても意味はないので、じっとして3分押さえてみてください。とはいえ数日続くようだったり、量が多い場合は、身体からのSOSのサインと思って軽視せず、いつもと違うと思ったら、なるべく早めに病院へ!」。

取材協力:木村至信(きむら・しのぶ)

横浜市の馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長・産業医・医学博士。テレビやラジオのレギュラー番組を持つタレントでもあり、「木村至信BAND」でメジャーデビューする女医シンガーの一面も。