チョコレートプラネット、霜降り明星、ハナコという人気と実力を兼ね備えたお笑い芸人たちが出演するフジテレビ系バラエティ番組『新しいカギ』(毎週金曜20:00~)が、4月23日にスタートした。

久々となるゴールデンタイムでのレギュラーコント番組に、SNSでは「思っきり笑った やっぱお笑い最高」「セットのお金のかかり方と気合いの入り方がすごかった」など反響が集まり、フジの主要ターゲット・キー特性(13~49歳)の視聴率では『怒り新党』(テレビ朝日)の復活という注目番組とぶつかった中で健闘。TVerの見逃し配信も、好調に推移している。

『ドリフ大爆笑』『オレたちひょうきん族』『志村けんのだいじょうぶだぁ』『とんねるずのみなさんのおかげです』『ウッチャンナンチャンのやるならやらねば!』『ダウンタウンのごっつええ感じ』など、数多くのテレビ史に残るコント番組を生み出してきたフジテレビには、脈々と受け継がれるDNAがあるという。『新しいカギ』の総合演出を務める木月洋介氏に、その秘伝のタレの一端を聞いた――。

  • 初回に放送された「屋台崩し」のコント (C)フジテレビ

    初回に放送された「屋台崩し」のコント (C)フジテレビ

■大掛かりなセットに美術チームが盛り上がる

『新しいカギ』では、3月からコントの撮影を進めてきたが、その中でも木月氏が手応えを感じるのが「屋台崩し」だ。かつてドリフのコントでも見られた、セットが崩壊する大がかりな仕掛けで、初回冒頭の目玉として放送された。

「せっかくゴールデンでコントをやるなら、屋台崩しは挑戦したいと思ったんですけど、収録の1週間前に言ったんですね。美術チームに『何言ってんだよ!』って怒られるかと思ったら、逆に『そうか! やるぞー!!』って盛り上がるんです(笑)。こういう大がかりなものはしばらくやってなかったので、溜まっていたものが発散できる感覚なのかもしれないですね」(木月氏、以下同)

フジだけでなく、各局で広告主の求めるターゲットに視聴率指標を重視するようになったことに伴い、お笑い番組、そしてコント番組が増産されているが、その中で『新しいカギ』が出していく特色の1つは、この「屋台崩し」に象徴されるようなゴールデンならではの規模感だ。

「コント番組の差別化というのは非常に難しいんですが、やはりゴールデンだからこその“気合”をどう見せるか。舞台や芸人さんのネタとは違うテレビコント、つまり“画”を重視したものになっていくと思います」と意気込み、「ほかにも、描くテーマを“今”を表しているものにしたり、キャラクターが面白いコントを多く出していくことなどを考えています」と構想を語る。

ヒットキャラクターは番組の顔となり、放送外に展開していく可能性も秘めている。「1月の特番と初回の放送にも登場した、チョコプラの松尾さんが演じる『ぶっとび!飛美男くん』というキャラクターは、二次創作のイラストを描いてくれる方が多くいらっしゃって、こうやって広がるんだなと思いました」と、その波及ぶりを実感。

その上で、「僕がお仕事をさせて頂いているある大物芸人の方が言っていたのですが、(明石家)さんまさんを始め“日本人の心に深く刺さったキャラクターを持ってる人はずっと強い”というのが、なるほどなと思いました」と納得したそうだ。

  • 「ぶっとび!飛美男くん」

  • 「サカガミくんとオオタくん」

  • (C)フジテレビ

■「愛されるキャラクター」を生み出す設定

数々のコント番組を生んできたフジだからこそ、そのDNAは脈々と受け継がれている。『新しいカギ』を立ち上げるに当たって、木月氏は「いろんな方から教えを請うことができるので、それはありがたいですね」と語る。

『ワンナイR&R』の渡辺琢氏には毎週のようにコント台本を見てもらっているそうで、エンドロールで「Special Thanks」と明記。具体的に、「ツッコミがなく、ボケ同士で延々やれるのが究極のコント」、さらに「ただ嫌な奴のキャラクターを作ろうとしていないか。嫌なことをしているのにも理由があって、それを基に設定を考えていくと、愛されるキャラクターができる」といったアドバイスを受けたそうで、木月氏は「目からウロコの意見をどんどん頂けるんです」と吸収した。

こうしたノウハウの継承は、技術・美術チームにとっても大事なことで、屋台崩しコントにおいても若手スタッフへ、ベテランスタッフからの技術継承が行われていた。改めて、ベテランの仕事を見て、「屋台崩しもそうですが、フジテレビに脈々と伝わる技術がすごいんです」と驚かされたそうだ。