ウルトラマンシリーズ最新作『ウルトラマントリガー NEW GENERATION TIGA』が、テレビ東京系にて2021年7月10日毎週土曜あさ9時より、放送スタートする。
『ウルトラマントリガー』は、今年で誕生25周年を迎えた平成ウルトラマンシリーズの第1作『ウルトラマンティガ』の真髄を受け継ぐものとして企画され、『ティガ』の原点を踏襲した「令和版ウルトラマンティガ」と呼ぶべき作品になっているという。先日発表されたティザービジュアルには、ウルトラマントリガーの他にウルトラマンティガの姿が確認でき、両者に何らかの関係があることをにおわせている。
今から四半世紀前、"彼"は突然テレビの前に現れた。ここからは、55年にわたる長い歴史を持つ「ウルトラマンシリーズ」において、『ウルトラマンティガ』がどのようなポジションにあるのかを改めて調査し、その革新的な作品世界についての解説を試みたい。
『ウルトラマンティガ』の第1話「光を継ぐもの」が放送されたのは、1996年9月7日。オリジナルビデオシリーズや劇場映画ではなく、連続テレビドラマとして作られた「ウルトラマンシリーズ」としては、『ウルトラマン80』(1980年)以来、実に16年ぶりの快挙だった。
しかし『ウルトラマン80』から『ウルトラマンティガ』まで、世間にウルトラマンの姿がまったくなかったわけではなく、むしろその逆で、新作テレビシリーズのない時代においても歴代ウルトラヒーローや愛すべき怪獣たちは子どもから大人まで、幅広い世代からの人気を維持し続けていた。
80年代中盤あたりから家庭用ビデオ録画機器が普及してきたことを受け、全国各地に「レンタルビデオ」ショップが激増。80年代後半になると、週末に家族連れがレンタルショップに赴き、好きな映画やテレビドラマのビデオソフトを借りるというのが、人気のライフスタイルとなった。親の世代が当時の大ヒット洋画作品を観る一方で、子どもたちはウルトラマンシリーズに代表される、かつての特撮ヒーロー作品のビデオソフトに"新しい作品"と同じような新鮮さと魅力を感じ、楽しんだ。
1988年4月1日からは、歴代ウルトラマンシリーズの各作品から"怪獣・宇宙人"の名場面を抜粋して紹介する5分間の帯番組『ウルトラ怪獣大百科』がスタート。1983年から発売されていたバンダイのソフビ(ソフトビニール)人形「ウルトラ怪獣シリーズ」との相乗効果もあって、子どもたちからの人気を集めた。『大百科』の好評を受け、帯番組は『ウルトラ怪獣大図鑑』『ウルトラマンM715』『ウルトラマンM715ウルトラヒーロー必殺技大研究』『ウルトラマンM730ウルトラ怪獣攻げき技大図鑑』……と内容を変化させながら『ウルトラマンM730 ウルトラマンランド』(1996年)まで、8年以上にわたって続けられた。
時代が「昭和」から「平成」に移った1989(平成元)年は、ウルトラマンをめぐる動きがそれまで以上に活発化した年でもある。3月には、実相寺昭雄監督による実話風フィクション小説をベースにした"特撮に青春をかけるスタッフたちの奮闘記"というべきドラマ『ウルトラマンをつくった男たち・星の林に月の舟』(TBS)が放送された。
そして4月には、アメリカで生まれたアニメ版ウルトラマン『ウルトラマンUSA』が日本初公開(ウルトラマン大会)。7月には、今や夏休みの名物イベントとして絶大な人気を博す池袋サンシャインシティでの『ウルトラマンフェスティバル』の第1回が開催されている。
翌1990年はオーストラリアとの合作によるビデオシリーズ『ウルトラマンG(グレート)』、そして1993年にはアメリカとの合作『ウルトラマンパワード』がリリース。『USA』『G』『パワード』はいずれもウルトラマンを海外で通用するキャラクターにするべく工夫を凝らして作られており、90年代のウルトラマン文化を語る上で外せない作品群である。
90年代に入ると、親子2世代でウルトラマンを楽しむ現象が目立ち始める。親世代はノスタルジーで、子どもたちは初めて目にする魅力的なヒーローとして、ウルトラヒーローや怪獣・宇宙人を愛するようになった。
ウルトラマンやバルタン星人が愛らしい2頭身キャラクターにディフォルメされ「自動車のブレーキランプ」やUFOキャッチャーぬいぐるみ、生活用品、ファンシーグッズなど、それまでになかった分野にも展開を拡げ、好評を博した。いわゆる正統派の"かっこいい"ヒーロー性はソフビ人形やアクションショーで尊重する一方、ウルトラマンを"かわいい"キャラクターにアレンジしてグッズ展開の幅を広げる。現在でも積極的に行われているウルトラマンシリーズの"2方向"からのキャラクター展開は、90年代前半で確立を見たと言っていいだろう。