異国が開国を迫っている事実に、けしからんとばかりに朝廷に報告する斉昭(竹中直人)に、慶喜と長男・徳川慶篤(中島歩)がやりすぎを心配し、隠居を迫る。斉昭は「攘夷」と全身を使って書をしたためる。その激しい文字に彼の熱い想いが伝わってくる。
この「攘夷」の思想を田舎の村に伝える役割を果たすのが、血洗島に道場破りがやって来た北辰一刀流門人・真田範之助。演じているのは板橋駿谷。吉沢亮とは朝ドラ『なつぞら』で十勝組だった。
頭もいいが力も強い栄一だったが残念ながら真田には負けてしまう。真田を破ったのは「北武蔵の天狗」こと長七郎だった。道場破りのあとは酒を酌み交わす若者たち。「いまの江戸のはやりは尊皇攘夷の心よ」と伝える真田。日本の未来を考えて、腕を磨く若者たちの爽やかな青春群像。そんな若者たちは千代を意識する。
「長七郎に剣で勝った者にしかやれねえな」と惇忠に焚き付けられて、栄一や喜作が長七郎に勝負を挑むところは微笑ましい。栄一が千代を意識し過ぎて、そのつもりもなく冷たくしてしまったりぐるぐるする~と大騒ぎしたりするところも親しみが持てる。
安政4年(1857年)の新年。斉昭の様子を心配する妻・吉子(原日出子)。彼女に、妻を持て余していると嘆く慶喜に、吉子は「夫が素直でよき心をもてば 妻もおのずと良妻になるものかもしれませぬ」と助言する。『青天に衝け』では男性と女性がバランスよく協力し合っていい国を作るように描かれていくのだろう。
尊皇攘夷に興味をもち、江戸に行きたいと考える栄一は、慶喜と思いがけなく並んで用を足すことになる。第1回で描かれたふたりの出会いの前の出会いがあったのだ。
最後に、主要人物が立ち小便する大河はヒットする法則をあげておきたい。『真田丸』第23回では家康(内野聖陽)と信繁(堺雅人)、秀吉(小日向文世)と家康が並んで、『独眼竜政宗』の第24回では秀吉(勝新太郎)が政宗の目の前でやっていた。
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