裸エプロンのジャケット写真が鮮烈な印象を与えたソロ・デビュー曲「カレーライスの女」で知られるソニン。現在、数々の舞台作品で力強い存在感を放っている彼女は、歌手としてスタートした20年越えのキャリア形成について「運が良かったんだと思います」と語る。しかし、彼女のこれまでを支えてきたのは、決して運だけではない。彼女は常に変化を恐れず「感謝」と「謙虚」を胸に、芸能界を駆け抜けてきた。
――デビュー20周年を迎えた昨年からは、新型コロナが猛威を振るい始めました。コロナ以前と以降で、お仕事をする上での健康面に対する意識には、どんな変化がありましたか?
健康面では、免疫を上げなきゃっていう気持ちにはなりましたけど、食は何も変えていないかな。免疫を上げるためにビタミンCをたくさん摂ろうとか、加工品じゃなくてちゃんと栄養のあるホールフーズ(自然食品)を摂ろうとか。そういう意識はあったんですけど、特に何かを変えたわけじゃないかもしれないです。
――普段からの健康に対する意識のおかげで、体調を崩さずにやってこれた。
今、どこまでどういう風に気をつければ(コロナに)かからないのかなんて、正解はないんですけど、今のところ体調も崩さずに。もちろん、対策などは異常に気をつけています。ただ、食べるものに対しては、「免疫を取り合えず落とさないように!!」と気をつけていますけど、何かが変わったっていうわけではないですね。とにかく、今までやってきたことを。「自分の体調の変化に対して敏感に」というくらいです。
――20年は文字にするとたった3字ですが、とても長い時間ですよね。これだけ続けることができている理由を、改めて自己分析すると?
運が良かったんだと思います。私はご存じの通り、引退してもおかしくないようなことが、けっこう起きたりしていて。最初は歌手デビューをしましたけど、「歌手だけでは生きていけないんじゃないか」と言われながら、芝居というものに巡り合って、舞台っていうものに巡り合って。ちょっと形を変えながらでも、続けてこれたのは、すごく運が良かったなって思います。
運イコール、人との出会いだったり、仕事・芸術の面でも、いろいろなものとの出会いがあって。それを繋いできたんです。一つに固執しちゃうと、絶対に続かなかったことを、「新しい自分」を恐れずに、「見にいこう!!掴んでいこう!!チャレンジしていこう!!」って思えたから、多分繋がったのかなと思います。でも、やっぱり運が良かったんだと思います。大人になったらというか、みんな感じることかもしれないですけど、絶対にまず感謝するんです。何に対しても、人に対しても、状況や環境に対してもそうです。あと、謙虚さを持つ。この二つは、多すぎることはない。感じて多すぎることは、絶対にない二つだと思っているんです。日本は謙虚さが得意過ぎて、過ぎると埋もれちゃうかも知れませんが(笑)。
――これまでのキャリアを踏まえて、あえて転機を挙げるなら?
いっぱいありますけど…一番言っているのは、ニューヨーク(留学)かな。自分の肩の荷が下りた感じがしたんです。それまでは、少し頭が固かったんですよ。それがフレキシブルに、パンって弾けたのは、やっぱりニューヨークでした。
――具体的には、どんな影響を受けたんですか?
ニューヨークって、いろいろな人種の人が生きていて、自分が好きなように生きているんですよ。それを受け入れてもらえるのが、ニューヨークなんですよね。いろいろな人種が住んでいる街なので。みんな自分勝手に生きていて、自分の文化のルールで生きていて。日本的に考えると、「勝手だな」って最初は思うんですよ。でも、その強さ、「自分を貫く強さ」が、すごく清々しいというか。尊敬に代わっていくんです。
それで「自分って、くだらないことを気にして生きてきたんだな」っていうことに気づくんです。彼らは人のことを気にしていないし、自分が生きやすいように、自分らしく生きる為に、格好もそうだし、生活の仕方もそうですね。彼らを見ていると、自分って「こうしなきゃいけない」「ああしなきゃいけない」「誰かが見ているから」「誰かのために」っていうイメージで固まっていたんだなっていうことに気づいて。「かっこ悪い自分」みたいなものを、受け入れるようになったんです。
かといって、ニューヨーカーがみんな自分勝手かと言ったら、そうじゃないんです(笑)。彼らには、もっと違う愛情や思いやりがあるんですよね。気の遣い方とか。謙虚さも、またちょっと違う謙虚さを持っていたり。英語で「humble=謙虚さ」って言いますけど、彼らはすごく大切にしているんですよね。優しさもそうです。日本人とはまた違う「politeさ(優しさ)」があって。そういった意味で、良いとされているボランティア精神も、価値観が変わった感じがしていて。日本で言う謙虚さが、どういう謙虚さなのかが、最早わからないんですけど(笑)。
――日本だと、控えめ=謙虚さという考え方があるかもしれないですね。自分を褒めることは後ろめたいというか。
私の考える謙虚さと、ちょっと違うかもしれないですね。私も、自分を過小評価しがちなんですけど、それは「自分なんてダメ……」ということじゃなくて、「ここで満足しちゃいけない」「絶対にもっと素晴らしい人がいる」「素敵な人がいる」って思うこと。自分をいじめるんじゃなくて、もっと上がいるから、「明日も頑張ろう‼」みたいな気持ちです。
――「もっとやれる‼」という向上心があるんですね。
自分を控えめにするなんて、絶対にしないです(笑)。感謝しつつ、横柄になるんじゃなくて、天狗にならないってことかな。私の謙虚さは。とりあえず感謝して、でも謙虚に。舞台っていうものに感謝して、出来ることに感謝して。「自分一人でやれていることじゃない」っていう意味かな。そういう意味の「humble=謙虚さ」ですね。
●ソニン
1983年生まれ。2000年、EE JUMPとしてCDデビュー。2002年、シングル「カレ―ライスの女」でソロアーティストとして活動開始。翌年ドラマ『高校教師』(TBS系)で女優としても活動を始める。2007年『スウィニー・トッド」でミュージカル初舞台。その後、海外留学をへて、現在、女優業を中心に活躍している。第41回菊田一夫演劇賞、第26回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。 3月22日にはスタイルブック『ソニンの美・ヴィーガン』(2500円 東京ニュース通信社刊)を発売する。