2011年3月11日に発生した未曾有の災害・東日本大震災から10年。マイナビニュースでは、この震災に様々な形で向き合ってきた人々や番組のキーパーソンにインタビューし、この10年、そしてこれからを考えていく。

海の幸と田畑の恵み豊かな集落、宮城県仙台市の荒浜地区は、2011年3月11日に起きた東日本大震災による大津波により、暮らしが根こそぎ奪われてしまう――。そんな荒浜地区に生きる人々の姿を、震災前から記録していた映像と共に綴るNHKスペシャル『イナサ~風寄せる大地 16年の記録~』(3月8日22:00~22:59)。本作に込めた思いとはどんなものなのだろうか――制作統括の福田秀則氏に話を聞いた。

  • 『イナサ~風寄せる大地 16年の記録~』荒浜の漁師・佐藤吉男さんと孫の眞優子さん

東日本大震災からの10年を振り返り、課題や教訓を未来につなぐためのプロジェクト「あの日、そして明日へ ~それぞれの3654日~」の関連番組として放送される本作だが、荒浜地区の映像記録は2005年までさかのぼる。

福田氏は「企画のスタートは、仙台局にいた伊藤孝雄カメラマンが、どんどん整備されていく地方都市の風景のなか、日本の集落の原形がしっかり保たれており、そのなかで季節の風と共に当たり前のように人々が暮らしている荒浜という地域に魅力を感じたのが始まりだったんです」と説明する。

取材開始時は、豊漁を呼ぶ南東の風イナサ、そして冬の保存食作りに欠かせない西風ナライなど、自然に寄り添い生きる人々の何気ない日常を記録した。そんななか、誰もが予期せぬ大きな災害、東日本大震災が発災し、人々の暮らしを奪ってしまった。

当然のことながら、制作サイドにも撮影を継続するべきかどうかという葛藤はあった。福田氏は「ドキュメンタリーを作るとき、取材をする側と、受ける側には信頼関係が必要になります。特に東日本大震災のような大きな災害があったときは“なにを伝えるのか”ということに共通の認識が必要になります」と大前提を述べる。

そんななか、制作サイドと荒浜に住む人たちには一つの共有できる思いがあった。それは共に辛い経験をしてきたこと。「伊藤カメラマンが住んでいた若林区を含む仙台市には多くの犠牲者が出ました。地震が起きたときは、彼自身とも連絡がつかず、最悪のことも脳裏をよぎりました。また、NHK側にも親類を亡くした人もいました。ある意味で、取材する側も受けていただく側も、同じ痛みを経験していたんです」。

だからこそ、震災後、雨の日も風の日も現地に赴いて取材することの“意味”を、荒浜の人々にも共有してもらえたという。

震災から1年後の2012年6月にはNHKスペシャル『イナサがまた吹く~風 寄せる集落に生きる~』が放送された。そこには、震災によって失ってしまった荒浜という土地の伝統の暮らしを復活させたいと動きだす荒浜の人々が記録されていた。