BPO放送倫理検証委員会は10日、架空データが含まれたフジテレビの世論調査報道に対し、「重大な放送倫理違反があった」とする決定を公表した。

フジテレビ本社=東京・台場

フジテレビは昨年6月19日、19年5月から20年5月まで14回にわたり行った世論調査「FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞 合同世論調査」のデータの一部に架空入力があったと発表。フジが調査を委託した会社が再委託した調査会社で、実際には電話をしていないにもかかわらず「電話をした」として架空の調査データが入力されていたと明らかにした。同局は世論調査を休止し、19年5月19日から20年6月1日にかけて18のニュース番組で伝えた世論調査結果とそれに関連する放送を取り消した。

それを受け、BPO放送倫理検証委員会は、放送倫理違反の疑いがあるとして審議入り。世論調査の業務を委託先の調査会社に任せたままにし、架空データが含まれた世論調査結果を1年余りにわたり報じたもので、「市民の信頼を大きく裏切り、他の報道機関による世論調査の信頼性に影響を及ぼしたことも否めないと」として、「重大な放送倫理違反があった」と判断した。

同委員会は「世論調査も取材の一環である。調査の実務を外部に委託していたとしても、『現場を踏む』『素材が正しいかどうかを何度もチェックする』というジャーナリストとしての基本姿勢が報道局内で徹底されていれば、(調査委託先の)A社への対応も違ったものになり、本件放送は未然に防止できた可能性があったと言わざるを得ない」と指摘している。

フジテレビは今年1月、再発防止策を策定し、1月23・24日に世論調査を再開、25日のニュース番組で調査結果を放送した。