今年で創業120周年を数える老舗バイクメーカーのロイヤルエンフィールドが、日本初となるブランドショールームを東京・杉並区にオープンするという。その一報を聞き、「なぜ、コロナ禍の真っ只中である今なのか」という疑問が浮かんだ。その理由を1月29日のオンライン発表会で聞いた。

  • 「Royal Enfield Tokyo Show Room」の外観

    「Royal Enfield Tokyo Show Room」の外観。ブランド発祥の地である英国のユニオンジャックを彷彿とさせる

ライダー同士の交流の場に?

1901年に英国・レディッチ市で産声を上げたロイヤルエンフィールド。第二次世界大戦を経た1955年に生産拠点をインド・マドラスに移し、インドのオートバイ業界を牽引してきた。近年ではインドのみならずアジアを中心にシェアを拡大しており、ミドルクラスの二輪車セグメント(250cc~750cc)におけるリーディングブランドとなっている。

そんな同社の日本初展開となるブランドショールーム「Royal Enfield Tokyo Show Room」は、企業哲学である「Pure Motorcycling」(ピュア・モーターサイクリング)を前面に押し出した施設だ。

  • 「Royal Enfield Tokyo Show Room」の内観

    「Royal Enfield Tokyo Show Room」の内観

ショールーム内には日本で販売する「バレット 500」「クラシック 500」「ヒマラヤ」「インターセプター 650」「コンチネンタル GT 650」の5車種に加え、ライディングギアやアパレル・アクセサリーなどを展示。また、各所にくつろげるスペースが設けられているのが確認できる。さながら、モーターサイクル愛好者のリビングのような設計だ。

同社はこの場所を試乗会会場やアフターマーケットサポートを提供する施設としてはもちろん、ライダー同士が会話を楽しむ交流拠点としても活用していきたい考えだという。

  • ロイヤルエンフィールド「ヒマラヤ」

    優れたオフロード性能を誇り、険しい山道からわだちや段差のある市街地でも快適に走行できる「ヒマラヤ」。価格は62.5万円からだ

なぜ今? アジア太平洋地域責任者を直撃

「Royal Enfield Tokyo Show Room」のオープンには当然、日本での販売強化の狙いがあるだろう。ただ、現在は2度目の緊急事態宣言が発令されるなど、新型コロナウイルスの猛威にさらされている状況だ。タイミングとしては、いささかよろしくないようにも感じられる。さらにいえば、バイク離れが叫ばれて久しい日本で今後、急激にバイク需要が伸びるとも考えにくい。同社のアジア太平洋地域責任者ビマル・サムブリー氏に疑問をぶつけてみた。

――120周年という節目の年であるとはいえ、なぜコロナ禍の今、日本でショールームをオープンするのでしょうか。

サムブリー氏:確かに新型コロナウイルスの感染状況は厳しいもので、昨年はインドをはじめ世界各地での事業に大きな影響を与えました。しかし、私たちは長期的な計画や目標を下げたりしていませんし、市場や製品に対する私たちの未来目標に向けて確固たるコミットをしていくという考えに変わりありません。その中で、特にアジア太平洋地域と日本はロイヤルエンフィールドにとって非常に重要な市場であり、これらの市場でのプレゼンスを拡大していくことを強く望んでいます。

――今、「日本は非常に重要な市場」という言葉がでましたが、現状を見ると、バイク離れが進んでいる日本は魅力的な市場ではないような気がします。具体的に、日本市場のどこに魅力を感じるのでしょうか?

サムブリー氏:それは、日本のモーターサイクル産業とライディング文化が非常に発展しているところですね。私たちは体験型のモーターサイクルブランドとして、見た目がすばらしく、かつレジャーや日常で乗るのがとても楽しい、そんな新時代の消費者に適したモーターサイクルのデザインと製造に積極的に取り組んできました。現在、ミドルクラスの二輪車セグメントに世界中の消費者が関心を持ってきているのはご存知ですか? コミューターバイクと750cc以上のバイクセグメントの消費者が、ミドルセグメントへと移っているのです。過激すぎず、誰もが親しみをもって楽しめるモーターサイクルを所有したい、乗りたいという欲求は、世界的なトレンドとなっているのです。

――そうした世界的な流れは、バイク文化が成熟している日本でも同様であるとお考えなわけですね。そして、その中でなら日本でのシェアを伸ばすチャンスがあると?

サムブリー氏:私たちは各国の市場ごとに一歩一歩ブランドを構築していくことを信条としており、その土地の文化に敏感です。強制的でも作為的でもなく、経験や乗り心地、コミュニティに焦点を当て、21世紀的な方法でブランドを構築していく所存です。私たちは使いやすさと新しい時代の消費者との関連性に裏打ちされた製品をそろえ、常に目標を持って進んでいきます。

  • ロイヤルエンフィールド「クラシック 500」

    第二次大戦後の英国バイクを象徴するレトロ・ストリート・モデルとして、当時のスタイリングを今に残す「クラシック 500」。価格は71,3万円から

現在のバイク離れも、紐解いてみれば、直近10年で販売台数を大きく落としているのは50cc以下の原付一種で、250cc以上では横ばいから上向きの傾向にある。また、カワサキが「メグロK3」として伝統のメグロブランドを復活させたように、日本のバイク市場ではネオレトロブームが依然として続いている。80年以上にわたって生産が続けられる「バレット」をはじめ、レトロスタイルのバイクを多く手掛けるロイヤルエンフィールドがシェアを伸ばしていく下地はあるのかもしれない。

  • ロイヤルエンフィールド「コンチネンタル GT 650」

    本格カフェレーサーモデルの「コンチネンタル GT 650」。価格は79.5万円から

なお、「Royal Enfield Tokyo Show Room」の一般公開日は、新型コロナウイルスの感染状況次第ではあるが、現状では3月上旬が有力とのこと。オープンのあかつきには、ぜひ一度足を運んでみていただきたい。