年収650万円世帯の毎月の手取りや、現代の日本においてこの収入額は高いのか、低いのかについて解説します。その上で、生活水準や住宅ローンを組むべきなのかといった点についてもご紹介します。

いきなり年収650万円といわれてもピンと来ないという方も多いかもしれません。毎月の手取りは日々の生活に直結しますので常に意識しているかもしれませんが、給与所得のみで生活している方の場合、税金や保険料なども天引きで確定申告なども行わないケースが多いことから、年間の総所得について考える機会は案外ないものです。

  • 年収650万円は多い? 少ない? 手取りは?

    年収650万円の生活はどのようなものなのでしょう

年収650万円は高い? 低い?

国税庁による「令和2年分 民間給与実態統計調査」によると、令和2年度に1年を通じて勤務した給与所得者の1人あたりの平均給与は約433万円です。

男女別にも平均給与には差異があり、男性で約532万円、女性で約293万円となっています。この平均値から考えると1人あたりで年収650万円は平均よりも高いということになります。

年収650万円の手取り

保険料や税金などは所得のみでなく家族構成などによっても異なりますが、年収650万円の場合、年間の手取り額は500万円前後となるケースが多くなります。

年収とは、1年間の収入の合計額を指します。しかし、給与所得などで収入を得てもその金額がそのまま手元に入ってくるわけではありません。健康保険料や厚生年金保険料、そして所得税や住民税などを払わなければなりません。

年収650万円世帯の割合

今日では結婚後も夫婦共働きの世帯も多くなっていますので、家庭を持っている方の場合、生活の基盤となるのは個人の収入ではなく世帯収入です。

では、世帯収入で650万円は高いのでしょうか? それとも低いのでしょうか?

厚生労働省による「2019年国民生活基礎調査」によると2018年1月1日~12月31日間での1世帯あたりの平均所得額は約552万円です。分布でみると年収650万円世帯が属する「年収600~700万円」世帯の割合は全体8.1% となっています。

つまり、世帯収入として考えても年収650万円は平均よりも高く、比較的収入が多いと考えることができるでしょう。

年収650万円のメイン年齢層は?

給与取得者の年収は、生涯雇用制度が一般的だったころは年齢に比例して高くなるのが一般的でした。しかし、今日では働き方や雇用の形も多様化したことによって、一概に年齢と収入が比例するとは言い切れなくなっています。とはいえ、やはり年齢と年収の関係が気になるという方も多いでしょう。

では、年収650万円のメイン年齢層はどのくらいなのでしょうか。

国税庁による「令和2年分 民間給与実態統計調査」では20歳から5歳単位で平均年収のデータが出ています。

こちらを確認すると男女の合計の平均値で年収650万円に届いている分布はありませんが、男性に限定すると50~54歳が約656万円、55~59歳で約688万円となっています。

もちろん、これは平均値をベースにしていますのであくまで一つの見方ですが、年収650万円台のメイン年齢層は50代以降であると考えることができるでしょう。

  • 年収650万円は多い? 少ない? 手取りは?

    年収650万円の実態に迫ってみましょう

年収650万円の生活水準

年収650万円台とはいっても給与所得者の場合、実際の手取り額は500万円前後でボーナスの有無によっても異なりますが単純計算で毎月の手取り額は35~40万円前後となります。

先ほどもご紹介した通り、年収650万円台は現代日本の平均から考えても多く、ある程度高い生活水準を維持できると考えることができるでしょう。それでは、具体的に年収650万円台の暮らしについてご紹介します。

年収650万円の暮らしとは?

手取りからの支出は大きく分けて生活費、娯楽費、貯金の3つに分けられます。中でも生活水準を考える上で重要となるのが生活費です。

先述の通り年収650万円台の世帯の場合、毎月の手取りは35~40万円前後となります。生活費に対する考え方は人によって異なりますが、一般的には手取りの6割程度に収めるのが理想的だとされています。

仮に月の手取りが35万円とすると毎月の生活費は21万円ということになります。

生活費には家賃や水道光熱費、食費、通信費などが含まれます。生活費の半分を家賃に充てるとすると10万5,000円、4分の1を食費に充てると5万2,500円、そして残りの5万2,500円が水道光熱費や通信費にあたります。

もちろん、立地や家族構成などによっても異なるかと思いますが、手取りの4割を娯楽費や貯金に充てても無理なく生活できる額であると考えられます。

年収650万円でできること

家族構成や立地などによって違いはあっても、年収650万円台の場合手取りの約6割でも十分に生活は可能です。手取りが35万円とすると残りの4割は14万円です。

無理なく購入できる車の額は年収の半額などといわれることもありますが、実際にはどうなのでしょうか。

300万円前後の車を5年間のマイカーローンを組んで購入したとすると頭金、ボーナス払いなしでも毎月の返済額は約5万6,000円です。500万円の車の場合も同じく5年ローンで毎月の返済額は約9万3,000円になります。貯金のことを考えても生活を圧迫することなく返済できるでしょう。

例えば、高級車の代名詞的な存在であるメルセデス・ベンツの定番であるCクラスの現在の新車価格は税別で489万円からとなっています。ですので、年収650万円は、ベンツを無理なく購入できる年収であると考えることもできます。ただし、これは車両価格のみの話で、車の維持費などについては考慮していませんのでご注意ください。

車のローン以外でもこのくらいの額までであれば生活を圧迫することなく使うことができると考えていいでしょう。

年収650万円の貯金額

貯金についてもさまざまな考え方がありますが、理想的な貯金額の目安として手取りの2割という額が挙げられます。手取り月収が35万円だとすると2割は7万円です。つまり、毎月7万円以上の貯金ができるのが理想だと考えられます。

  • 年収650万円台の生活水準

    将来設計は必ず必要です

年収650万円の将来設計

年収650万円台という収入は決して低くはありません。しかし、平均以上の収入であるからといって、無計画で安定した生活を送ることができるとは限りません。

将来のことを考えるのであればしっかりとした将来設計が重要となるのです。そこで、最後に年収650万円台の将来設計についてご紹介します。

住宅ローン

年収650万円はすでにご紹介した通り、現代日本の一般的な平均収入より高いため、住宅ローンを問題なく組むことができます。しかし、実際に住宅ローンを組むとなれば気になるのはどのくらいの額までの住宅を購入できるのかという点です。

住宅金融支援機構のフラット35では、年収650万円の場合の返済負担率は35% 以下となっています。

つまり、1年で返済額が約227万円以下のローンを組むことができるということになります。そして、住宅ローンの貸出期間の平均が約27年とされていますので総支払額が6,129万円までの住宅ローンが組める計算になります。

とはいえ、これは上限まで借りようと考えるのであればという仮の話です。

実際に上限ギリギリまで借りてしまうと年収の35% が住宅ローンに消えてしまうことになりますので、仮に生活費を先ほどご紹介した手取り額の6割以下に抑えることができたとしても貯金などの余裕はなくなってしまいます。

また、何らかの事情で一時的に収入が少し下がっただけで返済が難しくなってしまうでしょう。

そこで、実際の返済負担率は約21% となっています。この額で計算すると年間の返済額が約136万円で、同じく27年のローンを組んだとすると3,672万円です。この数値を基準にして購入可能な住宅を検討してみましょう。

子供の学費

子供の学費で特に気になるのはやはり大学でしょう。私立大学になると学費がかなり高くなるというイメージがあり、不安を抱いている方も多いのではないでしょうか。

大学の学費は学部などによってかなりの開きがありますが、文部科学省の「私立大学等の令和3年度入学者に係る学生納付金等調査」によると、私立大学の入学料は平均で約25万円、授業料は約93万円、施設設備費が約18万円で合計すると約136万円となっています。

2年目以降は、入学料が必要ありませんが、さまざまな出費がありますので最低でも年間で100万円以上はかかる計算になります。

年収650万円の場合、年間の手取りは約500万円なので100万円は手取りの2割程度ということになります。生活費が6割前後であると考えると住宅ローンなどを抱えていたとしても、子供を私立大学に通わせることはそれほど難しくありません。

老後に備えた貯蓄

金融庁が「老後2,000万円の貯蓄が必要」という試算結果を出したことが大きな話題になったことも記憶に新しいところです。では、年収650万円の場合どのくらい老後に備えて貯蓄ができるのでしょうか。

先ほどと話が重複しますが年収650万円台のメイン年齢層は50~59歳です。そして、こちらも先ほどご紹介しましたが理想的な貯金額は7万円以上となっています。

仮に51歳から65歳の定年までの15年間にわたって毎月10万円を貯金したとすると、10×12(カ月)×15(年)で1,800万円となります。50歳以前までにあと200万円貯金できていれば老後の貯蓄として2,000万円を貯めることができる計算になります。

  • 年収650万円台の将来設計

    650万円の生活をしっかり考えましょう


年収650万円の生活は、ある程度余裕を持った生活を送ることができると考えられます。しかし、より安定した生活を送るためにはしっかりとした将来設計が必要です。今回ご紹介したポイントを参考にしてみてください。