「強ち」という言葉、をぱっと読むことはできますか? 難読漢字のひとつともいわれているので、少し悩んでしまう方もいるかもしれません。しかし本などでもよく登場する言葉なので、覚えておいても損はないでしょう。

本記事では「強ち」の言葉の意味や語源、例文もあわせてご紹介します。

  • 「強ち」とは

    簡単な漢字ですが、読むことができない人も多いようです。しっかり覚えておきましょう

「強ち」とは

「強ち」とは「断定しきれないさま」をあらわした言葉です。「必ずしも」や「一概に」といった意味があります。他にも「強い否定」という意味もありますが、現代ではあまり使われていません。また、古語では形容動詞として使われていました。

読みは「あなが-ち」となります。漢字自体は小学生の頃に習う簡単なものですが、なかなか読むことのできない難読漢字のひとつです。簡単な漢字だからこそ、読み方を間違えると恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。しかし、このような難しい言葉をさらりと読んだり、会話の中に取り入れられたりすると大人としてかっこいいので、覚えておくといいでしょう。

「強ち」で使う「強」という漢字はご存知の通り「強い」という意味を持っています。他にも「丈夫で強度がある」や「無理に押し付ける」といった意味もあります。読み方は「つよい」や「キョウ」「ゴウ」となります。

他にも「強(こわ)い」や「強(し)いて」「強(したた)か」といった難しい読み方もありますので、一緒に覚えておくといいでしょう。

「強」を使用した熟語は「強弱」や「屈強」「弱肉強食」などがあります。

  • 「強ち」とは

    「強」という漢字には、さまざまな読み方があります

「強ち」の語源は

では、どのようにして「強ち」という言葉がうまれたのでしょうか。語源を知ることで、読みや意味も覚えやすくなります。

強ちとはそもそも古語です。そのため、学生時代に古文の授業で聞いたことがあるという方も多いかもしれません。古語では「無理だ・勝手だ・強引だ」「ひたむき・一途だ」「はなはだしい・ひどい」といった意味があります。

強ちの成り立ち

いくつか意味のある「強ち」ですが、最初は「身勝手なさま」をあらわす言葉でした。身勝手とはつまり自分のことしか考えず、勝手であることです。「あながち」の「あな」は古語で「己」を指します。「己が勝つような考え」つまり「あな(己)が勝ち」から「あながち」という言葉になりました。

  • 「強ち」の語源は

    昔からある言葉ですが、現代にかけて意味が異なってきました

強ちの使い方を紹介

もともとは古語としてうまれた「強ち」ですが、現代で使う場合は「強ち~ない」と否定の言葉と一緒に多く使われています。次に、強ちの使い方を例文もあわせてご紹介します。参考にして、ぜひ日常会話やビジネスシーンでも使用してみてください。

「彼の意見を聞いて部長は笑ったが、強ち的外れでもない」

まずご紹介するのが「強ち的外れでもない」という使い方です。「強ち~ない」の間に「的外れ」を入れることで、「的外れ」を否定した形となります。この文章では「部長はこの意見を相手にしなかったが、一概に的外れなものともいえない」つまり、彼の意見は正しいものであったことがわかります。

「華やかな経歴を疑っていたけど、強ち嘘ともいえないね」

次は「強ち嘘ともいえない」とい使い方です。この使い方では「嘘」を否定しています。華やかな経歴を嘘と疑っていたたが、何かを通して「必ずしも嘘ではないのかもしれない」と認め始めたという文章です。

「この回答は強ち間違いでもない」

次にご紹介するのが「強ち間違いでもない」という使い方です。この文章では「間違い」という言葉を挟んでいます。「間違いではない」に「強ち」をつけることによって、この回答が「定められた正答ではないが、間違いとも言い切れない、あっている部分もある」ものだということがわかります。

シーンにあわせて言い換えも可能

「強ち」の使い方をなんとなく把握できてきたでしょうか。多くは「間違い」や「嘘」「的外れ」などマイナスなイメージを持つ言葉とともに使われますが、それらを否定するといった働きを持っています。

類義語としては「一概に」や「必ずしも」「おしなべて」などがあります。「一概に間違いともいえない」や「必ずしも的外れではない」などシーンに応じて言い換えを検討してみるのもおすすめです。

また、「~ない」という言い方は、相手によっては何重に否定されているものかわからず混乱させてしまうかもしれません。子どもに話すときなどは、「強ち間違いでもない」を「ここはあっているね」などと簡単に言い換えてみてもいいでしょう。

  • 強ちの使い方を紹介

    「必ずしもマイナスとはいえない」という意味を表現できる言葉です

注意! 「強ち」と間違えやすい言葉

次に、「強ち」と間違えやすい言葉をご紹介します。同じ意味のものだと思っていたり、他の言葉の読みに引っ張られて読み方を間違ったりしてしまうということもあるかもしれません。恥をかかないよう、言葉の意味と一緒に間違えやすい語句も覚えておくといいでしょう。

「強か」

まずご紹介するのが「強か」です。これは先ほど「強」という漢字の読み方を紹介したときに登場しましたが、「したた-か」と読みます。意味は「しっかりしている」や「てごわいさま」などがあります。ずる賢く世渡り上手な人物のことを「強かな人」と呼ぶこともあります。

「強ち」と「強か」は同じ漢字を使っていますし、どちらも難しい読み方なので、片方の言葉しか知らない場合に覚えている方に引っ張られてしまうかもしれません。どちらも日常生活などでも頻繁に登場するので、両方覚えておくのがおすすめです。

いささか

次にご紹介するのが「いささか」という言葉です。意味は「ほんの少し」や「ちょっと」。また「いささか~ない」と使えば「少しも~ではない」という意味になります。

「いささか」は「強ち」と同じように「~ない」といった否定とともに使われることが多くあります。そのため、「いささか」と「強ち」の意味を混同してしまうケースが見られます。

しかし「いささかも揺るがない」といえば「まったく揺るがない」という意味になるなど、「いささか」と「強か」では意味ががらりと異なります。

「強ち」は「~ない」の前にくる言葉を否定する効果がありますが、「いささか」は「~ない」の前にくる言葉を強調する形で使われます。うっかり間違えると文章そのものの意味が変わってしまうので、気をつけるようにしましょう。

また、先ほどの「強か」を「いささか」と読んでしまう方も少なくありません。一つひとつの言葉の意味と読み方をしっかりと整理することが大切です。

  • 注意! 「強ち」と間違えやすい言葉

    さまざまな言葉を知っているからこそ間違えるということもあります。混同しないようしっかり覚えましょう

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「強ち」は「必ずしも」「一概に」という意味の言葉です。もともとは「身勝手だ」という意味の古語でしたが、現代では「強ち~ではない」という使い方が主流となっています。難読漢字のひとつなのでしっかりと「あながち」と読めるよう混同しやすい言葉も一緒に覚えておくといいでしょう。

小説や新聞などで目にすることの多い言葉ですが、日常生活でなかなか使えないという方も少なくないのではないでしょうか。意味や読み方をおさえて、適切なシーンでさらりと使いたいですね。