2020年春に始まった新型コロナウイルスの感染症対策として、出勤者数の7割削減を目指す在宅勤務(テレワーク)が多くの企業で実施されることとなりました。急速に広がるテレワークの浸透により、ウィズコロナ・ポストコロナの時代を見据えたテレワークの位置づけは、労働者にとって今後ますます重要となってきます。

一方、在宅勤務に従事する労働者にとって、在宅時に発生する通信費や光熱費といった各種費用の負担が、世の企業間でどのように取り扱われているのか気になる方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、在宅勤務に伴う諸費用の負担と費用に対する労働者の意識について、以下の項目を軸にアンケート調査を実施しました。

  • 在宅勤務で月々の通信費・光熱費は増えたのか?
  • 在宅勤務導入により、会社からの手当・補助はあるのか?
  • 通信・光熱費以外での出費はどのようなものがあるか?
  • 在宅勤務の費用負担についてどう思うか?
  • 【実態調査】在宅勤務(テレワーク)に伴う費用は個人負担?

調査期間:2021年1月13~20日
調査方法:ネットリサーチ
調査対象:20~50代でテレワーク勤務経験のある男女316人
(男性117名/女性199名、20代86名 / 30代124名 / 40代77名 / 50代29名)
実施:ポート株式会社(マネット編集部)

在宅勤務により通信費・光熱費が増加したとの回答が6割超

在宅勤務で月々の通信費・光熱費の状況については、「増えた」と回答した方が67.7%、「変わらない」が32.3%との結果になりました。

  • 在宅勤務で月々の通信費・光熱費は増えた?

従来のオフィス業務が自宅へ移ったことにより、インターネット通信費や電気・水道などの諸費用は概ね増加傾向にあることがわかります。

また、具体的な変動費用がどれぐらいなのかという質問に対しては、「~1,000円」が33.2%、「~5,000円」が60.7%、「~10,000円」が5.1%、「10,000円以上」が0.9%となりました。

  • 在宅勤務の費用はどの程度変化した?

まとめると、『在宅勤務により通信費や光熱費などの生活費用は増加傾向にあり、その額は概ね~5,000円程度』といった調査結果となっています。

約8割が在宅勤務にかかる経費を自己負担している

「在宅勤務(テレワーク)の導入により、企業からの手当・補助はあるのか?」という問に対しては、「(手当や補助が)ない」との回答が79.7%、「(手当や補助が)ある」が20.3%という結果になりました。

  • 在宅勤務の導入により会社からの手当て・補助は?

企業から手当や補助がなければ諸費用は自己負担となります。

前問での月々にかかる加算費用は概ね「~5,000円」との回答が多く集まっており、労働者の純粋な手取給与が同程度減少していると考えることができます。

一方、企業から在宅勤務に係る手当・補助があると回答した方は、

  • 在宅(リモートワーク)手当
  • 通信費補助
  • 光熱費補助
  • 新型コロナ特別手当
  • 環境整備補助

といった名目で月々の補助が降りており、その補助額内訳は下記の通り「~5,000円以下」が81.2%、「~10,000円以下」が12.5%、「10,000円以上」が6.3%、という結果となりました。

  • 手当・補助の内訳

通信・光熱費以外での出費

在宅勤務にかかる費用は、通信費や光熱費のみではありません。

その他にどのような出費があったのかをアンケート結果からいくつかご紹介します。

▼通信・回線工事費
・Wi-Fiを高速のプランに変更した。
・Wi-Fiの機器に異常が見つかり修理費用が掛かった。
・インターネット環境がなかったので、開通工事をした。
・インターネット回線の新規契約に関する出費があった。

▼PC周辺機器
・WEB会議用としてWEBカメラなどを購入した。
・WEBカメラやマイク付きヘッドホンを新たに購入した。
・サブディスプレイを購入した。
・延長コードなどの備品を購入した。
・スマホスタンドなど環境を整える出費があった。

▼家具・デスク用品
・テレワークをする為の机と椅子を購入した。
・リモート会議のためのライトや室内装飾などを購入した。
・長時間座ってもお尻が痛くならないようなクッションを購入した。
・集中できるようにパーテーションを購入した。
・デスク作業用の暖房器具を購入した。
・寒さ対策のひざ掛けなどを購入した。

▼文房具・印刷機器・消耗品
・紙やペン、切手、封筒などの文房具を購入した。
・プリンターインクカートリッジ代が増えた。
・プリンターのインクやコピー用紙を購入した。
・トイレットペーパー、紙などの消耗品代が増えた。

▼食費
・家で食事をする機会・作る機会が増えたので食費が増えた。
・コーヒーやジュースなどのドリンク代が増えた。
・食費が普段の弁当より掛かってしまった。
・家にいるとつい何か食べてしまうので食費が若干上がった。

▼その他
・WEBカメラに映り込む背景を隠すために、大きな布を購入した。
・家では集中できなかったため、カフェ、漫画喫茶で業務をした。
・環境を整えるためのリフォーム代がかかった。

在宅勤務にかかる費用についての意識

月々の諸費用のみならず、その他の経費を自己で負担している方が多い背景を踏まえ「費用負担の所在についてどう思うか?」についても調査しました。

「発生費用の全額に手当や補助があるべき」と回答した方が24.1%、「部分的に補助や手当があるべき」が55.1%、「ある程度の事故負担、もしくは全額負担は受け入れるべき」が20.9%となりました。

  • 費用負担の所在についてどう思いますか?

費用については、全額もしくは一部を負担してほしいとの回答が全体の約8割にのぼり、現状の在宅勤務制度に対する整備強化を求める声が顕著となっています。

まとめ

日本国内でのテレワーク推奨は、平成30年2月に厚生労働省が策定した「情報通信技術を利用した事業場外勤務(テレワーク) の適切な導入及び実施のためのガイドライン」から始まり、2020年春のコロナウイルス流行により更に一般的なものとなりました。

しかし、本調査の結果からも分かるように、在宅勤務にて発生する諸費用は多くの場合個人の負担となっている現状があり、経費負担の所在について制度整備が今後の重要な課題の1つとなってくるでしょう。

現在、在宅勤務に従事している人もそうでない人も、今後働いていくご自身のために、体制の見直しや提言などを今一度検討してみるのもいいかもしれません。