俳優の山崎賢人(崎はたつさき)と土屋太鳳がW主演を務める、Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』が、現在全世界で配信されている。麻生羽呂氏による同名コミックを実写化した同作は、人生に夢や生き甲斐を見出せず曖昧に生きてきたアリス(山崎)と、どんな苦境でも「生きる意味」を探し続けるウサギ(土屋)が、突然放り込まれた謎の世界“今際の国”で共に信頼を築き、「生き延びる」ために理不尽な現実に挑む姿を壮大なスケールで描いている。この度、好評により続編シリーズの製作も決定となった。

彼らが挑む謎の“げぇむ”は、失敗したら即アウト。知略・真理・体力などそれぞれが自身の能力を尽くして挑まなければならない。今回は、タンクトップ姿で断崖絶壁をロープ一本で登り、マンションの腰壁を乗り越えるなど、クライミングアクションにも挑戦した土屋にインタビューした。

  • Netflixオリジナルシリーズ『今際の国のアリス』主演の土屋太鳳

    土屋太鳳 撮影:宮田浩史

■山崎賢人との再共演、信頼感が作品にも

――今回W主演となる山崎さんとは、連続テレビ小説『まれ』、映画『orange -オレンジ-』(15年)でも共演されていますが、今回の再共演ではどのような印象でしたか?

賢人くんとは以前に共演した作品でも話し合うことが多くて、今回も役やシーンについて話し合いました。その信頼感みたいなものが、すごく役にもつながったと思っています。後半、アリスがぼろぼろになるところでは、賢人くんの演技が素晴らしかったです。賢人くんはぼろぼろになるほど輝くところがすごいし、仲間思いなので、アリスに合っていると思いました。

5年間違う現場を経験して来て、自分との戦いでもあったし、役との戦い、現場との戦いの中で、“げぇむ”じゃないですけど互いに生き残って来れたので、現場にいる姿勢や座長感が強くなっていて、心強いなと感じました。

――土屋さんは、5年の間に変化したことは?

自分のことなので、なかなかわからないですけど、「こうありたい」と思うところは強くなったかもしれません。以前は渦巻きの中にいたような感覚でしたけど、一つひとつの役を「こう演じていきたいな」という気持ちは、より大きくなりました。

――今回はアクションもすごくて、体作りなど準備はされていましたか?

クライマー役で、2回ほど練習の機会がありました。あんまり余裕がなく、「私には向いてないかも……」と思いながらやらせていただいたのですが、たまたま父が趣味でクライミングをやっていたので聞いてみたら、「スリムな人が多い」と言っていたから、やっぱり少し体重を落とした方がいいなと思って、絞りました。私は背が低いし、1kg増えただけでも印象が変わりやすいので、数字的にも食事的にも気をつけました。鍛えるというよりも、食事制限で落とす方に持っていきました。

――ウサギはアクション以外にも、グッとくるセリフがたくさんあったと思いますが、土屋さんの心に残ったセリフは?

高速道路での“げぇむ”に出てくる、「だから、生きて帰らなきゃ」というセリフは、今自分が実際に、常に思ってる言葉なので、心に残っています。仕事が楽しいことが1番なんだろうなと思うんですけど、私は楽しむまではいけていなくて、必死なことが多いから、朝「無事に今日を終えられますように」「女優としてちゃんと任務を果たして帰ってこよう」と思って家を出るんです。だから、その言葉が1番“げぇむ”の中で共感できる言葉だなと思っています。

――それだけ日々一生懸命過ごされているんですね。ウサギやアリスの心情に重なる部分も多かったんですか?

この作品は、フィクションだけどリアルな感覚があるところが魅力ですよね。日常もけっこう残酷で。2つの選択で翻弄されながら生きていて、勝つか負けるか、受かるか受からないか、たとえば記事も書くか書かないかとか、みんな選択に翻弄されてる。山崎賢人くんもあやちゃん(朝比奈彩)も、(三吉)彩花ちゃんも(桜田)通くんもみんな同世代で、これまでのオーディションで会って来た人たちなんです。だから、撮影でも「生き残ってきたね」「また頑張って生き残って会おうね」という感じのことは話しました。

――土屋さんはすごくいろいろな作品で活躍されて、順調にみえますが、まだやっぱり必死という思いも強いんですか?

必死です。昔は1つのシーンのために1カ月間考え続けてバーン! と出す感じだったけど、今はいろいろな作品に出させていただいて、大事なシーンの連続でもあって、瞬発力が大事。皆さん何かを勉強してから職業に就くと思うんですが、この仕事ってその過程がなくて、正解がないのが、恐ろしいです。でも、私にはこのお仕事しかないから、頑張るしかないなと思っています。

■母親はラスボス!?

――先ほど、お父さんがクライミングをされていたというお話でしたが、ウサギのように家族から影響を受けたことはありますか?

「よく噛む」とか、「自分を大切にする」とか、「目の前のことに愛情を注ぐ」とか、そういったことかな? 私の母が、なんというか、ラスボスみたいな人なんです(笑)。なので、母は“げぇむ”でも生き残るだろうなと思いながら撮影していました。

――ラスボスとは……?

雰囲気というか、立ち位置というか……心の中がドン! としている感じ。目が何個あるんだろうとか、脳が私の10個分あるんじゃないかとか思ってしまうくらい、すごいんです。でも集中力がありすぎて、つらいらしいです。不思議な母です(笑)。家族全員、仕事がうまくいって、自分のやりがいや、生きがいを探せるようであってほしいなって。今の仕事、家族、親しい人たちに「好きだよ」と伝えていきたいです。

――それでは、最後に作品を楽しみにしている方にメッセージをいただけたら。

今の時代、当たり前のことが当たり前にできなくなってしまいました。世界も、私たちも「本当にこういうことがあるんだ」と実感した2020年だったと思うんです。それでも、作品を楽しみにしてくださっている方がいる。ぜひみなさん人生のヒント、生きる意味を一緒に探しながら見ていただけたらと思います。

■土屋太鳳
1995年生まれ、東京都出身。2005年、スーパー・ヒロイン・オーディションMISS PHOENIXの審査員特別賞を受賞。その後、ドラマや映画を中心に活躍の場を広げる。映画デビューは2008年の『トウキョウソナタ』。2014年にはNHK連続テレビ小説『花子とアン』出演、翌年に『まれ』ヒロインと立て続けに出演を果たした。その後、映画『オレンジ-orange-』(15年)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17年)、『累 -かさね-』(18年)、ドラマ『チア☆ダン』(18年) 、ミュージカル『ローマの休日』(20年)などに出演。公開待機作に『哀愁しんでれら』(2021年2月5日公開)、『ヒノマルソウル〜舞台裏の英雄たち〜』(2021年5月公開)、『るろうに剣心 The Final』(2021年4月23日)、『大怪獣のあとしまつ』(2022年公開予定)がある。