コミュニケーションの中ではよくことわざが使われることがありますが、どちらか一方が意味を間違えて理解していたり、知識として知らなかったりすれば会話は成立しません。

本記事では、「ルビコン川を渡る」という言葉の意味や使い方、由来について紹介します。類語や英語表現についてもまとめました。

  • ルビコン川を渡るとは

    「ルビコン川を渡る」の意味や由来となる逸話、例文などを紹介します

「ルビコン川を渡る」の意味とは?

「ルビコン川を渡る」は一般的に「とても重大な決断をすること」または「後には引き返せない決断を行うこと」といった意味で使われます。例えば、仕事において重大な決断をしたことを指して「ルビコン川を渡る決断をした」とするなど、環境を大きく左右するような決断をする際に使われます。

「ルビコン川を渡る」という言葉の由来・語源

故事やことわざには必ずその成り立ちの物語があります。「ルビコン川を渡る」という言葉の成り立ちについてご紹介します。

ルビコン川とは

そもそもルビコン川とは、共和政ローマの時代にイタリア本土と属州との境界になっていた川です。現在ではロマーニャのルビコーネ付近にある川がルビコン川と呼ばれていますが、この地域では河川の形状や位置なども変化しているため、当時のルビコン川がどこであったのかははっきりしていません。

古代ローマの軍人であるカエサル(シーザー)にまつわる逸話が由来

「ルビコン川を渡る」という言葉は古代ローマの軍人・カエサル(シーザー)の決断と行動にルーツを持つ言葉だと言われています。当時、カエサルは属州の統治を任されていました。しかし前述の通り、ルビコン川は国境となっていたため、軍を率いて川を越えることが禁じられてました。

それにも関わらず、カエサルは属州から軍を率いてローマを目指します。ローマの法を破ることになるので、当然カエサルは自身の「ルビコン川を渡る」という行動によって戦いが起こることもわかっていました。そして、カエサルの運命とローマの歴史が動き始めます。

こういった出来事から、“大きな変化を覚悟した上での決断”といった意味合いで「ルビコン川を渡る」という言葉が使われるようになりました。

そのときのカエサルの発言は「賽は投げられた」だとされる

なお、そのときカエサルが実際に発した言葉とされるのが「賽は投げられた」(「さいころは投げてしまおう」ともいわれる)です。賽(さい)とはサイコロのことを指します。

「賽は投げられた」自体も「サイコロはもう振られてしまったのだから、どんな目が出るかはわからないが、決断して行動を始めた以上は最後までやり抜くしかない」ということの例えとして知られており、「ルビコン川を渡る」の類語となります。

  • 「ルビコン川を渡る」という言葉の成り立ち

    言葉の成り立ちを知ることで、意味をより深く理解できます

「ルビコン川を渡る」の使い方と例文

「ルビコン川を渡る」を用いた例文は以下のようなものです。使い方をイメージしましょう。

・もうルビコン川を渡ったのだから、いまさら何を言っても無駄だ。
・彼なりの考えがあってルビコン川を渡ったのだろう。
・それはルビコン川を渡る覚悟があっての行動なのですか?
・ルビコン川を渡る覚悟があるのでもう止められない。

「ルビコン川を渡る」の類語

「ルビコン川を渡る」の類語としては前述の「賽は投げられた」の他にも、「清水の舞台から飛び降りる」があります。こちらも覚悟を決めて大きな決断をすることや、後戻りができない状況へと一歩を踏み出すといった意味の言葉です。日本では「ルビコン川を渡る」よりも広く使われているので、よりわかりやすくするために置き換えられるケースも多いでしょう。

また「後戻りできない状況や逃げ場がないことを覚悟して取り組むこと」「決死の覚悟」を意味する「背水の陣(はいすいのじん)」も類語といえます。

  • 「ルビコン川を渡る」の類語・言い換え表現

    類語を知ることで、表現の幅を広げましょう

「ルビコン川を渡る」の英語表現

「ルビコン川を渡る」は英語では「Cross the Rubicon」と言われています。「Cross」は「横切る、渡る」という意味の動詞です。

また「Burn the bridges」、つまり「橋を燃やす」も使えます。橋を燃やしてしまうので後戻りできない状況を表しています。

ことわざ以外では、「重大な決断をする」として「make a big decision」と訳すことができるでしょう。「big」の部分は「important」「critical」などに置き換えることもできます。

シュタイナー教育における「ルビコン川を渡る」とは?

シュタイナー教育においても「ルビコン川を渡る」という言葉が使われることがあります。シュタイナー教育とは、哲学者のルドルフ・シュタイナーが提唱した教育の指針であり、子ども一人ひとりの個性を尊重することによって、能力を最大限に引き出すことを重要視しています。

例えば「年齢に合わせて単に知識を詰め込むのではなく自身で成長するきっかけをつくる」といった方針で教育カリキュラムを組みます。このシュタイナー教育は世界中に大きな影響を与えており、日本にも積極的にこの教育法を取り入れている学校もあります。

シュタイナー教育において、子どもの精神や自我の目覚めを「ルビコン川を渡る」と表します。子どもの成長は二度と引き返すことができないということから、このように表現されると言われています。

  • シュタイナー教育における「ルビコン川を渡る」は自我の目覚めを表す

    シュタイナー教育でも「ルビコン川を渡る」という言葉が使われます

故事・ことわざであるルビコン川を渡るの意味を理解し、使いこなそう

日常会話やビジネスシーンでもさまざまな故事やことわざが使われます。その意味が理解できなくて会話が止まってしまったり、かみ合わなくなってしまったりするといった経験をお持ちの方も多いでしょう。「ルビコン川を渡る」もそのような言葉の一つです。意味のみではなく、その成り立ちも知っておくことで、よりこの言葉を使いこなせるようにしましょう。