芸人だけど話すのは苦手、だけどネタを作ることは大好き。「芸人になったきっかけは、まぎれもなくネタを作るのが好きやったからです。ネタをいろんな人に見てもらいたいから芸人になりました。そこは1回もぶれてないです」と胸を張る。

いまではトーク中心の番組にはあまり出演せず、ネタにすべてを注いでいるジャルジャル。「以前は、苦手だからといってトーク番組に出ないのは逃げているだけなので、成長してうまくなるかもしれないと思って頑張って出ていました。だけど、一向にトークがうまくならないし、一向に空気読まれへんから、向いてないとはっきりわかって、ジャルジャルはネタだけでいくことに。初心に返って、俺らはネタしたいからこの世界に入ったやん! って」。そう腹をくくったのは5年前くらい前とのこと。

ネタだけで勝負すると覚悟を決めた後、2018年2月からYouTubeでコント動画を毎日投稿。コント師としての力を存分に発揮し、人気コンテンツとなっている。その実力は周知の事実だが、『キングオブコント』でキングの称号を手に入れ、実力を改めて証明。この優勝により、世間の目が少し変わったと感じているという。

「僕らジャルジャルは尖っていて、変なコントをしているというイメージがありましたが、『キングオブコント』に1年目から出続け、13回目で優勝。ふたを開けたら誰よりも尖ってなかったんちゃうかって。本当に尖っていたら、一度落ちたらそれ以降受けないだろうし、ボロボロになりながら挑戦し続けて、世間の目がちょっとだけ優しくなった気がします。こいつらほんまにコント好きなんやな、尖ってないんやなって、世間の目が変わった気がします」

このたび小説家としての顔も加わった福徳。「こんな真面目な本を書いたやつがコントでふざけてたら、それはフリになっておもろいと思うし、コント中にふざけまくっているやつが、こんな真面目な本を書いているとなると、それもフリになる。お互いがフリになっていいなと思います」と二刀流のメリットを語る。

小説執筆とコント作りに関しても、お互いに刺激があるのだろうと思ったが、「それはあんまり感じてない」という。「ネタはジャルジャルとして2人で作りますし、そのときはジャルジャル脳。小説を書くときは福徳秀介の脳。全然違うと思っています」

福徳にとって大きな人生の転機となるであろう2020年。思い描く将来像を尋ねると、「芸人としてはコントをやり続けていくというのが最大の目標です」とブレない。小説に関しては何か野望があるのか。「何かを狙うとかそんなことはおこがましいです。ただ、自分の本が誰かの思い出になる一冊になってくれたらうれしいなと願っています」と答えた。

早くも小説第2弾を期待してしまうが、まだ白紙だという。「書けるであればまた書きたいですけど、アマチュア作家なので、まぎれもなく時間をかけなあかんと思っています。改稿を重ねて丁寧に丁寧に時間をかけて仕上げていくタイプ。今回4年で書きましたけど、下手したら次は6年くらいかかるんちゃうかなという気がしています」と笑った。コント師としての福徳の活躍を追いかけつつ、気長に次回作を待ちたい。

■福徳秀介
1983年10月5日生まれ、兵庫県出身。関西大学文学部卒。同じ高校のラグビー部だった後藤淳平と2003年にお笑いコンビ・ジャルジャルを結成。テレビ、ラジオ、舞台、YouTubeなどで活躍中。『キングオブコント』に第1回から出場し、13回目の挑戦となった2020年大会で悲願の優勝を達成した。一方で、絵本『まくらのまーくん』は第14回タリーズブックアワード大賞を受賞するなど、著作活動も。近著に絵本『なかよしっぱな』がある。そして、11月11日に初の書き下ろし小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を刊行した。