今年9月に一般女性と結婚、同月に『キングオブコント2020』で悲願の初優勝を成し遂げ、幸せなニュースが続いているお笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介。“日本一のコント師”としてさらなる活躍に期待が集まる中、11月11日に初の書き下ろし小説『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』を刊行し、小説家デビューを果たした。本人にインタビューし、執筆の経緯や制作の裏話、また、『キングオブコント』優勝後の変化など、話を聞いた。

  • ジャルジャルの福徳秀介

同著は、冴えない毎日を送っている大学2年生の主人公が、ある日、大教室で学生の輪を嫌うように席を立つ凜とした女子に出会い、次第に彼女に惹かれていく様を描いた恋愛小説。すべてが福徳の実体験に基づいているかのように情景や心情がリアルで、物語の中に引き込まれる。

吉本興業が刊行していた情報誌『マンスリーよしもと』で連載「恋愛文」を持っていた福徳。その文章を見た人からの「小説を書いてみたらいいのでは?」という声を人づてに聞き、「書いてみよう」と思ったのが小説執筆のはじまり。書き始めたのは約4年前で、「3カ月くらいで書き終え、そこから改稿を繰り返し、2年くらい経って『何のためにしているんやろう?』となりかけたときに出版につながり、そこからプロの編集の方を交えて2年間かけて仕上げました」と経緯を説明する。

3カ月で一度書き終えるも、「原型は5%くらいしか残っていない」とのこと。「最初は、冴えない大学生が気になる女の子にアタックするかしないか、という話でしたが、4年間改稿を重ねていたら、全然違うストーリーに。1か所変えると、どんどん変わっていきました」

大きくストーリーが変わったのは、「ここはなくてもいいと思うのですが……」という編集担当者の提案で全体の半分となる約6万字をカットしてから。「そこから新たに展開をつけたら、話がガラッと変わった感じがしました。ヒロインの女の子との待ち合わせのところで違った設定に変えて書き進めたら、あっという間に6万字復活しました」と、設定を変えてからアイデアがどんどん浮かんだようだ。

どれも福徳の実体験ではないかと思うくらい人と人とのやりとりがリアルに描かれているが、実体験の部分はないという。「登場人物の言葉も、僕が実際にかけられた言葉はひとつもなく、この状況でこの登場人物を救える言葉はなんやろうと考えた言葉です」

主人公との共通点も「大学をそんなに満喫できていなかったことくらい」で、頭の中で0から作り上げたキャラクター。「自分なりに主人公のキャラを決め、この子はどういう女の子を好きになるのか考えたら、ああいう女の子を好きになるなと。この冴えない大学生はどこでバイトをしているか? 銭湯でバイトしているのかな。その銭湯にはどんな子がいるかな? という感じで主人公を軸に考えていきました」と明かす。