歩行瞑想は歩きながら行う瞑想で、歩くことや足に意識を集中させる瞑想方法です。座って行う瞑想のように足がしびれることがないので、比較的気軽に取り組めるでしょう。

継続して行えば、生活習慣病予防やストレス軽減など、心身面に対するポジティブな効果が期待できます。本記事では、歩行瞑想のメリットや実践方法をご紹介します。

歩行瞑想とは

瞑想というと座禅を組んで目を閉じて行うものをイメージする人が多いと思いますが、歩くことや食べることに集中する瞑想があることをご存じでしょうか。歩行瞑想では、歩くことに徹底的に集中することで心を「現在」に置こうとします。「今、この瞬間」に集中することで妄想から遠ざかり、煩悩から解放されることを目指すのが歩行瞑想なのです。

この歩行瞑想は、禅語の「歩歩是道場(ほほこれどうじょう)」に由来していると考えられています。この言葉には「歩くという、私たちが日常的に当たり前のように行っている行為も立派な修行なので、一瞬一瞬にしっかりと集中しましょう」といったニュアンスが含まれています。

グーグルの社員研修プログラム「SIY」(Search Inside Yourself)にもその概念が用いられており、歩く動作への意識付けへの重要性が指摘されています。

  • デニムを履いた人

    歩行瞑想は歩きながら行う瞑想方法です

歩行瞑想のメリットや効果

ここでは、歩行瞑想で期待できるメリットや効果をご紹介します。心身面で不調を感じている人は、参考にしてみましょう。

  • 岩に腰掛けるお坊さん

    歩行瞑想で期待できる効果を紹介します

健康面の改善が期待できる

ウオーキングは手軽に始められる有酸素運動の代表例です。歩行瞑想は歩く行為が伴うため当然、ウオーキングによるシェイプアップ効果や筋トレ効果、ストレッチ効果などが得られます。

近年では生活習慣病予防の観点からもウオーキングは注目されています。

  • 体脂肪の減少による肥満解消
  • 血中の中性脂肪の減少
  • 血圧や血糖値の改善
  • 骨粗鬆症の予防

歩行瞑想を行えば、これらの効果も期待できるでしょう。

ストレス軽減につながる

心地よいと感じる強度で有酸素運動を続けると、セロトニンなどの神経伝達物質が分泌されます。セロトニンは別名「幸せホルモン」とも呼ばれ、脳の中で感情や記憶を司る部分にセロトニンが伝達すると、精神的な落ち着きが得られると考えられています。逆にセロトニンが不足した状態だとストレスフルな状態に陥る可能性も出てきます。

ウオーキングを伴う歩行瞑想は、ストレス解消につなげやすいと言えるでしょう。

気軽にできる

一般的な瞑想は不慣れな座禅を組むため足がしびれてしまったり、呼吸に集中できずに気が散ったりして続けられない人も少なくないでしょう。歩行瞑想は普段から呼吸と同じように自然に行っている「歩く」という行為を通じて「今、この瞬間」に集中するため、通常の瞑想よりも気軽にできるというメリットがあります。

感覚がつかみやすい

歩行瞑想瞑想は「足が地面に着く」「足が地面から離れる」という体の動作に注意を向けるため、ただ座って座禅を組むよりも感覚的にわかりやすく、集中しやすいといメリットがあります。

座禅状態だと動きがないため、意識が漫然となってしまう恐れがありますが、歩行瞑想は「片足が着地した瞬間に、もう片方の足が上がり始めていることに意識を向けよう」といった具合に、体の感覚をもとにした意識ポイントがいくつか存在するため、没入しやすいと言えるでしょう。

歩行瞑想のやり方

ここでは歩行瞑想のやり方をご紹介します。難しいものではありませんので、基本的な方法がわかったら、すぐに実践してみることをおすすめします。

  • 海岸を歩く人

    歩行瞑想のやり方を身につけましょう

(1)背筋をしっかり伸ばす

歩行瞑想をするときの姿勢で気をつけるべきなのは、背筋をしっかり伸ばすことです。姿勢は自分でコントロールできる部分ですので、姿勢を正すことは自分自身を正すことにもつながります。足に意識を向けますが、常に背筋を伸ばすよう心がけてください。

(2)歩行前に脱力する

歩行瞑想を始める前に体の力を抜き、手と腕をリラックスした状態で立ち、軽く深呼吸をしましょう。これが歩行瞑想のニュートラルな状態です。

(3)心身の状況を観察する

  • 足の裏が地面に触れる感覚
  • 足首・膝・股関節の状態
  • 腕・肩・肩甲骨の状態
  • 首・顔・頭の感覚

など、体の各部分の状態を観察します。また、頭の中で何を考えているかを客観的にチェックします。自分の心身を観察することで雑念を遠ざけ、今の自分に集中する準備を行うのです。

(4)ゆっくり歩く

初めて歩行瞑想する際は、いつもより大股で膝を高く持ち上げ、大きく腕を引きゆっくりと歩きましょう。いつもよりゆっくり歩くと、初心者でも体の各部分に意識を向けやすくなり、歩行瞑想の効果が高まるでしょう。人の目が気になる人は、まずは部屋の中で実践してみましょう。

体の感覚に意識を向けられるようになったら、徐々に歩くスピードを上げていくといいでしょう。

歩行瞑想をする際の注意点

歩行瞑想をする際には注意してほしい点もいくつかあります。より効果を高めるために以下の項目に留意するようにしてみてください。

足の動きに集中する

歩行時は片方の足の裏に意識を集中し、感覚を観察します。はじめは「右足を上げる」「空中で前に進める」「地面におろす」と実況中継をするように観察します。

慣れてきたらさらに細かく動作を分け「右足を上げる」「前に進める」「地面におろす」「床に足がつく」「体重をかける」とそれぞれの動作を観察します。細かい観察にも慣れたら、体が感じる感覚にも意識を向けましょう。

周囲の音環境を考慮する

歩行瞑想では音に集中することはありません。あくまでも、足の動きに注意を向け観察していきます。ただ、繁華街や大通りなどの場所で行うと、周囲の雑音があるため歩行瞑想に集中できなくなりますし、事故などのリスクも出てきます。

周囲の音が気になったら、「足のほうに意識を向けよう」と意識を修正するか、それでも難しいようならば思いきって場所を変えるのも選択肢としてありです。自宅の廊下や静かな公園、プールなどが適した場所です。自然の中で行う場合は、鳥の声を聞きながらなど、リラックスしながら行いましょう。

途中で心が乱れたらリセットする

歩行瞑想をしていると、いつの間にか意識が足から離れ、別のことを考えていることに気づくでしょう。そのときは、再び足の動作の観察を始めれば大丈夫です。

歩行瞑想中に心が乱れ、足の観察に意識を向けるのが難しいと感じたら、いったん立ち止まってください。立ち止まった状態で、心の中の考えや感情を観察します。意識が整ってきたら、歩行瞑想を再開しましょう。

歩行瞑想を続けるための工夫

歩行瞑想で期待できる効果がわかっても、いざ始めてみるとなかなか続かないという人もいるでしょう。継続することでそのよさを実感できる可能性もあるため、まずは一定期間続けるための努力をしてみましょう。

  • 草原にいる笑顔の男

    歩行瞑想を長続きさせるための工夫を紹介します

自分の好きな時間配分で行う

本格的な歩行瞑想は1時間程度時間をかけて行いますが、はじめのうちは短時間でもいいので、毎日続けることをおすすめします。

例えば、通勤時間に5分だけ歩行瞑想を実践したり、階段の上り下りのときに歩行瞑想を取り入れたりしてもよいでしょう。10歩~20歩程度歩くときに、自分の身体に意識を向けるだけでも歩行瞑想になります。新たに時間を作らなくても、ちょっとした時間でできるのが歩行瞑想のよい点です。

自分に合った方法で取り入れる

歩行瞑想を継続するには、無理のない形で生活サイクルに組み込むことが有効です。新たにウオーキングを始めるより、「通勤中の歩行時間の一部を歩行瞑想にする」「空いた時間に部屋の中で歩行瞑想する」など、自分が一番やりやすい方法で日常生活に取り入れてください。

歩行瞑想で不安やストレスを解消しよう

歩行瞑想は歩きながらの瞑想ですので、座禅を組んで行う一般的な瞑想より、気軽に始められるでしょう。これまで瞑想が続かなかったという人も、歩行瞑想なら気軽に取り入れられるので試してみてください。