女優の石原さとみが、テレビ東京の新春ドラマスペシャル『人生最高の贈りもの』(2021年1月4日20:00~21:54)の主演を務めることが20日、明らかになった。

  • 石原さとみ

    石原さとみ

同作は2019年に紫綬褒章を受章した脚本家・岡田惠和によるオリジナル作。元大学講師の翻訳家・笹井亮介のもとに、突然一人娘・ゆり子(石原さとみ)が帰ってくる。これまで「父と娘」の会話をろくにしてこなかったため、2人の間にはぎこちない雰囲気が漂う。緊張しつつも温かく穏やかに過ぎていく2人暮らしだが、実は娘の人生に残された時間はわずかだった。

石原が演じるのは、自分の運命を、明るく前向きに進もうとする主人公・田渕ゆり子。特別な役柄が多い石原が、ごく普通の等身大の女性、かつ娘役を演じる。また今回、テレビ東京のドラマ初主演となった。

監督は、60年以上の演出キャリアを誇り、2011年に旭日小綬章を受章した石橋冠。石原さとみが岡田脚本の作品を演じ、石橋監督がメガホンを握るのは今回が初となった。

石原さとみ コメント

・ドラマ特別企画『人生最高の贈りもの』の放送が決定いたしました。作品の印象などお聞かせください。

岡田さんの脚本には、セリフやト書きに“どうとらえるかは役者次第”みたいな余白が多くて、こういう余白があって考えさせられるものをやりたいと思っていたので、台本をいただいたとき、とても嬉しかったです。セリフは、説明台詞じゃなくてちゃんとその人の心が動いたときに発する言葉になっていて、こういう作品をやらせて頂いて、さらに嬉しくなりました。

・本作のような“家族”がテーマの作品に出演された感想をお聞かせください。

本作では、父親とのふたりのシーンが多いのですが、私自身、父親とふたりっきりで生活することが人生で一度もないので、少し難しかったです。全父親が感じる、娘に対しての思いみたいなものがあるのかなと思うと、より切ないというか、娘なのにちょっと他人感があるというか…。ただ、自分の命と向き合うときに、そこを少しだけ近づけていくっていうのはすごく美しくて、そういう選択があるのだと感じました。
病気や余命があってもこれだけ日常を尊く映しているのを見て、お茶を入れるにしても、ご飯を作るにしても、ただ家で過ごすにしても、自分自身の生活にも豊かさを生み出すことに幸せを感じられる今の自分だからこそできる作品だと感じました。
特別な喜びを求めるのではなく、ただ一緒においしいものを作って、美味しいって言えて、その空間すらもなにか心地がいいというか…。こういう中で、一緒のものを作って達成感を味わうのは、親子でも成立するし兄弟でも成立するような、生活の幸せを知ることができる尊い作品だなと思いました。
最近は、自分で自炊したものがすごく美味しくて、体も心も喜んでいるのがわかるんです。それが幸せだと感じられる自分になれたときに、こういう作品に携わることができているなんて、すごいタイミングだなと思います。ありがたいです。

・石橋冠監督とは初めてとのことですが、エピソードなどございましたらお聞かせください。

スタッフ含めみんなが尊敬していて、慈しんでいて、ついていきたいと思っている監督です。作品中のキャラクターを愛してしてくださっているのが伝わってきますし、監督の雰囲気がこの物語を作っている感じがして、今回石橋監督とご一緒できてとても嬉しいです。ずっとやりたいと思っていたので、これからもこういう作品をやっていきたいです。

・テレビ東京ドラマ初主演となりましたが、視聴者のみなさんへメッセージをお願いいたします。

台本を読んでも、現場に入ってからもあたたかい気持ちになれて、今の自分だからできると思える作品に出会えました。この作品に込められた穏やかさとか温かさとか優しさとか…日常の尊さみたいなものが伝わって、見てくださっている方々の生活が少しでも温かくなったらいいなと思います。見てほしいです。ちゃんと伝わったらいいなと思います。放送が楽しみです。

岡田惠和(脚本家) コメント

尊敬する先輩、八木康夫プロデューサーと、オリジナルでとくに放送のあてもなく脚本をつくりました。
どういうドラマが観たいか、つくりたいかを想いながら書きました。
いとおしい父と娘の物語が完成しました。
きっと好きだと思ってくれるに違いないと、テレビ東京の田淵プロデューサーに読んでいただいたところ「これやりましょう!」と。
まんまと罠にはまってくれました。大好きです。感謝です。
そして石橋冠さんという、この仕事して30年以上になりますが、一度だけ「ファンなんです、仕事してください」と告白した大好きな方が演出してくれることになりました。幸せです。
そして、石原さとみさん。ずっと同じテレビドラマの世界で仕事してきて、何故だかご一緒する機会がなかった大好きな俳優さんです。
彼女は、スーパーな力を持っているわけではないけど、きちんと理不尽なことや曲がった世界に物申す主人公を演じることが多かったと思います。そしてその作品は女性たちに確実に力を贈っています。女性たちだけじゃなく、今を生きるすべての物申せない人たちに。それは素晴らしいことです。
でも俳優としての石原さんの魅力はそれだけではない。今回のドラマのようなホームドラマの中の、どこにでもいるような女性の役も、絶対に上手い。絶対素敵であると、確信しています。
甘えたいけどできない、どうも素直に思ったことを言えない、でも父のことが大好きで。そんなヒロインを素敵に演じてくださっています。間違いないです。今回、やっと出会えたと思っています、嬉しいです。
これから発表になる、父や、夫たちもとても豪華で素敵な俳優さんたちです。
どうか心地よく心に響くドラマを、楽しみにしていただきたいと思います。

石橋冠(監督) コメント

脚本を読んだとき、想像がつかない新鮮な展開に圧倒されました。余計な説明や注釈もなく、ひたすら父と娘のかたちにこだわった岡田さんの作劇術に感嘆し、初めて「本直し」という儀式をしませんでした。大げさな表現を避け、脚本の意図通り素直に爽やかに撮ろうと思いました。
石原さとみさんは理想のキャスティングでした。決して大げさな表現をせず、きわめて日常的な自然な演技をしてくれました。
明るさと悲しさ、それを自然にこなした豊かな表現力に驚きました。
石原さんの暖かい演技を楽しんでいただけたらと思います。
そして「悲しみ」の本質に思い至ってくだされば幸いです。

田淵俊彦プロデューサー(テレビ東京 制作局) コメント

2年前ほどのことだった。岡田惠和さんから「読んでみてほしい」とある脚本を渡された。自宅でひとり読んだ私は涙が止まらなかった。その脚本に恋をしてしまったのだ。キャラクター像やセリフの細かい言い回しはキャストに合わせてリライトするということだった。ゆり子は誰がいいだろう…。私の心には瞬時に石原さとみさんが浮かんだ。17年前、当時ドキュメンタリーを手掛けていた私は番組でご一緒した菅原文太さんからある映画の試写を観るように言われた。石原さんのデビュー作である『わたしのグランパ』だった。「凄い新人が出てきた」。私は驚愕した。その後、特別な環境下や特殊な職業を演じるキラキラした役柄が多かった石原さんだが、私の中には石原さんが「ごく普通の等身大の女性」を演じたら素敵だろうなという確信がずっとあった。そしてそんなデビュー当時のピュアな一面を今も持ち合わせているのが石原さんの魅力だとも感じていた。監督は石橋冠さんにお願いしたいと思った。「池中玄太シリーズ」を観ていた私には、「ホームドラマは石橋冠」という確固たるイメージがあった。きっと石原さんの「普遍的な純粋さ」を最大限に引き出してもらえるに違いない。ご高齢の石橋さんは当初体力への不安を理由に固辞されていたが、執拗なプロデューサーの説得に「私の最後の作品になる覚悟で頑張ります」と引き受けて下さった。以上のような「めぐり合わせ」と「縁(えにし)」で「石原さとみ―岡田惠和―石橋冠」という夢のような「最高のタッグ」が実現した。 2020年はコロナ禍に見舞われ、皆、自分のそばに誰がいてくれるのか、何があるのかわからなくなるような状況だった。だから、どんな環境にあっても「自分はひとりじゃない」ということを改めて伝えたかった。「人間にとって本当の幸せとは何だろうか」。そんな思いをタイトルに込めた。視聴者の皆さんに、この作品が新年最初の贈りものになることを祈って…。

(C)テレビ東京