「おにぎり」と「おむすび」の違いはご存知ですか? この2つの単語は私たちがよく知っているお米から作られた同じ食べ物を指しています。
実はおにぎりとおむすびに大きな差や意味の違いはなく、歴史背景や地域などによって呼び方が違うだけなのです。普段何も気にせず使っている言葉でも、何故2つの単語が存在して何が違うのかを意外と知らない方もたくさんいますよね。 今回は、知ってそうで意外と知らないおにぎりとおむすびの違いを解説します。
おにぎりとおむすびの違いは何?
「おにぎり」と「おむすび」の違いを知っていますか? またはこの2つの単語を使い分けたりしていますか? お住まいの地域や生まれた家庭によっては、普段使っている呼び方が違うでしょう。
実は意味としてはまったく同じで、これらは類義語になります。現在の日本では使い分けや違いなどはほぼありません。 しかし、昔の日本では意味の違いがあったり、使い分けがされたりしていました。この2つの単語の違いにはいろいろな説があるので、順番に解説していきます。
意味や語源の違い
おにぎりは鬼を切ると書いて「鬼切り」、おむすびは「お結び」からきたという説があります。昔、鬼退治に握り飯を投げつけた民話もあることから、鬼を切るで「おにぎり」の言葉ができたようです。鬼退治の道具だったこともあり、魔除や厄払いの効果があると伝えられていました。
「お結び」は漢字の通り、人と人との良縁を結ぶという意味から縁起が良いものとされていたようです。ちなみに、日本歴史書である『古事記』には「むすびの神(正確には、高御産巣日神 : たかみむすびのかみ)」という神様が登場します。万物の生みの神とされていて、この神の名前が由来とされる説もあります。
形による違い
「むすびの神」とも少し関係がありますが、昔の日本ではおむすびを神様へのお供物にしていたようです。また、古くから山を神様に見立てる風習があったため、三角形の山のような形の握り飯を「おむすび」と呼んでいた説があります。
一方のおにぎりは、特に形に決まりはなく握り飯からおにぎりに呼び名が変化したと言われています。三角形や俵形などの形の指定はないものの、お米を握って詰めたものを示しています。
コンビニによる違い
コンビニごとに商品名が変わることがあります。ファミリーマートの商品名は主におむすびで、ローソンの商品名は主におにぎり、デイリーヤマザキではおむすび、ミニストップではおにぎりという商品名で売られています。セブンイレブンでは区別されており、食べる直前で海苔を巻くものをおにぎり、それ以外の商品はおむすびという名前がついています。
地域による違い
おにぎりの方が一般的な呼ばれ方ですが、東日本ではおむすび、関西方面ではおにぎりと呼ばれていたのが主流とも言われています。しかし、その逆に東日本ではおにぎりで、西日本ではおむすびと呼ばれていた説もあるのです。
実際には名古屋で有名な名古屋名物の「天むす」は天ぷらむすびの略で「おむすび」、そしてさらに西の広島には創業60年以上の「むすびのむさし」と言うおむすび専門店があります。近年では地域による名前の違いはなくなってきているようです。
身分による違い
農民など庶民たちが「おにぎり」と呼んでいたのを、貴族の女性たちは上品な日本語で「おむすび」と呼んでいた説もあります。身分の違いにより使っている言葉が違ったことから、この説が出てきたのでしょう。
握り方による違い
おにぎりは手で握るもので、おむすびは笹の葉など何かに包んで作ったものという説があります。握り方や何か道具を使うかでも呼び名が変わったようです。
地域別の違い
「おにぎり」と「おむすび」の呼び方は昔は地域ごとに違いがあったかもしれませんが、現在ではほぼありません。どこの県でもおにぎり屋さんもおむすび屋さんも存在していて、どちらがその地域で一般的な呼び方かわからない状況です。
その代わり、おにぎりの見た目や味付けなど地域ごとにそれぞれ特徴があります。おにぎりの形はその土地の食べ方や名産品などにより違います。
関東
主に三角のおにぎりは関東発祥だと言われています。コンビニなどでも、おにぎりと言えば思い浮かべるのは三角の形ですよね。1978年にセブンイレブンが三角の形のおにぎりを発売開始して以来、全国的に三角形が一般的な形になっています。
東北
東北では昔、太鼓型のおにぎりが主流でした。なぜなら東北ではおにぎりを焼いたり葉で巻いたりすることが多く、焼きやすい巻きやすい形が太鼓型のためです。 今ではいろいろな形のおにぎりがありますが、伝統的な太鼓型を出しているお店もたくさんあります。
関西
関西や西の方では俵型のおにぎりが多いです。俵型のおにぎりは、市販のお弁当にもよく入っています。日本で一般的に知られている幕の内弁当にも、俵形のおにぎりが昔は入っていました。
兵庫県の食品会社が駅弁として幕の内弁当を売り出したことから、日本全国に広まったようです。
その他地域
沖縄、高知、島根では「爆弾おにぎり」と言う名の球体の爆弾のような形のおにぎりが名物とされています。通常の爆弾おにぎりは丸くて大きくてボリューム満点なのが特徴です。最近ではコンビニなどでも売られ、全国的に有名になったことから聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
沖縄の爆弾おにぎりは魚のすり身の中にご飯が入っているので、通常のおにぎりと違って具とご飯が逆になっています。
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「おむすび」と「おにぎり」の違いをはじめ、普段使っている日本語に疑問を持ってみると、古くからの歴史的背景や由来などいろいろな新発見があることが面白いですよね。
結論としては現代の日本では場所問わず「おむすび」も「おにぎり」も、どちらを使っても間違いではないと言うことです。全国展開しているコンビニやスーパーなどでも、企業ごとに商品名が違います。そのため、今では地域による違いがなくなっているので、育った家庭や環境次第で呼び方が変わってくるのが唯一挙げられる呼び方の差かもしれません。
歴史的にはたくさん由来の説はあるものの、明確な定義はいまだに曖昧なままです。ご自身が親しみのある、呼びやすい方を使ってください。
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