「明日は早朝から用事があるのになかなか寝つけない」「重要な仕事を任されてから、夜遅くまで目がさえてしまいずっと寝不足気味」……。このように、寝つきが悪くて困った経験はないでしょうか?

寝つきが悪いとストレスがたまるだけでなく、睡眠の質の低下や寝不足によって心身にも悪い影響があります。本記事では、緊張をほぐして寝つきをよくするための習慣やアイデアをご紹介します。

  • 寝つきをよくするための習慣を日々の生活に取り入れましょう

寝つきをよくするための生活習慣

寝つきをよくするには、日々の生活習慣が重要です。ライフサイクルが不規則なようだと、いくら小手先の不眠対策を講じたとしても効果が見込めません。まずは寝つきをよくするための生活習慣を学びましょう。

(1)朝一番で太陽光を浴びる

朝に太陽の光を浴びることで体内時計を整え、寝つきを安定させられます。外に出なくても、カーテンを開け窓越しから太陽の光を浴びるだけで効果があります。朝起きたらまずカーテンを開けて15秒程度でもいいので朝日を浴びるようにしましょう。

(2)就寝時間・起床時間を一定にする

就寝と起床の時刻が乱れると、体内時計がずれて寝つきが悪くなってしまいます。休日もなるべく就寝時刻と起床時刻をそろえるようにしましょう。特に、一定の時間に起きて太陽の光を浴びることで、体内時計が安定してきます。就寝時刻がいつもより遅くなってしまったときも、朝は普段と同じ時刻に起きるようにしましょう。

(3)可能な限り湯船につかる

時間がないときは、湯船につからずシャワーだけで済ます人もいるかと思います。しかし、寝つきをよくするには、なるべくお湯につかるようにするのがおすすめです。38~41℃程度のお湯につかると、副交感神経が優位になり心身がリラックスします。

お風呂で体温を上げ、お風呂から出た後に体温が下がったときが寝つきやすいタイミングです。そのため、お風呂は就寝の2~3時間ほど前に済ませるのがおすすめです。

入眠前にとってはいけない行動

質のよい睡眠をとるため、入眠前にはしてはいけないNG行動がいくつかあります。以下にまとめてみました。

コーヒーや紅茶を飲む

コーヒーや紅茶に含まれているカフェインは、脳を覚醒させる作用を持っています。就寝前にカフェインを摂取すると、脳も体も休んでいる状態である「ノンレム睡眠」がしっかりととれない可能性があるため、なるべく夕方以降には摂らないようにしましょう。どうしても飲みたいのであればカフェインフリーのお茶や紅茶、ハーブティーなどにしましょう。

たばこを嗜む

ニコチンには覚醒効果があるため、寝る前に喫煙をしてしまうと目が冴えて寝付けなくなってしまいます。「眠れないからとりあえず一服するか」などとしようものなら、ますます眠れなくなってしまいます。就寝1時間前を目安に喫煙を控えるとよいでしょう。

寝酒をする

「アルコールは寝つきをよくする」と思いがちですが、その効果は短いうえ、中途覚醒を促す働きも持っているため睡眠の質が低下しがちです。また、眠れないたびにお酒を飲むようになると、次第に適量では眠れなくなったり、摂取量が増えたりしてアルコール依存症に陥るリスクも出てきます。

スマホをいじる

スマートフォンやパソコン、テレビなどから発せられるブルーライトを就寝前に浴びると、睡眠ホルモンである「メラトニン」が分泌されにくくなります。メラトニンが分泌されないと体内時計が後ろにずれて寝つけにくくなるため、就寝前にはスマホをいじらないようにしましょう。

寝つきが悪くても焦らない

寝つきが悪いと「早く寝ないと」と焦る気持ちが生じてきます。しかし、寝つけないことを気にしすぎると、余計に目がさえて眠れなくなります。誰にでも寝つきが悪い日はあります。なかなか眠れなくても焦らず、気持ちにゆとりを持つようにしましょう。

■眠れないことに否定的にならない

いつもなら寝ている時間を過ぎても眠れないと「明日も忙しいのに、なんで寝つけないのだろう」「このままだと明日は寝不足だ……」などと、否定的な考えが湧いてくることがあるでしょう。焦りと同様、否定的な考えも余計に寝つきを悪くしてしまいます。「このまま眠れないのでは」と心配しすぎず「そのうち眠れるだろう」と楽観的な考えに切り替え、体と心をリラックスさせましょう。

■眠れない「今」を肯定して緊張をほぐす

眠れないまま長時間ベッドや布団の中にいると「早く寝ないと」と焦ったり、不安や悩みごとが次々と頭に浮かんできたりして、心身が緊張状態になってしまいます。そんなときは一度寝床を離れて、リラックスできる方法を試してみましょう。

寝つきをよくするためのリラックス法

寝つきをよくするには、緊張している体と心をほぐしリラックスした状態にすることが大切です。寝る前におすすめのリラックス方法をご紹介します。

(1)お気に入りのアロマの香りをかぐ

「睡眠スイッチ」をオンにするのに有効なのが「香り」です。 一部の香りには、副交感神経を優位にして日中の活動モードから夜のリラックスした睡眠モードへと導き、寝つきやすくする効果があります。 アロマオイルには、香りによってさまざまな効果があります。寝る前におすすめのアロマは次の通りです。

・ラベンダー

リラックスできる香りとして有名なアロマです。心身の緊張をほぐし落ち着かせてくれる効果があります。

・クロモジ

森林浴をしているような香りで、リラックス効果があります。クロモジに含まれる「リナロール」という成分は、質のよい睡眠につながると言われています。

・ベルガモット

ベルガモットのアロマオイルには、ラベンダーと同じ主要成分が含まれており、ストレスや疲労に対して効果があると知られています。柑橘系の甘い香りで、気持ちをリラックスさせてくれます。

寝るときに簡単にアロマを香らせたいときは、アロマオイルをコットンやティッシュに染み込ませ枕元に置いておく方法などがあります。アロマを使用する際、オイルはシミになりやすいため寝具に直接原液が付かないように注意しましょう。

(2)リラックスできるツボを押す

眠れないときには、リラックスできるツボを押すのも効果的です。リラックス効果の高いツボを2つご紹介します。

・丹田(たんでん:おへその下3~5cmあたり)

寝つきが悪いときは、交感神経が活発に働き、脳と体が興奮状態になっています。丹田をツボ押しすることで、心身がゆったりと落ち着いてきます。

・失眠穴(しつみんけつ:足の裏側、かかとの中央のへこんだ部分)

失眠穴のツボを押すことでたかぶった神経が落ち着き、眠りへと導いてくれます。

(3)全身の筋肉を緩める

心身の緊張によって筋肉が硬くなると血管が圧迫され、酸素や栄養が体全体に行きわたらなくなります。反対に全身の筋肉を緩めると血管が拡張し、心身がリラックスできます。また、筋肉痛や体のコリにも効果的です。

寝つきをよくするための簡単なストレッチ方法をご紹介します。

(1)深い呼吸を続ける
(2)ベッドや布団の上にあお向けになる
(3)バンザイをするように、両手を上に伸ばす
(4)両手と両足をゆっくり伸ばしながら、寝た状態で背伸びをする
(5)手と足の指先が上下に引っ張られるようにイメージしながら、30秒間キープする

心地よい範囲で伸ばし、(1)~(5)を何度か繰り返しましょう。

(4)腹式呼吸を意識してみる

通常、夜には心身がリラックスする副交感神経が優位になり、眠りへとつながります。しかし、過剰なストレスを抱えていたり、夜遅くまで仕事やゲームをしたりしていると、交感神経が働き睡眠モードへの切り替えがうまくできなくなります。

腹式呼吸は息を吸うときにお腹が膨らみ、息を吐くときにお腹がへこむもので、腹式呼吸を続けると自律神経が整い、自然と副交感神経が優位な状態になっていきます。

いくつかの方法がありますが、一般的な腹式呼吸の方法をご紹介します。

(1)背筋を伸ばし、胸を軽く開く(あお向けもしくはイスに座った状態で)
(2)お腹の中に空気たっぷりと入れるイメージで、鼻からゆっくり息を吸いきる (3)お腹の中の空気をすべて外に出しきるイメージで、鼻からゆっくり息を吐ききる

腹式呼吸が苦手な方はお腹に手を当てて、吸うときにお腹が膨らみ、吐くときにお腹がへこんでいることを確認しながら行います。寝つきが悪いときは、リラックスした感覚になるまで、腹式呼吸を繰り返してみましょう。

寝つきが悪い夜こそ焦らずにリラックスを

寝つきが悪いと焦る気持ちがわいてきてしまうのは自然なことです。しかし、焦ると神経がたかぶってきてますます眠れなくなります。スムーズな寝つきのためには、寝る前に心身ともにリラックスした状態になることが大切です。寝つきが悪い夜こそ焦らずに、今回ご紹介したようなリラックス方法を試してみてください。

加えて、毎日の習慣を少しずつでも改善していくことで、質の高い眠りにつながっていきます。もし何日も連続して寝つけない場合は疾病が寝つけない原因となっている可能性もあるため、専門科を受診しましょう。