――cadodeの音楽性は固定したくはないという感じでしょうか?

koshi 音楽性自体はちゃんとあるんですよ。“虚無感と情動”というのを掲げていて、それがどうしてもにじみ出ているのがcadodeの音楽なんです。そして、そのこととジャンルを定めることは直接的には繋がらないと思っています。

――“虚無感と情動”がにじみ出ていれば、演歌であろうとロックであろうと関係ないということですね

eba 何でもいいんです。あくまでも、それを表現するためのひとつの手法でしかないわけで、僕たちが表現する“虚無感と情動”はぶれないと思います。

――“虚無感と情動”のもと、今回の楽曲はどのように制作されたのでしょうか?

koshi 僕たちは、いわゆるジャンルを毎回変えて曲を作っているのですが、それは、どうせ流行りのようなものには素直に従えないからというのもあります。たとえば「完全体」という曲は、オシャレ感、こう言うとちょっと安い感じになりますが、そういう曲調を狙って作ったんですけど、結果的には、そのアンチテーゼみたいな感じになっていたり。

eba 完全体に関してはこうすればオシャレになるだろう、みたいなもののカウンターパンチ的な感じになりました。オシャレっぽく見せながら、ギャルゲー的な女の子の声を散りばめてみたり(笑)。

koshi 何かしら反抗しちゃうんですよ、結局。だから今回も、現在の流行りみたいなものを意識しつつも、結果として、その反抗が出るのではないかと思って作りました。

eba そういう意味では、沸々と湧き上がる反抗心みたいなものは、常にあるのかもしれません。

koshi とにかくひねくれているんです(笑)。なので、そういった二面性が、意識している以上に表に出ているような気がします。一応、表向きはポップなものを作りたいといつも考えているんですけど、ポップなものを作ろうとすればするほど、どこかでそれを批判するような感情が出てきて、必ずそれが織り込まれてしまう。勝手にそういう仕組みになっている。それがcadodeらしさだと思っています。

――基本的にはポップ路線なんですね

eba そこは最初から変わっていないところです。

koshi 一応、“廃墟系ポップ”という名前をつけています。

――“廃墟系”というのは、koshiさんとebaさんが廃墟好きというだけの話ではないですよね?

koshi どちらかというと内面的な廃墟を意味しています。廃墟って、美しくも虚しいというか、時空間が不自然なんです。人間の営みは更新されていないけれど、世界の営みは進んでいる。時間自体は止まっているんだけれど、実際にはそうではない。

eba そして、それが未来の姿に見えたりもする。

koshi 結局、僕たちは過去と未来を廃墟に対して見出しているのですが、そこから“虚無感と情動”という言葉に辿り着いた。そういったことを一言で表す言葉として“廃墟系ポップ”と名乗ることになりました。

――廃墟好きで知り合うというのもすごいですね

koshi なかなかないですよね(笑)。

eba 廃墟には異世界感があるんですよ。二人ともオタクということもあって、ここじゃないどこかに行きたいという気持ちが常にあるのだと思います。そして、廃墟に行くと、ここじゃないどこかに行けたような感覚になる。音楽を作っているときも同じような感覚があるので、cadodeの音楽を聴いてもらえば、自分たちが廃墟で感じているような感覚を、みんなにも共有してもらえるのではないかと思っています。廃墟っていうと、怖いとか暗いとか、心霊スポットのようなイメージがあると思いますが、本当にきれいで美しいんですよ。なので、そういうイメージも更新できるのではないかと。

koshi 結構、一面しか見ない人が多くて、レッテル貼りのようなものが横行している世の中ですが、大体のものは多面的で、そんな簡単に片付けられるものではないじゃないですか。それをちゃんとみんなに認識していきたいし、どうしようもないと思うものにも少しずつ反抗して向き合いたいんです。それで初めて受け入れられる自分たちがあると思います。