懲戒免職とは、コンプライアンス違反をしたり、犯罪行為をしたりした人に対して罰則が与えられることです。今回は、認識不足から懲戒免職にならないように、どういった言動が処分の対象にあたるのかを解説していきます。

懲戒免職の流れや、リスク、懲戒解雇との違いなどについても見ていきましょう。

懲戒免職とは? 基本的な意味をわかりやすく解説

まずは懲戒免職という言葉の定義、意味をきちんと理解しておきましょう。

  • 懲戒免職とは何か?

    懲戒免職とは何か?

懲戒免職処分とは

懲戒免職とは、公務員が罪を犯した場合に解雇処分を受けることを指しています。公務員の懲戒処分には「免職(懲戒免職)」「停職」「減給」「戒告(譴責)」の4種類があり、この懲戒処分の中で一番重い罰則が懲戒免職です。

懲戒免職と懲戒解雇の違い

皆さんは「懲戒解雇」というフレーズも聞いたことがあると思います。この懲戒解雇と懲戒免職の2つは何か違うのでしょうか?

懲戒免職と懲戒解雇は「現在の職を失う」という観点では一緒ですが、その対象が異なります。懲戒解雇は民間企業の社員に対して下される処分であるのに対し、懲戒免職は公務員に対する処分です。この機会に一緒に覚えてしまいましょう。

  • 懲戒解雇:対象が企業に務める会社員
  • 懲戒免職:対象が公務員

もし懲戒免職になったらどうなる? 気になるリスク

  • もし懲戒免職になってしまったら

    もし懲戒免職になってしまったら

万一、懲戒免職になってしまったら転職や退職金にはどれぐらいの影響が出てくるのでしょうか。詳細に見ていきましょう。

再就職・転職に与える影響は?

仮に懲戒免職になってしまった場合は、転職や再就職が非常に難しくなるでしょう。民間企業において自己都合で退社した場合は、履歴書に「一身上の都合」との記載をすることが可能です。しかし、懲戒免職のような懲戒処分を受けた場合、履歴書にその事実を記載しなければ経歴詐称となります。

国家公務員や地方公務員は、懲戒免職を受けてから2年間は公務員への再就職はできないとの決まりがあるので、この点も留意しておく必要があります。

退職金は支給されない?

懲戒免職と認可された場合、原則として退職金は支給されません。これは対象者が定年間近であっても同様です。

懲戒免職になる理由

懲戒免職の処分を受けてしまうには、相応の理由や原因があります。一般的には次のような事由が対象になっています。

無断欠勤

何の断りもなしに長期間欠勤を続けた場合、「損害を与えた」として懲戒免職とされる場合があります。

犯罪行為

仕事とは関係なくプライベートにおける犯罪行為であっても、懲戒免職になる可能性があります。例えば痴漢や殺人、強姦、強盗、窃盗、飲酒運転、薬物所持などが挙げられます。

経歴詐称

採用時に虚偽の経歴を申告した場合は、それが実際の業務と直接的な関わりがなくとも、背信行為となり、懲戒免職となる可能性があります。例えば、学歴の詐称、保有資格の詐称、留学経験の詐称などが挙げられます。

ハラスメント

セクシャルハラスメントや、パワーハラスメントなど、拒否をする相手に対して権限を振りかざす場合は懲戒免職になる可能性があります。対人間同士のことであり、定義化することが難しい問題ではありますが、度が過ぎた行為は懲戒免職の対象となります。

横領

架空の取引先を作り上げ自分の手元にお金を流していた場合、確実に懲戒免職となります。

業務違反命令

軽度な業務違反を何度も繰り返すと、懲戒免職となるケースがあります。

懲戒免職(懲戒解雇)が不当解雇となるケースも。その基準は?

なお企業における懲戒免職(懲戒解雇)については、その基準を明確に定める法律はないため、具体的にはそれぞれの企業が独自に定めることになります。そのため、適切でないとみなされた場合は、不当解雇となるケースもあります。

不当解雇となるかどうかは、労働契約法第16条を根拠に判断されます。労働契約法第16条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、その権利を濫用したものとして無効とする」とあります。

  • 客観的に合理的な理由
  • 社会通念上の相当性

がない場合は、企業による懲戒免職(懲戒解雇)が不当解雇になるということです。

懲戒免職が行われる手続き・流れ

以下に懲戒免職における大まかな手続き・流れをまとめました。

1.事案の関係者に対する事実確認

まずは事実確認を含めた問題行動の調査が行われます。懲戒免職の処分を検討するにあたり、「客観的かつ合理的な理由があるか」といった観点から問題行動についての調査や証拠の収集を行います。

2.弁明の場の設定

確認した事実をもとに「組織として懲戒免職を検討している」と伝えたうえで、労働者本人に弁明の機会を与えます。

3.過去の事案を確認

懲戒処分の判断基準に「社会通念上相当である」があります。過去に同様の事案があった場合、処分も同じ内容にすることは「社会通念上相当」と考えられるため、過去の事案を確認します。

4.懲戒免職通知書の作成

弁明の場を設けた後に懲戒免職をするとなったら、懲戒免職通知書を作成します。この際、必ず書面で作成し、コピーを取って当該労働者に署名させておきましょう。後々のトラブルの回避につながりますし、裁判の証拠資料としても使えます。

5.懲戒免職の公表

懲戒免職通知書を当該労働者に通知したら、規定に基づき職場内にも当該労働者を懲戒免職した事実とその事由を公表します。

そのほかの公務員の懲戒処分の種類

懲戒免職が公務員における懲戒処分の中では最も重い罰となりますが、そのほかの処分は具体的にどのような内容なのでしょうか。みていきましょう。

  • そのほかの懲戒処分の種類

    そのほかの懲戒処分の種類

戒告・譴責(譴責)

懲戒処分の中では、一番処分の軽い戒告・譴責ですが、戒告は口頭注意、譴責は始末書や内示での通知のみとされています。例えば、短期間にわたる無断欠勤などの業務違反はこの処分を受けることが多いとされています。

減給

減給は俸給から一定額を差し引くものであり、口頭注意ですまない場合はこの処分を受けます。減給には細かな規則があり、賃金の半額以上の減給や、賃金の総額の10分の1を超えてはならないといったルールもあるため、処分を発令する側も注意が必要です。

停職

停職は数日から14日前後の期間の出社を禁止されるものです。この期間は自宅待機と異なり、有給の消化もできず、当然のことながら賃金の支払いも発生しないため、収入に大きく影響が出ます。

懲戒免職は、公務員に対する非常に厳重な処分

懲戒免職とは、公務員を対象とした懲戒処分において最も重い罰則です。懲戒免職されてしまうと退職金がもらえず、再就職もしづらくなるといったデメリットが発生します。

労働者が懲戒免職されるには、犯罪行為や経歴詐称といった相応の理由が必要となります。とはいえ、たった一度の「魔が差した行為」で懲戒免職をされ、一生を棒に振る可能性があることを肝に銘じておく必要があると言えるでしょう。