お笑いコンビ・とんねるずの石橋貴明が、ゲストと焚き火を囲んでトークを繰り広げるフジテレビのバラエティ番組『石橋、薪(まき)を焚(く)べる』(毎週火曜24:25~ ※関東ローカル)が好評だ。コロナ禍の外出自粛などでストレスがたまりがちな昨今、焚き火を囲んでのスロートークに、番組には「癒やされる」「ほっこりする」といった声が寄せられている。
『とんねるずのみなさんのおかげでした』『石橋貴明のたいむとんねる』でも石橋と仕事をしてきた共同テレビの関卓也プロデューサーに、番組の裏側をリモート取材で聞いた――。
■「焚き火の前で、男は本音をしゃべりたがる」
4月にスタートした同番組だが、立ち上げにあたって番組内容を相談する中で、「よく『焚き火の前で、男は本音をしゃべりたがる』って言ったりするから、焚き火の前でトークするのは面白いんじゃないか」という石橋の一言で、今回の企画が誕生。
第1回ゲストのカンニング竹山は、石橋と付き合いが長いということもあって、ヤミ金にまで手を出した話や相方の死後の心境など、まさに本音をさらけ出していた。
フジテレビの深夜で、石橋が1対1で語る番組といえば、かつて古舘伊知郎とタッグを組んだ『第四学区』(99・00年)が思い出される。だが、「『第四学区』は毎回古舘さんと語り合う番組でしたけど、石橋さんがゲストの方を引き出すというのが、今回の番組の面白いところだと思います」(関氏、以下同)と言うように、新たな一面を見せている。
「今までは“石橋さんがしゃべることが面白い”という番組をやってきたと思うんですけど、“石橋さんが聞く”というのは、たぶん今回が初めてだと思います。“話を聞くプロ”として司会をされている方はたくさんいらっしゃいますが、そういう立場ではなかった石橋さんだからこその良さが出てると思います」
『オールナイトフジ』でカメラを破壊し、『夕やけニャンニャン』ではスタジオ狭しと乱闘するなど大暴れしていた石橋貴明も、今年で59歳。キャリアを重ねた彼が、自らのテンポで薪を焚べながら展開する落ち着いた大人のトークが、この番組の魅力の1つになっている。
■しゃべっている人の表情を見てもらう
そんなトークを引き立てるため、演出面ではさまざまな工夫がなされている。焚き火の明るさを生かすべく、照明は最低限の明かり。夕方に収録がスタートする回は、夕暮れから完全に日が落ちて夜になっていくまで情景が、トークの進行とともに背景として映し出される。1日で1本分の収録の際は、その時間帯を狙ってスケジュールを組むそうだ。
また、燃えた薪が割れる音を拾う専用のマイクを焚き火台の近くに設置し、収録後には、さまざまなバリエーションの割れる音を録音してコレクションも。焚き火のみの映像も撮影し、トーク中でのクッションの役割を果たしている。
燃えた薪が割れると、予想以上の勢いで火の粉が飛んでくる。「服に飛んでこげちゃったことが、何回もあります(笑)」という上に、「石橋さんの靴の中に入って『アチチチチ!』という状況になったこともありました」と、ハプニングが起こるそうだ。
そして、バラエティのトーク番組は、出演者のおもしろ発言をテロップで出したり、一般的に知られていない名称が出たらその注釈を表示したりするのが主流だが、この番組ではそうした演出を一切していない。
この狙いを聞くと、「テロップが出ると、どうしてもそっちに目が行ってしまいます。今回は、本音をしゃべっている人の表情をちゃんと見ながら聞いてもらうのが大事だと思って、シンプルな画面構成にしています」と明かした。炎に照らされた出演者の顔は、いつもと違う表情にも見え、不思議と引き込まれる。