女優の池田エライザが初監督を務めた映画『夏、至るころ』(2020年日本公開予定)が、28日から韓国で開催される第21回全州(チョンジュ)国際映画祭に正式招待され、海外で初めて上映されることが21日、明らかになった。

  • 映画『夏、至るころ』で初監督を務めた池田エライザ

全州国際映画祭は、韓国三大映画祭の1つ。『夏、至るころ』は「シネマ・フェスト部門」で上映され、同部門では『蜜蜂と遠雷』(19)や『Red』(20)が日本から選出されている。

池田は、「『夏、至るころ』が全州国際映画祭に正式招待されました。池田組、キャスト、スタッフ共々光栄な気持ちです」と感謝を伝え、「自粛が続く中、外の香りに想いを馳せている方々へ、一足早く夏の香りをお届けできることを嬉しく思います」とコメント。

「何年経っても、あの夏のことは忘れないだろう。きっとそう思える夏を切り取ってまいりました」と同作に込めた思いを語り、「少年少女ら特有のきめ細かい感情と、和太鼓の爆発的な音に、身を委ねていただければ本望です」と呼び掛けている。

同作は、福岡県田川市で育った幼馴染の男子高校生2人を軸に、青春時代の後悔や挫折、人生の希望や家族愛を、みずみずしく描き出す完全オリジナル作。福岡出身の池田は昨年、田川市でロケハンを開始し、地元の人々との交流を深めながら、8月に田川市オールロケで撮影を行った。

キャストには、話題の新星・倉悠貴、全国2,000人の中からオーディションで選ばれた人の中からオーディションで選ばれた石内呂依、ヒロインに扮したさいとうなりといったフレッシュな若手に加え、リリー・フランキー、原日出子、安部賢一、杉野希妃、大塚まさじ、高良健吾らが実力派俳優が集結した。

■全州国際映画祭プログラム・ディレクター ムン・ソク氏のコメント
池田エライザ監督は、韓国でも女優としてよく知られています。監督デビュー作を全州で初めて上映できることになり、プログラマーとして、とても光栄に思っています。『夏、至るころ』英題:Town without Sea)は俳優出身である池田監督の演出力が余すことなく発揮されているように感じます。新人俳優からでも良い演技を引き出すことは優れた演出家の美徳とされますが、この映画こそ、まさにそのケースだと言えるでしょう。監督がまだ24歳であるにもかかわらず、デビュー作でこれほどの演出力を見せてくれたことに大変驚かされました。あまりに称賛しすぎることは、図らずも監督の未来の妨げになるかもしれず、この辺で終わりにします。しかし、池田監督がこの映画でも引用しているモーリス・メーテルリンクの『青い鳥』の一節のように、“(演出家としての)幸福は遠くではなく、近くにある”とお伝えしたいです。この映画の舞台である田川の美しい景色、翔と泰我が都に出会うシーンや、三人がプールで騒動を繰り広げるシーンはとても美しかった。そして何より、映画のハイライトにあたる後半の祭りのシーンが最も印象的でした。 翔と泰我の感情が激しくぶつかり合い、劇的に緊張し高揚するシーンだからです。そこからエンディングまで一気に駆け抜けるテンポが非常に爽快でした。そして、深く余韻が残るラストシーンでした。

■韓国ジャーナリスト・土田真樹氏のコメント
全州国際映画祭は韓国三大映画祭の一つであり、発足時から次世代のクリエイターを育ててきたことで評価が高く、釜山やプチョンと比べても、作家性の強い作品が集まるのが特徴です。もちろん、イ・チャンドン監督の弟であり、『オアシス』や『バーニング 劇場版』などの作品を二人三脚で手掛けてきた大物プロデューサー、イ・ジュンドン氏がフェスティバル・ディレクターであることからも、その姿勢は推察されます。彼らに作品が選ばれたことは、アジアの映画界をはじめ、海外に「映画監督、池田エライザの誕生」を知らしめることにつながるでしょう。