テレビの情報番組・報道番組で新型コロナウイルスのニュースがあふれる中、フジテレビ系昼の情報バラエティ番組『バイキング』(毎週月~金曜11:55~)で放送されているコーナー「バイキング流“STAY HOME”の楽しみ方」が、異彩を放っている。

バラエティ番組を担当する「第二制作室」のスタッフが作る番組ならではの取り組みだが、制作統括のフジテレビ・石塚大志ゼネラルプロデューサー(GP)に電話取材で狙いなどを聞いた――。

  • 『バイキング』MCの坂上忍 (C)フジテレビ

    『バイキング』MCの坂上忍 (C)フジテレビ

■強力レギュラー陣を生かす企画

このコーナーは、レギュラー出演者たちが、外出自粛要請での“STAY HOME”の過ごし方を紹介するもの。アンガールズ・田中卓志が趣味の紅茶を楽しんだり、MCの坂上忍が愛犬と戯れたりと、意外な素顔を披露しており、コロナ禍で心が沈みがちな中で、SNSでは「ほっこりする」「癒やされる」といった声があがっている。

「情報番組の色が強いバラエティとして、自粛されている中で番組を見ていただいている皆さんに、何か参考になることができないか、ということで始めました」と狙いを語る石塚GP。

また、「新型コロナウイルスの感染が広がる中で、スタジオの出演者の数を減らさざるを得ない状況となり、今は専門家や論客系の方を主にキャスティングしているんですが、『バイキング』はレギュラー陣に人気タレントがそろっていることが強み。その皆さんをこの状況で生かす方法がないかというスタッフの思いもあって、このような形になっています」と明かす。

ネタは、主にタレント側が「自分だったらこんなことができる」と提案するものを選んでいるため、本当に楽しんでいる様子が伝わってくる。基本的に自撮りや家族による撮影を依頼しているため、画質や画角に難はありながらも、よりプライベート感が味わえる。

SNSの反応と同様に、「VTRが面白いので、スタジオの空気がすごく良いんです」といい、「特に、田中さんの紅茶は反響が良くて2回放送しましたが、実は他にネタがないんじゃないかという疑惑があるので、3回目も紅茶になる可能性は高いのではないでしょうか(笑)」と予測した。

■坂上忍の発案で「フライデーオベーション」

最近の放送では、冒頭から新型コロナ関連の緊張感ある内容で進行され、終盤で「バイキング流“STAY HOME”の楽しみ方」など、ほっこり系のコーナーを展開。エンディングでの『直撃LIVE グッディ!』の安藤優子&高橋克実とのクロストークでも、笑いを交えた肩肘張らないやり取りが行われる。

これについて、両番組のスタッフから演出上の指示はしていないそう。「坂上さんと安藤さん、高橋さんは、一緒にお昼の時間を戦っている“戦友”のような意識があると思うので、自然と互いの番組を『ちゃんと見てますよ?』とアピールしながらのやり取りで笑いが生まれてるんだと思います。一方で、安藤さんから時々『坂上さん、どう思いますか?』と突然想定外の厳しい質問がくるときもあるので、坂上さんは毎回勝負だと思って、あのクロストークに臨んでいるのを感じますね」。

また、4月24日の放送では、番組の出演者たちが医療従事者へ感謝の拍手を送る「フライデーオベーション」を実施し、こちらにも「とても感動した」「涙が出た」「バイキングでこの運動を知りました」など反響があった。この実施の経緯を聞くと、「坂上さんから『こういうことができないかなあ』というお話があって、バイキング出演者の方に協力をお願いしました」とのこと。

局に来ている出演者のほかにも、自宅にいるタレントにカメラを渡したり、撮影した映像を送ってもらうなどして、総勢22人分のメッセージ映像を1週間かけて集め、KANの「愛は勝つ」に乗せて放送。「意義のある試みだと思いますので、また新しく撮って流したいと思います」といい、きょう8日の放送でも実施する予定だ。

■新型コロナ以外の話題にも注目

現在発令されている緊急事態宣言が解除されるまでの期間、個人の収入を全額寄付することを表明するなど、新型コロナウイルスの情報を伝えることに、相当な覚悟で臨んでいることが伺える坂上。

「本当にめちゃくちゃ勉強されているんですよ。新型コロナウイルスの前からそうなんですが、恥ずかしながら、ちょっと前までずっと報道・情報番組畑だった僕もかなわないな、と思います。情報量だけでなく、感じ取り方が視聴者目線であることが一貫しているんですよね」と、その姿勢に驚く。

コロナ禍にある中で、河井案里議員の公選法違反事件や、検事長の定年延長問題といった話題にも注目しているという。「坂上さんは『新型コロナウイルス以外の大事なニュースも、忘れないようにしたいな』と常々言っていますね。緊急事態宣言が1カ月延長されますが、さまざまな情報がある中で他に伝えなければならないネタにも目配せしながら“良いことは良い”、“悪いことは悪い”と言える番組でありたいと思います」と決意を語っている。