きょう3日に放送される、中村倫也主演のミステリーサスペンスドラマ『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系、毎週日曜22:30~)の第4話。いつになく悲しく、そしてシリアスな展開に、ぜひ注目してほしい。

  • 中村倫也(左)と仲里依紗=日本テレビ提供

■“キッチンハラスメント”から生じた悲しき殺人

中村倫也ふんする超美食家のイケメン探偵・明智五郎が、さまざまな殺人の真相に迫る同ドラマ。原作は『海月姫』や『東京タラレバ娘』など数多くのヒット作を世に送り出してきた東村アキコによる同名コミックだ。

その第4話は、“キッチンハラスメント”から巻き起こる悲しき殺人の物語。東北の姑から送られてくる手料理に悩む主婦・みどりを仲里依紗が演じている。

個人投資家・和宏(落合モトキ)の妻・みどりの夢は、真っ白な冷蔵庫を、愛する夫のための手料理でいっぱいにすることだった。だが、姑からは事あるごとに夫が大好きだった“おふくろの味”が送られてくる。冷蔵庫を埋め尽くしていく姑の手料理…みどりはため息とストレスの日々を送っていた。

そんなある日、みどりはネットで連続殺人鬼・マリア(小池栄子)と出会う。そしてマリアに背中を押されたみどりは、はずみで夫を殺害してしまい…。

一方で明智は、几帳面な性格の和宏が同窓会に来なかったことに疑問を抱いていた。和宏のマンションに赴くも留守。ちょうどその頃、和宏の死体はマリアに派遣されたシェフ・伊藤(武田真治)とみどりによって“解体”されていた。そして明智の助手(?)・苺(小芝風花)にもマリアの毒牙が──!

  • 武田真治(左)と仲里依紗=同

■“芝居×脚本×演出”の最高のマリアージュ

ひと言で言って、第4話はこれまでの物語とはテイストが違う。まるで家電のTV-CMのようにメルヘンチックにスタートする冒頭、起こってしまう悲しき殺人、そしてバスルームでの死体の“解体”シーン。理想と現実の落差が分かりやすく描写されているほか、テレビドラマのコンプライアンスの限界に挑戦するかのような、陰惨かつ美しい“ホラー”的演出で、観る者の心を鷲づかみにする。

何より、今回のゲスト・仲里依紗の演技が素晴らしい。打ち砕かれた理想、積もりに積もったストレスの爆発、夫の死体を前に揺れ動く感情の変化など、いかにみどりが殺人を犯した罪人だったとしても、観る者は彼女に同情し、そしてその悲しき結末に涙せざるを得ない。

  • 仲里依紗=同

もちろんレギュラー陣のお芝居も安定。ケレン味たっぷりでときにコミカルにも映る明智五郎だが、今回に至っては、その“仮面”の奥に今まで見せたことがない深い人間味を含ませる。小池栄子、武田真治ら「マリア・ファミリー」の怪演は前回を遥かに上回る不気味さ。そこに一服の清涼剤のような小芝風花の存在。

良い芝居×良い脚本×良い演出の“マリアージュ”がドラマにとっていかに大切か、改めて考えさせられる傑作だ。この物語は第4話が大きな分岐点となっていそうである。今後の明智×苺コンビと「マリア・ファミリー」の対決軸も楽しみだ。

  • 中村倫也(左)と小芝風花=同

  • 小池栄子=同