GTカーの素質を持つハイブリッドモデル
次に試乗したのは、ハイブリッド(HV)モデルの最量販と思われる「グレードG」。ブラックルーフにコーラルクリスタルシャイン(ほんのわずかにオレンジがかった赤)の2トーンボディで、搭載するのは最高出力67kW(91PS)/5,500rpm、最大トルク120Nm/3,800~4,800rpmを発生する「M15A-FXE」型直列3気筒1.5リッターガソリンエンジンと、それぞれ59kW(80PS)、141Nmを発生するモーターを組み合わせた電気式無段変速機付きのHVシステムだ。
先代モデルに比べて3割ほど増したパワーと、バッテリーのリチウムイオン化などで約40キロ軽量化されたボディのおかげで、一般道でも高速道路でも、思っていた通りとても速い。モーターを搭載して鼻先が重くなったコーナリング性能はガソリンモデルに一歩譲るとしても、車重のおかげで動きがしっとりとし、安定感が増したサスペンション性能によって、コンパクトボディながら高速巡航も得意科目といってよいほどの走りを披露してくれた。
筆者は数年前、メルセデス・ベンツ「Eクラス」の試乗会でドイツのアウトバーンを時速200キロ以上で走行中、高齢の女性が時速150キロ前後で飛ばす先代ヤリスを追い越したことがあるのだが、そうしたシチュエーションで使われることがある欧州でも、新型モデルはさらに歓迎される性能をもっているのでは、と思わせるほどだった。
ステアリングポスト右側のツーボタンで起動する「ACC」は、レーントレーシングアシストが作動するので、車線の中央を維持しながら追従運転を続けてくれる。精度が非常に高いので、使える状況では積極的に使用してやればドライバーの負担が減るだろう。ただし、機械式パーキングブレーキを採用しているので、機能が時速30キロ以下でキャンセルされてしまう。渋滞時に使えないのはちょっと残念だった。
ガソリンモデルと同じルートを走って、メーターの平均燃費は31.5km/Lを表示(WLTPモード燃費は35.8km/L)していた。実際に給油したレギュラーガソリンは4.88Lだったので、簡単な満タン法でも30.7km/L! ハイブリッドモデルはGTカーとしての素質を持つだけでなく、燃費も相当な数字を叩き出したのである。
試乗車の価格をおさらいしておくと、ガソリンZモデルは車両本体が192万6,000円で、カラー塗装、アルミホイール、ヘッドアップディスプレー、ブラインドスポットモニターなど61万6,000円相当のオプションが追加となり、総額は254万2,000円だった。ハイブリッドGは本体213万円に、カラー塗装、コンフォートシート、3灯式ヘッドランプ、T-connectナビキットなど76万5,000円相当が付いて合計289万5,600円となる。
スポーツモデルのような走りと価格面でガソリンモデルが気に入ったという若い編集者に対し、筆者は小さな高級車然としてGTカーの素質を持つハイブリッドモデルが気に入った。試乗の途中で立ち寄った、アナゴ料理で有名な富津岬の「大定」のお母さんは、「プリウスよりカッコいい。赤い色が綺麗。でも、法事には乗って行けないわね」とのこと。また、給油で立ち寄った都内のGSでは、「2トーンのカラーは高級感があっていいですね」との感想が得られた。
編集者、私、一般の方のいずれからも高評価を受けた新型ヤリス。冒頭で紹介した好調な売れ行きにも納得できる。この新型ヤリスには、紹介しきれなかった数々の新機能があるので、そちらは別稿で紹介したい。