2020年2月10日の発売が目前に迫るトヨタ自動車の新型コンパクトカー「ヤリス」。そのポジションは「ヴィッツ」の後継車であり、日産自動車「マーチ」やスズキ「スイフト」などと同じ5ナンバーサイズの小型車だ。価格は139万5,000円~249万3,000円となる。

  • トヨタの新型車「ヤリス」

    2月10日に発売となるトヨタの新型車「ヤリス」

「ヴィッツ」はどう変わったか

すでにご存知の方も多いかもしれないが、「ヤリス」とはこれまで、「ヴィッツ」が欧州などの世界市場向けに使用していた名称だ。4世代目となる新型でトヨタは、ヴィッツの名を捨て、世界同様にヤリスへと車名を統一する。なぜトヨタは、日本でも広く認知されているヴィッツの車名を変更するのか。それは、ヤリスが活躍しているフィールドと関係がありそうだ。

ヤリスは2017年から、市販車を改造したラリー競技の世界戦である「世界ラリー選手権」(WRC)に参戦している。2020年は、日本もWRCの開催地の1つとなる。そんな背景があるので、トヨタには、ヤリスの活躍をPRに結び付けたいとの考えがあるのではないだろうか。

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    2020年のWRCで「ヤリス」が活躍すれば、新型ヤリスの販売にも追い風となりそうだ

トヨタは「東京モーターショー2019」の開催を目前に控えた2019年10月16日に新型ヤリスを世界に向けて発表した。基本的な情報はマイナビニュースでも紹介済みだ。今回の記事では、実車に触れた感想を含め、この車両を紹介していきたい。

新型ヤリスは現行型ヴィッツのポジションを基本的には引き継ぐが、トヨタはクルマを全面的に刷新し、優れた燃費と安全性はもちろん、走る楽しさを感じられる洒落たコンパクトカーを目指したそうだ。

ヤリスはずんぐりむっくりな現行型ヴィッツと比べ、スマートかつスポーティーに感じるデザインに仕上がっている。エクステリアデザインのコンセプトは「B-Dash!」(ビーダッシュ!)。ファミコン世代にはピンとくるフレーズだが、無駄をそぎ落とし、躍動感のあるスタイルとすることで、走りの良さをアピールしているのだ。デザイナ―は「黒豆」のような塊感と艶っぽさを目指したと話していた。

外観で最も特徴的なのは、大胆にカットされたリヤテールゲート付近のデザインだろう。これにより、スタイルが「おにぎり」のように凝縮された雰囲気となっている。4つのタイヤはボディの四隅に配置してあるので、踏ん張り感を感じることもできる。小さくても、ヤワには見えないスタイルなのだ。

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    大胆にカットされた意匠が目を引くリヤテールゲート付近のデザイン

ボディカラーは全12色。ルーフカラーが異なるツートーン仕様が6タイプある。ヴィッツ伝統のピンクにも新色が登場。抑揚あるフォルムのおかげで、地味な色でも存在感を発揮できそうだ。ボディサイズは全長3,940mm、全幅1,695mm、全高1,470mm(2WD車)、ホイールベースは2,550mmとなる。現行型ヴィッツとの比較だと、全長は5mm減、全幅は同等、全高は30mm減、ホイールベースは40mm増となっている。

インテリアはすっきりとしたデザインだが、これまでに比べると質感が上がっている。ダッシュボードは水平基調に変更。インフォテインメントシステムのモニターをダッシュボード最上部に配置することで、視認性や操作性も向上させているようだ。

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    すっきりとしながら上質な新型「ヤリス」のインテリア

メーターパネルは、ユニークなデザインのデジタルメーターと2眼式アナログメーターの2種類を設定。ただ、ほとんどのグレードでデジタル式が標準となる。シートは仕様に合わせて、ヘッドレスト一体式と調整式ヘッドレスト付きの2タイプを取り入れた。どちらも座った感触は良かったし、室内幅が拡大しているので、前席にはゆとりが感じられた。ハンドルの小径化も、視覚的にコクピット周りの広さを感じさせる効果がありそうだ。

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    メーターパネルはデジタルメーターと2眼式アナログメーターの2種類。具体的には、エントリーグレード「ハイブリッドX」と「X」のみアナログ式となる

新型ヤリスはトヨタが「TNGA」(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)により新開発したコンパクトカー向けプラットフォームを採用する初めてのクルマとなる。走りの良さを支える土台となるプラットフォームの変更により、新型ヤリスの「ねじり剛性」は現行型ヴィッツに比べ30%向上しているとのこと。つまり、先代よりもかなりしっかりとしたボディを手にしたのだ。

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    TNGAで新開発したコンパクトカー向けプラットフォームを採用。撮影車はハイブリッド仕様のカットモデル

パワートレインは全てのグレードで3気筒DOHCエンジンを設定。ガソリン車には1.0Lと1.5Lの2種類があり、ハイブリッド車は1.5Lエンジンを搭載する。ガソリン車の1.0Lエンジンは従来型に改良を加えたもので、1.5Lエンジンはハイブリッドを含め新開発だ。

簡単にスペックを紹介しておくと、1.0Lエンジン車は最高出力69ps、最大トルク92Nmで、燃費消費率は20.2km/L(WLTCモード、以下同じ)。1.5Lエンジン車は最高出力120ps、最大トルク145Nmで、燃費消費率は19.6㎞/L~21.6km/Lとなる。エンジンとモーターを組み合わせるハイブリッド車のシステム最高出力は116psで、燃費消費率は35.4km/L~36.0km/Lとクラストップレベルを実現している。

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    全車で3気筒DOHCエンジンを搭載。写真は新開発の1.5Lガソリン車のもの

トランスミッションはCVT(無段変速機)を基本とし、1.5Lエンジン車のみ6速MT(マニュアルトランスミッション)を設定する。駆動方式は基本的に前輪駆動(FF)だが、ハイブリッド車では「E-Four」が選べる。「E-Four」とは後輪をモーターで駆動する4WDシステムのこと。トヨタのコンパクトカーで同システムを採用するのは新型ヤリスが初めてだ。

先進安全運転支援機能では、交差点右折時の対向直進車と右左折後の横断歩行者を検知対象とした最新の「Toyota Safety Sense」をほぼ全車で標準化した。また、スマートフォンとの連携が可能なディスプレイオーディオを全車で標準装備としている。

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    スマホと連携可能なディスプレイオーディオは全車で標準装備となる。ここに既存のSDナビゲーションユニットを追加することも可能だ

実は先日、発売前のヤリス(のプロトタイプ)にサーキットで試乗する機会を得た。新型ヤリスが見た目どおりスポーティーで、乗っても楽しいクルマだったのかどうかは、次の記事で詳細にお伝えしたい。

著者情報:大音安弘(オオト・ヤスヒロ)

1980年生まれ。埼玉県出身。クルマ好きが高じて、エンジニアから自動車雑誌編集者に。現在はフリーランスの自動車ライターとして、自動車雑誌やWEBを中心に執筆を行う。主な活動媒体に『webCG』『ベストカーWEB』『オートカージャパン』『日経スタイル』『グーマガジン』『モーターファン.jp』など。歴代の愛車は全てMT車という大のMT好き。