WBA世界ミドル級王者の村田諒太選手がこのほど、WOWOWのボクシング特別番組『WOWOWエキサイトマッチ ~世界に羽ばたいた日本のレジェンドの試合をもう一度!<村田諒太編>』(4月13日 21:00~)の収録に臨んだ。

  • 村田諒太

    村田諒太選手

世界王座を獲得した2017年10月のアッサン・エンダム(カメルーン/フランス)戦やベルト奪回を果たした2019年7月のロブ・ブラント(アメリカ)戦などの映像を見ながら解説した村田選手は「戦った直後に試合を分析することはあるけれど、こうして自分のヒストリーを振り返るのは初めて。恥ずかしいですね」と照れた。新型コロナウィルスの感染拡大の影響で次戦が決まらない状態が続いているが、期待されるサウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)やゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)とのドリームマッチに関しては「ふたりは実力互角の二大スター。彼らと戦えるならどの階級でもいい」と意気込みを口にした。

「内容より勝利が欲しかった」エンダムとの再戦

村田選手は2012年ロンドン五輪ミドル級で金メダルを獲得後、13年8月にプロデビューしたが、今回の特集ではその記念すべき初陣、当時の東洋太平洋王者、柴田明雄(ワタナベ)との試合もハイライトで紹介される。7年前を振り返った村田選手は「大学(東洋大学)の職員をしていたので、そのまま安定した道を選ぶのか迷ったけれど、好きなボクシングを続けられて、さらにここまで深く知ることができてよかった。(デビュー戦は)本来ならば僕と戦う必要のない柴田さんが受けてくれたので感謝しかない。あの試合はキャリアで一番か二番に緊張した」と感慨深そうだった。

2017年5月には12戦全勝(9KO)と挫折知らずのままWBA世界ミドル級王座決定戦に臨んだが、ダウンを奪いながらもエンダムに物議をかもす判定で敗れた。誰もが村田選手の勝利を確信した試合だが、本人は「野生の勘なのか(判定の瞬間は)イヤな予感がした」のだと明かす。「でも、世界に通用するんだという自信になったし、ニュースになって知名度も高まったし、いまとなっては良かったのでは」とプラスに考えているという。

WBAの指令によって5カ月後に直接の再戦が実現し、村田選手は7回TKOの圧勝で戴冠を果たした。そのときの心境については「解き放たれたという気持ちだった」と吐露。そして「内容よりも勝利が欲しかった試合。それをつかめて良かった」と加えた。

村田選手は2度目の防衛戦でアメリカのネバダ州ラスベガスのリングに上がったが、ブラントに12回判定負けを喫し王座から陥落。直後は引退も頭に浮かんだというが、熟考したすえ「あれがボクシング人生最後の試合ではいけない」と再起の道を選択した。

そして昨年7月の再戦を迎える。村田選手が「最も自信を持って臨んだ試合」と振り返るブラントII戦では、嵐のような連打を浴びせて宿敵を圧倒、2回TKO勝ちで雪辱と王座奪回を果たした。この再戦について村田選手は「あれでメンタルや人生の向き合い方などが分かってきた」と様々な面で意義のある試合だったとし、「もちろんここまでのキャリアでベストバウト」と語った。

収録を終えた村田選手は、「自分の試合を見てみると、もっとこうすればいいな、ああすればいいなと思うところもあるので、そう思うとまだまだ伸びしろはあるなと感じた」と振り返り、「ガードは固いし、パンチはありそうだなという感じですね(笑)。ただ、上半身の動きが少なく、ブロック主体なので、もうちょっと上半身の柔らかさがあればいいのになと、自分の試合を見て思った」と客観的な視点から"村田諒太"というボクサーを分析した。

新型コロナウィルス感染拡大がスポーツ界や社会に大きな影響を与えている現状については、「こればかりはスポーツ界がどうこう言っている状況ではない。感染拡大をしないように各自が意識を持つしかない」と言及。「ただ、ネガティブにとらえても仕方ないので、これまではこんなに子供と一緒にいる時間がなかったので、いまは家族で一緒に過ごしています。そういう時間に感謝しながら気持ちを切り替えていくしかない」と前向きに語った。

所属ジムにも行けない状況が続いているが、「体で痛いところなどがあるので、そこを治す、リセットするいい機会かなと。その一方、やっぱり34歳なので、一度落ちたらなかなか復活できる年齢ではないと思っている。ましてボクシングではピークに来ている時期かなと感じているので、それを逃さないように日々の生活をしないといけないと思う」と話した。そして「年齢のことよりも、この状況がいつまで続くのだろうかという不安に関しては皆さんと一緒。そんななかで何ができるのかと考えたら、ボクサーとして(好調な状態を)完全キープは難しいかもしれないけれど、せめて活動ができるように衰えを最低限に抑えなければならないと思っている」とコメントした。

最後にファンに向けて「この2試合をいい感じできているので、またそのボクシングを見せられるように、できる範囲で錆びないように、来たるべきとき、来たるべき試合に備えておきます」とメッセージを送った。


WOWOWでは、同番組のほか、4月20日に『エキサイトマッチ~世界プロボクシング 世界に羽ばたいた日本のレジェンドの試合をもう一度!<三浦隆司編>』(21:00~)、4月26日には『エキサイトマッチ~世界プロボクシング 井上尚弥・長谷川穂積・山中慎介スペシャル企画!』(10:00~)も放送される。