「『テセウスの船』19.6%で有終の美!」「『ラグビーW杯南アフリカ戦』は41.6%!」…ネットニュースの見出しをにぎわせてきたテレビの視聴率が、きょう31日の発表から大きく変わる。「世帯」をベースに出していたこれまでの数値に加え、どれくらいの人が見ていたのかを表す「個人」のデータを公開。さらに、全国の視聴人数の推計値も公表される。
約60年におよぶテレビ視聴率の歴史の中でも、大きな変革だという今回のリニューアル。この狙いについて、調査を行うビデオリサーチに聞いた――。
■調査世帯数が関東で3倍に
どのくらいの世帯に見られたのかを表す「世帯視聴率」は、家族全員がお茶の間でテレビを見る時代から続いてきた指標だが、現在のテレビの視聴環境は多様化している。そこで、どの年代にどのくらい見られたかを示す「個人視聴率」も活用していくことで、広告主にテレビの価値を示していく狙いがある。
ただ、「多様化する生活環境において個人をより細分化して分析するには、これまでの関東地区での900世帯という調査では、分析に十分なサンプルが確保しにくいという課題がありました」(ビデオリサーチ コーポレートコミュニケーション部、以下同)ということから、関東地区では調査世帯を2,700へと3倍に拡充。これで、細かいターゲットの分析でも十分なサンプル数が確保できるようになる。
また、統計上の誤差においても、視聴率10%の場合、サンプル数900で±2.0%だったのが、2,700になると±1.2%まで精度が向上。従来では、サンプルが少なかったターゲットも、今後は統計データとして、より信頼できるものになるのだ。
この個人視聴率の調査は従来、関東・関西・名古屋・北部九州の4地区で機械式により実施してきたが、その他の地区では、日記式アンケートで調査していた。今回、この機械式調査を全地区に導入することにより、全国で調査仕様が統一される。
これにより、全国の「平均視聴数(推計)」が出せるようになるのが、今回のリニューアルの大きなポイント。今までなかった「全国」という単位で視聴状況を表現するデータが具現化される。
■毎週の視聴率ランキングも充実化
ビデオリサーチのホームページでは、これまで「報道」「教育・教養・実用」「音楽」「ドラマ」「アニメ」「映画」「スポーツ」「その他の娯楽番組」という8ジャンルの「世帯視聴率(関東地区)」のベスト10を毎週発表していたが、今回のリニューアル後は、新たな指標も掲載していくことになる。
まずは、従来の「世帯視聴率(関東地区)」ベスト10に、「個人視聴率(4歳以上の個人全体の視聴率)」が追記される。そして、番組における全国の「平均視聴人数(推計値 ※)」のベスト10と、それに付随する「到達人数(推計値 ※)」も発表する。
(※)…平均視聴人数:番組全体を通して、毎分平均で何人が視聴したかを示す数値
到達人数:1分以上番組を視聴した人数を示す数値
さらに、タイムシフト視聴率と総合視聴率(リアルタイム視聴とタイムシフト視聴のいずれかの視聴)についても、「個人視聴率(同)」に加え、「平均視聴人数(同)」「到達人数(同)」の数字を、ホームページ上で出していく予定だ。
ちなみに、推計による視聴人数のデータはこれまでも、2019~20年の年末年始特番、19年のラグビーワールドカップ、『24時間テレビ』(日本テレビ)、夏の大型音楽番組と、トピックがあるごとに発表されてきたが、今後は毎週発表されることに。また、全国32地区で調査仕様が統一されたことで、毎日、翌日に個人視聴データの計測が可能となる。