女優の松下奈緒と木村佳乃が共演するフジテレビ系ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』(毎週木曜22:00~)。日本のテレビドラマとして初めて“腫瘍内科”を舞台にしているが、その圧倒的なリアルながん治療の描写に、現役医師からも評価の声があがっている。

そんな今作を医療監修として支えるのが、日本医科大学の松本尚教授。医師ならではの視点でのドラマ制作の裏側やリアルへのこだわり、そして作品への期待などを聞いた――。

  • 『アライブ がん専門医のカルテ』に出演する松下奈緒(左)と木村佳乃 (C)フジテレビ

    『アライブ がん専門医のカルテ』に出演する松下奈緒(左)と木村佳乃 (C)フジテレビ

■『アライブ』では絶対やらないこと

松本氏は、日本におけるヘリコプター救急の第一人者として知られ、『コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―』をはじめ、『海の上の診療所』『医師たちの恋愛事情』『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』の監修を務め、さらに次期木10枠の『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』でも医療監修を担当することが決まっている。

この医療監修の仕事は、まず、脚本を読んでその内容が医学的に正しいか、現実と乖離している点がないかといったことのチェックだ。難しい医療用語や治療方法などを「なるべく説明っぽくならないように、セリフを変えたり」という作業も行っているが、「CGを使ったり、若い研修医に説明させるという手法もありますが、それをやるとどうしても軽くなってしまうので、『アライブ』では絶対にやらないですね」と、こだわりを覗かせる。

今作には「医療監修」である松本氏のほか、「腫瘍内科監修」「腫瘍内科企画協力」「医療取材協力」「看護指導」「プロット協力」と、従来の医療ドラマに比べ、多くの医療関係者が協力に携わっている。

舞台である腫瘍内科は、さまざまながん患者の治療を主導する部署。外科医、放射線科医、緩和ケア医など、それぞれの専門領域を横串で束ねて治療にあたるので、「特殊性がすごく強いんです」という。

そのため、複数の「腫瘍内科監修」が参加。「今のがん治療というのはガイドラインがあって、その通りにやらないと『おかしい』と批判が来たり、患者さんから『私が受けている治療と違う』と言われて現場の医者が困ってしまったりするので、そうしたトラブルを防ぐために、それぞれ専門の先生に監修してもらっています」と明かす。

また、“がん”は非常にデリケートな病気だ。「視聴者の方には、がんの患者さんだったり、その家族だったりする人がかなりいると思うので、できるだけ共感してもらうドラマにするためには、患者さんが普段どんな生活しているのか、どんな物事を考えているのかも知らなければいけません」と、がん患者と接している医師のアドバイスが得られる布陣を組んでいる。

腫瘍内科監修には、がん研有明病院、国立がん研究センター東病院、順天堂大学という3つの医療機関が参加しているが、「がんの治療は、病院によってもいろいろなアプローチがあるので、できるだけ偏らないようにするために、いろんな人の意見をもらっているのだと思います」と、細心の注意を払って制作しているのだ。

  • 松本尚教授

■腫瘍内科医「ちゃんと作られている」

医療監修の仕事には、撮影現場に来て、役者たちの動き・所作にリアリティを持たせる指導もある。「1人の患者さんに医師や看護師、他の職種の人も対応しているので、ほんの1分か2分のシーンでも、それぞれに動きを付けてチェックしないといけないんです」。

この動きは、カメラに映る・映らないを問わないそうで、まるで舞台監督のような役割。「実際には、立ってるだけの人もいるんですが、ドラマでは嫌われるんです。その場であり得ない動きをしないよう、ちゃんと場面に合うように考えるので、人数が多いと結構大変です」と、骨の折れる作業のようだ。

現役の腫瘍内科医からの反響については、「僕の友達からは『ちゃんと作られている』という評価が多いです」とのこと。前述の細かな医療監修に加え、「フジテレビの医療ドラマは、すごくリアルにこだわっているんです。不思議とどの監督も『先生、そこは映らないから指導しなくていいですよ』と決して言いません。美術セットも隅々まですごく細かく作ってくれているから、我々本当の医者からするとうれしいですね」と、丁寧な作品作りが現場にも届いている。