横浜市の京急グループ本社1階「京急ミュージアム」が1月21日にオープンした。当日は京浜急行電鉄取締役社長の原田一之氏、同社取締役専務執行役員の道平隆氏、同社横浜駅長の高浜惣一氏、「京急ミュージアム」館長の佐藤武彦氏ら出席者をはじめ、芸能界きっての筋金入り鉄道ファンとして知られるタレントの中川家礼二さんをゲストに迎え、オープニングセレモニーが行われた。昨年、『京急とファン大研究読本』を出版した「女子鉄アナウンサー」久野知美さんがMCを務めた。

  • 京急グループ本社1階にオープンした「京急ミュージアム」のシンボル「デハ230形236号」

「京急ミュージアム」開業セレモニーは1月21日の9時10分頃から行われた。冒頭、挨拶に立った原田社長は、「当社の歴史的車両も展示される『京急ミュージアム』は、京急創立120周年事業の一環として整備してまいりました。小さな施設ではありますが、さまざまな展示や体験を用意し、お子様をはじめ、多くの人たちに楽しんでいただける施設をめざしています。みなとみらい地区のにぎわいを創出し、地域の発展に寄与していきたい」と述べた。

続いて礼二さんがお祝いのメッセージとして、「(鉄道ファンにとって)まさに夢のような施設。運転シミュレーターの画面のクオリティーが高すぎて、乗り物酔いしそうです。また、マニアとして一番すごいと思ったのはバスエリアがあること。沿線の皆さんはもちろん、全国の鉄道ファンがこぞって来訪すると思います。本社のフロアに鉄道ミュージアムを設けるというアイデアは他の電鉄会社も真似するのではないでしょうか」とコメントした。

  • 中川家礼二さんをはじめ出席者によるテープカット

  • 横浜駅の高浜駅長、「京急ミュージアム」の佐藤館長がオリジナルヘッドマークを取り付ける

セレモニーの締めくくりとして、礼二さんと原田社長、道平専務がサインした「京急ミュージアム」のオリジナルヘッドマークを高浜駅長と佐藤館長がデハ230形の先頭部に取り付けた。その後、10時にミュージアムがオープンすると、事前申込みで当選した多くのファンらが入館した。

■「京急ミュージアム」の展示内容は

「京急ミュージアム」は、「『本物』を見て、触れて、楽しむ」をコンセプトとしており、館内は大きく5つの展示・体験エリアに分かれている。

ミュージアムのシンボルと言えるのが、昭和初期から活躍し、1978(昭和53)年に引退した「デハ230形236号」の展示だ。この車両は現役引退後、埼玉県川口市に保存・展示されていたが、川口市が引き取り希望者を公募。2016(平成28)年10月に京急へ譲渡されることが決定し、2017年5月から2019年5月までの2年間にわたり、総修復作業時間9,800時間、作業員数約100名によって修復が行われた。その後、2019年6月14日に京急グループ本社へ搬入された。

  • 「デハ230形236号」に取り付けられたオリジナルヘッドマーク

  • 「デハ230形236号」の車内の様子

車両修復全般の担当者は、「木と鉄でつながっているドアや床下部分などは朽ち果てていたため、修繕が大変で、わからない点などは先輩にアドバイスをもらいました。ぜひきれいになった内装を見てください」と話す。修復前の車両の写真を見ると、車体には大きな穴があくほどのダメージがあり、新しい鉄板を溶接するなどの苦労があった。

  • 修復前後の「デハ230形236号」(提供:京急電鉄)

ミュージアム内で「デハ230形236号」の展示エリアは「京急ヒストリー」と名づけられ、車内では京急グループの歴史や切符・パンフレットなどの資料が展示されている。

また、ミュージアム中央には、「京急ラインジオラマ」が配置されている。品川、羽田空港、川崎、横浜、三浦半島といった京急沿線の風景を再現した長さ約12mサイズの巨大ジオラマの中を京急電鉄の車両の鉄道模型(HOゲージ)が走る。

  • 「京急ラインジオラマ」

  • 「京急ラインジオラマ」では、モニターを見ながら車両を走行させることができる

このジオラマは単に眺めるだけでなく、「KEIKYU YELLOW HAPPY TRAIN」を再現した1編成の先頭車両に搭載されたカメラの映像をモニターで見ながら、レバー等を操作して走らせることができる(1回100円で約3分走行)。

その他、ミュージアム内には実写映像を使った「鉄道シミュレーション」(1回500円で5~7分程度)、バス運転台を再現し、バスの運転士気分を味わえる「バスネットワーク」、タカラトミーと共同開発したオリジナルの「プラレール」を使って「小さなお子様にオリジナル車両を作っていただこうというコーナー」(佐藤館長)である「マイ車両工場」(1回1,000円。体験時間30~60分)がある。

  • 「マイ車両工場」について説明する佐藤館長

  • 「京急ミュージアム」の開館後、「デハ230形236号」を撮影する来館者たち

「京急ミュージアム」では、オープン当初の混雑対策として入館制限を実施する。2月24日までの入館については、すでに事前申込みが終了している。2月26日から4月5日までの入館方法は以下の通りとなる。

まず、平日は当日受付にて入館が可能となる。一方、土日祝日と春休み期間(3月26日から4月5日まで)は「優先入館」対象期間とし、事前にインターネットから申し込み、抽選後、登録したメールアドレスに「当選通知」を受けた人が「優先入館」できるしくみだ。同期間の「優先入館」の申込みは1月27日10時から受付開始し、締切は2月9日23時59分となる。

  • 2月26日以降の「優先入館対象日」など(提供:京急電鉄)

なお、「優先入館」対象期間の申込みに際しては、名前等の必要事項、希望日に加え、下記事項を入力する必要がある。

  • 希望時間帯 午前(10:00~12:00) / 午後1(12:30~14:30) / 午後2(15:00~17:00)
  • 入館希望人数(大人・こども合計4名まで・乳幼児含む)
  • 希望内容 入館のみ / 入館+【マイ車両工場(有料)】または【鉄道シミュレーション(有料)】(どちらか一方を選択し、体験希望人数も入力)

「京急ミュージアム」の最寄り駅はみなとみらい線の新高島駅であり、周辺には「原鉄道模型博物館」もある。新高島駅周辺は鉄道ファンにとって、新たな「聖地」となるかもしれない。

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

慶應義塾大学卒。IT企業に勤務し、政府系システムの開発等に携わった後、コラムニストに転身し、メディアへ旅行・観光、地域経済の動向などに関する記事を寄稿している。現在、大磯町観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員、温泉ソムリエ、オールアバウト公式国内旅行ガイド。テレビ、ラジオにも多数出演。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。