昨年の12月の給与はいつもの月より多かったという人がたくさんいるのではないでしょうか。それは年末調整で払いすぎた税金が戻ってきたからなのです。会社員ならば一度は年末調整というフレーズを聞いたことがあるでしょうが、改めて何なのかをきちんと確認しておきましょう。

  • 年末調整、きちんと理解しておきましょう

そもそも年末調整とは

11月くらいになると、会社員や公務員の人は年末調整の用紙が配布されます。また、この時期になると保険会社から「保険料控除証明書」という書類が送られてくるという人も増えてきはじめます。この年末調整の用紙に記入し、保険料控除証明書を添付して職場に提出することで、払いすぎた税金が戻ってくる場合があります。

所得税の仕組みは?

会社員や公務員の人は、毎月の給与から所得税が天引きされています。所得税は、1年間働くという仮定で、その人の所得によっておよその額を毎月天引きし、1年経過した際に実際の所得額をもとに計算して過不足を確認します。これが年末調整です。そして再計算した後に、実際に納める税金より多く納めていた場合、差額が戻ってくるというわけです。

所得税は「所得」に対してかかります。まずは年収から、給与所得者の経費にあたる「給与所得控除」を差し引いたものが「給与所得」です。次に、その「給与所得」から、その人それぞれの事情に応じて「所得控除」を差し引くことができます。それらの「所得控除」を差し引いたものが「課税所得」と呼ばれ、税金がかかる大元になります。

「年収」-「給与所得控除」=「給与所得」

「給与所得」-「所得控除」=「課税所得」(税金がかかる大元)

つまり、できるだけたくさん「所得控除」を差し引くことで税金がかかる大元が少なくなり、結果として納める税金が少なくてすむということなのですね。

会社員や公務員が利用できる所得控除は?

所得控除には「人に対しての控除」と「物に対しての控除」があり、全部で14種類あります。その中でも、会社員や公務員が年末調整時に申請することで税金が返ってくる所得控除を理解しておきましょう。

生命保険料控除

生命保険料控除は「一般の生命保険」「個人年金保険」「介護保険」の3種類があります。2012年1月1日以降に契約した場合、年間の保険料が8万円までの場合は支払った金額が控除されます。年間の保険料が8万円を超えた場合、それぞれの控除額の上限は4万円で、合わせて12万円の控除になります。また2011年12月31日以前に契約した生命保険の場合は、一般の生命保険と個人年金保険の合計が最高10万円まで控除の対象となります。

生命保険料控除を受けるためには、11月頃に保険会社から「生命保険料控除証明書」が送られてくるので、年末調整時に忘れずに提出してくださいね。

地震保険料控除

2007年より、地震保険を対象とした「地震保険料控除」が新設されました。地震保険は基本的に単独で加入することができず、火災保険とセットで加入しますが、地震保険料控除の対象になるのは「地震保険料」だけです。

1年間の地震保険料の額が5万円以下の場合は支払った保険料の全額が、5万円を超えた場合は、5万円を限度に控除されます。損害保険会社から送られてくる地震保険料控除証明書を大切に残しておいてくださいね。

社会保険料控除

通常、会社員や公務員などの給与所得者は、年金保険料や健康保険料などの社会保険料は毎月の給与や賞与から天引きされています。そのため1年間に支払った保険料が自動的に計算されるので、基本的には自分自身で何もする必要がありません。

では、どのようなケースで年末調整で処理をしないといけないのでしょうか。例えば、20歳を超えた子どもの国民年金保険料を親が支払っていたり、以前未払いだった国民年金保険料を支払ったりした場合は、勤務先では把握できないため、自分自身で年末調整により手続きをする必要があります。11月頃に「社会保険料控除証明書」というハガキが届くので、大切にとっておいてくださいね。

これまで見てきた生命保険料控除や地震保険料控除と違い、国民年金の保険料は、支払った額が全額所得控除の対象になります。忘れないで申告したいですね。

保険料控除、いくら戻ってくるの?

保険料控除を利用した場合、所得税はどれくらい戻ってくるのでしょうか。所得税の税率は、所得が多いほど多くなる超過累進税率を適用して計算します。

  • 所得税の速算表

仮に課税所得が400万円の人が、2012年1月以降に契約した一般の生命保険料、個人年金保険料、介護保険料をそれぞれ1年間に8万円を超えて支払ったとします。

その場合、それぞれの控除額は4万円となり、合計12万円の控除になります。このときに気をつけておきたいことは、12万円が戻ってくるのではないということです。12万円の控除ということは、「この12万円に対しては所得税をかけないでおきましょう」ということです。

では、この例の場合、どれくらいの所得税が戻ってくるのか上の所得税速算表に当てはめて計算してみましょう。

課税所得が400万円なので、税率が20%ということになります。12万円に対して20%の税率で所得税が戻ってくるということになり、戻ってくる所得税は12万円×20%=24,000円ということになります。

また、大学生の子どもの国民年金保険料を親が払った場合で考えてみましょう。2019年現在の国民年金保険料は16,410円です。仮に1年間支払ったとすると、16,410円×12カ月=196,920円が全額控除されます。20%の税率の場合、196,920円×20%=39,384円の所得税が戻ってくることになります。

このように、節税になるのであれば忘れずに年末調整で手続きをしておきたいですね。

もしかしたら、「去年するのを忘れていた」と言う人もいるかもしれません。その場合は確定申告をすることで税金が戻ってきます。このような還付申告は過去5年までさかのぼって申告できます。当てはまるという人はぜひ年末調整を利用して、賢く節税してくださいね。

※実際の納税額の計算には、復興特別所得税が2.1%プラスされますが、ここでは考慮していません