風邪をひいたときや特定の食べ物を食べたときなど、喉がかゆくなったという経験はないだろうか。喉に手を突っ込んだり、舌でかいたりするわけにもいかず、我慢するしかなくてつらかった人もいるだろう。そこで、日本耳鼻咽喉科学会認定専門医の宮崎裕子医師、喉がかゆくなる原因や対策、予防法などについてうかがった。

  • 喉がかゆいのはなぜ?

    喉がかゆいのはなぜ?

喉がかゆくなる原因

風邪をひいたときなどに起こりやすい喉のかゆみ。しかし、原因は風邪ばかりではないと、宮崎医師は指摘する。

(1)喉のかゆみ以外に痛みや熱が出ている

(2)特定のものを食べると喉がかゆくなる

(3)花粉症の時期になると喉がかゆい

このような症状がみられる場合は、風邪以外の病気の可能性があるという。

喉がかゆくなる病気

アレルギー以外に喉のかゆみの原因となる病気には、以下のようなものがある。

咽頭炎・扁桃炎

風邪などで咽頭炎や扁桃炎などを起こすと、特に初期は喉のかゆみを伴って、徐々に痛みなどを引き起こす。咽頭は鼻の奥から食道につながる部分で、この場所に炎症が起こると咽頭炎と呼ばれる。

扁桃とは、咽頭にあるウイルスや細菌の感染を防ぐためのリンパ組織。同様に、扁桃に炎症が起こっている状態を扁桃炎と呼ぶ。他の症状としては発熱や咳、痰、声が出にくくなるなどがある。

逆流性食道炎

初期は喉の奥がイガイガする。進行して胃酸が逆流してくると粘膜を刺激して炎症を起こし、腫れるケースがある。喉がつまる感じがしたり、胸やけや声がれなどの症状が出たりすることもある。

後鼻漏

鼻水がのどに流れる後鼻漏は、その鼻水の量に比例して喉の不快感や違和感を覚えるようになる。人によっては、それがかゆみと感じることもあるだろう。

喘息

空気の通り道である気道に炎症が起きる喘息は、成人してから発症するケースもある。

喘息には呼吸をするときに「ゼーゼー、ヒューヒュー」と聞こえるの気管支喘息と、その前段階とも呼べる咳喘息がある。咳喘息は咳が主な症状であるため発見されにくい特徴があるが、この咳が出る際にかゆみが伴うケースがあるという。

喉がかゆくなるアレルギー

喉のかゆみの原因はアレルギー症状の一つであるケースが数多くある。喉のかゆみが現れやすいアレルギーには、主に以下のようなものがある。

食物アレルギー(口腔アレルギー症候群)

アレルギーにはさまざまな原因があるが、その中でも食物が原因となって起こるのが食物アレルギーだ。今まで大丈夫だった食べ物や毎日食べているものでも、突然食物アレルギーが発症してしまう症例もある。食物アレルギーは生の果物や野菜、大豆(主に豆乳)、ナッツ類などを食べた後に唇や口の中、喉、耳の奥などにかゆみや腫れ、痛みなどを感じる。

「じんましん、顔や唇の腫れなどの症状も現れることがあり、ときには呼吸困難や嘔吐などを伴って『アナフィラキシーショック』と呼ばれる重篤なアレルギーを起こす可能性があるため、注意が必要です。このアレルギーは、特定の植物の花粉症と関連があるとみられています。花粉アレルギーのある人が、その花粉と似たアレルゲン(たんぱく質)を持つ果物などを食べた場合に反応を起こして発症するものです」

食物以外のアレルギー

食物以外のアレルギーでも、喉のかゆみが生じることがある。花粉やハウスダストなどは呼吸と共に吸い込みやすく、喉にアレルゲンが付着することで、かゆみの原因となることがある。アレルギーの人はもともと鼻づまりなどで口呼吸になっている場合も多く、そのようなときにはより喉のかゆみが現れやすいと考えられる。

喉がかゆくなったときの対処法

1.うがい

宮崎医師によるとうがいは近年、インフルエンザなどの感染症には効果がないと立証されている一方、喉うがいや鼻うがいは、適度に行うと保湿や花粉症などの予防効果が見込めるという。鼻うがいに関しては認知されてきており、実践してる人も多い。

■鼻うがいの方法

(1)食塩水を人肌(36~40度)の温度にして使う
(2)鼻の穴に差しこめるような、ノズルのついたボトルに上記の0.9%食塩水を入れる
(3)一方の鼻を指で押さえつつ、前かがみの状態からやや上を向き、食塩水を鼻に流し込む。入れる量は20ml程度(大さじ1杯程度)で十分。このとき「エー」と声を出しながら行うと入りやすい。また、顔が上を向きすぎないように注意
(4)0.9%食塩水を鼻から出す。慣れてきたら口から出してみる
(5)逆側の鼻も同様に実施。これを2~3回行う

注意点

・鼻うがいのやりすぎは、かえって鼻の粘膜へのダメージとなる場合があるので、一日2~3回までにする
・点鼻薬を処方されている人は、点鼻薬の使用直後には鼻うがいを行わない
・鼻うがいの後に強く鼻をかむと耳の炎症につながる場合があるため、優しくかむ
・鼻づまりが強いときや、喉に痛みがあるときには行わない

2.加湿

風邪やインフルエンザ予防の観点からも、マスクをしたり加湿器を利用して部屋の湿度を高く保ったりすることはよい習慣だそう。一般的な家庭用の加湿器は、蒸気やミストを放出するメカニズムの違いによって、4タイプに分類される。

(1)加熱式(スチーム式)……タンクの水を加熱して蒸気を発生させる。カビや細菌などが繁殖しにくく、販売価格は比較的手頃だが、電気代がかかる。

(2)気化式……不織布やスポンジに水を含ませ、空気を送って蒸散させることで加湿する。電気代は安いがパワーが弱く、掃除が行き届かないとカビの温床になることがある。

(3)超音波式……超音波によって水の粒子を小さくして噴出させるタイプ。水を加熱しないため、タンクの内部が不潔になると雑菌が繁殖しやすく、そのまま空気中に放出されてしまうのが欠点。

(4)ハイブリッド式……(1)と(2)を合体させたようなシステムを採用しているタイプ。水に温風を送って加湿するため、雑菌を放出しにくいという利点がある。加湿速度が速くて消費電力も比較的少ないが、機器そのものの価格はやや高め。

もし加湿器がない場合でも、濡らしたガーゼマスクを夜間使用したり、濡れタオルをハンガーにかけたり、コップに水を入れて置いておくと効果がある。また、首元を温めることも大切とのこと。

3.市販薬

即効性の効果を期待したいのであれば、市販薬を用いるという選択肢もある。喉のかゆみと咳の原因によって対応する薬が異なり、アレルギー反応に伴う咳には抗ヒスタミン剤を配合した市販薬がよい。

ただし、ウイルス性の咳が原因の可能性もあるため、咳の原因が判明するまでは市販薬を用いないのが賢明と言える。

喉がかゆくて咳が出るときは何科を受診すべき?

喉のかゆみを感じてもすぐに快方に向かう、あるいは他の症状が出現していなければ、そこまで急いで受診をする必要はない。発熱や息苦しさなどの諸症状が現れたら病院を早めに訪問するようにしよう。

その際、何科を受診したらよいか悩むかもしれない。実際、喉のかゆみの原因としてさまざまな疾患が考えられるものの、一般的には耳鼻咽喉科や内科が適切と考えられる。

ただし、喉のかゆみと併せて咳の症状が顕現しているようだと喘息の可能性もある。このようなケースでは呼吸器内科を早めに受診し、気管支や肺の状態を確認するのがよいだろう。

喉を守るための予防法

「喉を守るためにはまず、喉が痛いときと同様に栄養バランスがよく、消化のよい食事を摂(と)るといいです。なるべく香辛料やアルコールなどは避け、十分な睡眠や休養をとって、体を健康に保つ生活を心がけましょう。ストレスや疲れが体に残っていると、喉の調子もよくなりません。水分補給をするときは、喉に優しい温かい飲み物を意識するのがポイントです。はちみつやショウガを入れた飲み物がおすすめです」

予防の観点で言えば、加湿器などで室内を適度な湿度(50~60%)に保つことも重要だ。

「喉を乾燥や寒さから守るためにマスクを着用することも効果的です。マスクは、細菌やウイルスが侵入しないように直接的に喉を守るだけでなく、喉に適度な湿度を与えられます」

外出時のマスクは乾燥を予防するだけでなく、感染症からも体を守ってくれる。マスク着用と並行して、普段からの手洗い励行もおすすめだ。体が健康であれば、免疫力が働き、細菌やウイルスなどの外敵の侵入を防げる。


これらのアドバイスをもとに、花粉症やアレルギーのある人は特に注意して、日頃から予防を心がけよう。

※写真と本文は関係ありません