営業職やサービス業など、毎日他人に接する機会が多い職に就いている人たちは、常日頃からさまざまなエチケットに気を配っている。そのエチケットの一つに「口臭」も含まれているだろう。

話相手の呼吸から漂ってくる臭いがきつければその人には好感を抱きにくいし、下手をしたらビジネスチャンスを逸しかねない。相手に不快な思いをさせないための息対策は、社会人としての最低限のマナーといっても過言ではないだろう。

ところで、この口臭を招く要因の一つに「臭い玉」(においだま)なる存在があることをご存じだろうか。今回は日本耳鼻咽喉科学会認定専門医の宮崎裕子医師に口臭の原因や臭い玉の正体、さらにはその予防法などについてうかがった。

  • 口臭にもつながる「臭い玉」とは何なのか

口臭の主な原因

誰もが気になる口臭だが、実は程度の差こそあれ、「誰でもある程度の生理的な口臭はあるものです」と宮崎医師は話す。

「口の中から出る臭いは、特に唾液の分泌に影響されます。唾液には口の中を洗浄・自浄する作用があります。『食べるときに咀嚼する』『話す』などの動作によって口を動かし、唾液腺を刺激することによって唾液が分泌されます。唾液が減って口の中が乾燥すると自浄作用が低下し、たんぱく質を分解する細菌が増えるので、口臭の臭いがきつくなります」

不快な口臭の大半は、舌苔(ぜったい: 舌の表面についた食べカスや細菌のカス)や唾液、食物のカスなどに含まれるたんぱく質が、口中にいる細菌により分解・発酵される過程で出るガスによって引き起こされる。この口腔内の食物や細菌のカスを増殖させないことが、口臭を抑えるためのカギとなる。

口臭の主な要因は以下の通りだ。

・舌苔の異常
・歯周病
・耳鼻科の病気(副鼻腔炎による膿汁、扁桃膿栓)に伴う臭い
・消化器の病気(逆流性食道炎)をはじめとする種々の病気

「特に強い口臭を起こす原因として最も多いと言われているのが舌苔です。多少の舌苔は健康な人にもありますが、『口の中が乾いているとき』『体調がよくないとき』『胃腸の病気や脱水を伴う病気があるとき』などに舌苔が厚くなると口臭の原因となります。胃腸の調子がよくないときに舌苔が増えるのは、舌の感覚を鈍らせて食欲を減らし、食べる量を減らして胃腸を守るためだと言われています」

舌苔の次に多い原因は歯周病だ。歯周病によって口の中にたまっている歯垢(プラーク)も舌苔と同じく多量の細菌とたんぱく質の集合体であるため、炎症によって多量のたんぱく質が細菌に分解されると強い口臭を伴う。

耳鼻科の病気(扁桃炎、副鼻腔炎など)は炎症が鼻や喉にあると、菌や膿汁が流れ込んでしばしば口臭を発生させる。

口臭を招く臭い玉とは

そしてさらに、扁桃膿栓(のうせん)と呼ばれる箇所にできる臭い玉も、強い臭いを生じさせるという。

「口を開けると、喉の奥、左右の脇に見える口蓋(こうがい)扁桃(いわゆる扁桃腺)は、外からの異物や細菌、ウイルスなどの侵入を防ぐ役割を持っています。口蓋扁桃にはくぼみ(陰窩)があり、炎症があるとその陰窩に細菌や白血球の死骸や食べ物のカスなどがたまりやすくなります。この貯留物は「におい玉」(膿栓)と呼ばれており、異臭があることから『臭い玉』と呼ばれることがあります(※以下、本文内では臭い玉の表記で統一)」

扁桃がある限り臭い玉は誰にでもできるし、風邪をひいて扁桃腺が腫れたら臭い玉ができやすいということになる。何も症状がなければ通常の臭い玉は放置しても問題ないそうだが、臭い玉が口臭の原因になるケースもあると宮崎医師は話す。もしも口臭が気になったり、臭い玉が貯留することで喉の違和感が続いたりするようだと、治療の対象になる。

「臭い玉のせいで喉に異物感や異常感がある場合は、取り除くケースがあります。臭い玉が気になるようでしたら、耳鼻科での洗浄・吸引にて取ることも可能です。洗浄・吸引で一時的に臭い玉や膿汁が除去されるため、不快感は改善しますが、1回の処置ですべてがきれいにできるわけではなく、何度でも洗浄・除去するという処置を繰り返します」

耳鼻咽喉科では「圧迫して押し出す」「吸引やピンセットで取り除く」「薄めた食塩水で洗い出す」といった処置を行う。根本的な治療として、手術で扁桃摘出という選択肢もあるが、そこまでを希望する人は少ないようだ。

臭い玉はできてから時間が経つにつれて石灰化し、硬くなる。普段は陰窩の中に入っているが、時にポロッと取れるケースがあるという。綿棒などで自分で陰窩から臭い玉を取り除こうとする人もいるそうだが、扁桃腺を傷つけてしまうリスクがあるため注意が必要だと宮崎医師は警鐘を鳴らす。

「臭い玉は免疫機能が働くことによって発生するものであり、体が正常に働いている証拠でもあります。怖い病気でも何でもないですが、臭いが強烈で口臭が酷くなれば周りにも迷惑がかかります。普段から発生させない予防法を意識して取り入れたり、安全な洗浄方法で取り除いたり、対応してくれる病院を見つけたりすることが大切です」

口腔内の形状によってできやすさは個人差があるが、できた臭い玉は基本的には臭いが強く、喉に違和感を発生させる可能性がある。自分に合った対策方法を探して、臭い玉とうまく付き合っていくことが大事とのこと。

臭い玉の予防法

上述のように扁桃がある人ならば誰しもができてしまう臭い玉ではあるが、予防する方法もいくつかある。一つずつ解説していこう。

(1)うがいをこまめにする

特に冬は空気が乾燥し、細菌やウイルスの付着した塵やほこりが舞い上がりやすくなるため、喉に炎症が発生しがち。こまめにうがいをすることによって臭い玉ができる可能性が減り、口腔内を清潔に保てる。うがい薬を使ったり、殺菌作用の高い緑茶や紅茶を飲んだりするのも臭い玉予防の可能性が高まる。

「あとは鼻うがいもお勧めです。鼻うがいで鼻詰まりが生じたときは喉に炎症が起こりにくく、普段取ることができないような臭い玉が取れる可能性があり、臭い玉の原因になるものを洗い流せるかもしれません」

(2)鼻呼吸にする

呼吸法を鼻呼吸にするのも有効な予防法。口呼吸をすれば口腔内が乾燥して細菌増殖のリスクが高まり、喉の炎症を起こしやすくなるなど、健康被害が大きくなりがち。鼻呼吸すれば鼻から息を吸う過程で鼻毛が「細菌フィルター」の役目を果たしてくれるため、空気中のチリなどを吸わずにすむ。

「睡眠時に口呼吸を行っている方は、朝起きた際に強烈な口臭があったり、喉が痛かったりするというケースが多いですが、臭い玉を作る原因にもなるので積極的に鼻呼吸に変えていきましょう。花粉症などアレルギー疾患がある方は、点鼻薬の使用もお勧めします」

(3)扁桃腺を切除する

そしてそもそも、扁桃腺を病院で切除してもらえば臭い玉ができることはほぼなくなる。まさに「究極の予防法」と言えるだろう。

「臭い玉ができる原因部分をなくせるので、発生リスクが激減することは自然な流れです。口腔内の形状によっては臭い玉ができやすい人もいますので、思いきって病院で治療するのも一つの方法です」

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 宮崎裕子(ミヤザキ・ユウコ)

耳鼻咽喉科みやざきクリニックの院長。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医 補聴器相談医 身体障害福筺祉法指定医師。毎日の診療をする傍ら3児の母でもあり、患者様の悩みに寄り添った診療を心がけています。