BSテレ東で14日に放送された『第52回日本作詩大賞』にて、各受賞結果が明らかになった。

  • 左から松岡弘一、氷川きよし

    左から松岡弘一、氷川きよし

同賞は、曲や歌手ではなく“作詩”に与えられ、昭和43年に始まった歴史ある賞となっている。大賞に輝いたのは、松岡弘一による「最上の船頭」(歌唱:氷川きよし)で、歌い終わった氷川が松岡の背中を優しく撫で、2人とも感極まった様子を見せた。優秀作品賞には、吉田旺「俺でいいのか」(歌唱:坂本冬美)、石原信一「雪恋華」(歌唱:市川由紀乃)、最優秀新人賞は吉井省一「ひとり酔いたくて」(歌唱:石原詢子)、優秀新人賞は茂木けんじ「大阪おかん」(歌唱:石原詢子)に決定した。

松岡弘一コメント

実は僕は、『箱根八里の半次郎』を聞いて作詩家を目指したんです。腕立て伏せをやっていたとき、ラジオから曲が流れてきて、”誰だろうこれ、気持ちのいい歌い方するなぁ”と思って。長谷川伸さんがやっている新鷹会(新人作家の発掘)で理事をやっていて、そこで『箱根~』の松井由利夫先生にお会いして”松岡さんも詞を書いてみない?”と言われたのがきっかけなんです。松井先生には2年半の間に5、6回見ていただいたんですけど、亡くなってしまって...。今やっと”やったね! 松岡!”と言ってくださっていると思います。20年で氷川さんにたどり着けたのは奇跡ですよね。氷川さんは完璧に私の世界を汲み取ってくれた。歌が上手いのは当然ですけど、大スターになる人は視聴者に届くだけの感受性の鋭さがないとダメなんだなとつくづく思いました。あと、レコーディングの時、スタッフの女性がスカーフを落したんですよ。それを氷川さんがさっと自然に拾ってね。すごいなと思ったの。駆け出しの人ならともかく、トップを20年も走っている人が自然と...なんとチャーミングな人なんだろうと思いましたよ(笑)。同時に人間としての器の大きさを感じました。氷川さんはどの世界でも歌える人。ロックの時の突き抜ける感じは、”この人は人間なのか!”と思うし(笑)。リズム感がものすごいから、なんでもできるんでしょうけども、時代小説のような古い歌も、忘れないで欲しいなと思います。これから古き良き義理人情の世界を継続していけるってのが、まずは何より嬉しいです。

氷川きよし コメント

涙が出ます...松井先生と松岡先生のお話を聞くと...ご縁を感じますし、胸にぐっとくるものがありました。松井先生が大事にされている松岡先生と言う小説家の方がいらっしゃるというのは昔から伺っていたんですけど、いつ作品を頂けるのかなと思っていた時、20周年の年に松岡先生の『最上の船頭』という曲を頂けるんだよということを伺って...。最初に詞を読んだ時、情景とか心情とか、人情、船頭さんの心とか全部自分の中に入ってきて、”この世界をうまく自分で表現できるかな”と思ったんですけど、歌った時にすっと気持ちが入っていて、小説の世界に気持ちがファッと自然に乗ったんですよ。1コーラス目、2コーラス目、3コーラス目と話が展開していくので、すごく面白い素晴らしい作品だなと思って感動しました。若い2人を歌ったロマンチックな世界ですけど、自分的にも”これから船が出るよ! 21年目がスタートするよ”という気持ちになりますし、2人の恋を応援する船頭さんの優しさ、慈愛、真心を伝えていける作品なので、大切に一生歌っていきたいなと思います。2020年は、芸能生活21年目に入ります。今日の作詩大賞で松岡先生の作品が受賞したこともありますし、2020年もいいスタートが切れそうだなと思います。頑張っていきたいです!

吉田旺 コメント

本当にこういう場に出てくるのが久しぶりで、「浦島太郎」というような...今回こういう賞を頂いて、「まだまだ書けるかな」という元気を頂きました。実は僕結婚した当時に、「ヒモ」状態で、『俺でいいのか』の歌詞は僕の本音。だから僕は妻に過去形で「俺でよかったか」って聞いてみようと。たぶん失敗したって言われると思いますが(笑)歌のイメージとしては「近松心中物」に出てくる「色っぽくていい男なんだけど気が弱い」そんな男なのですが、坂本さんはその雰囲気を出してくれて、とてもいい楽曲にしてくれました。

坂本冬美 コメント

この歌は普通の「男歌」ではなくて、最初に女性を描写しているんです。そこから男性の目線で繰り広げられていくわけで、ただただ力強いというだけではなく、そこには優しさや包容力だったり、本当に奥が深い歌だと思っています。私がある時に取材で「もしかしたらこの曲の男性はダメ男なのかもしれない」って言っちゃったことがあるんですけど・・・でもそれは女性には「母性本能」っていうのがあって、「ほっとけない」っていう思いが伝わってくるなと。だから先生の奥様もそんなお気持ちだったんでしょうね。でもとにかく今日先生にご出演いただけたのが奇跡なんです!ですので今日、優秀作品賞を頂けたことで、来て頂いた甲斐がありました。改めて心して歌わせていただきます。

石原信一 コメント

丸5年温めた楽曲を評価していただき、本当にありがとうございました! 「雪恋華」は何度も聞いていますが、今回の作詩大賞にかける市川さんの歌声は本当に秀逸で震えました。レコーディングの時には5年お腹で温めて、やっと出産したような気持に...(笑)「やっと出せたね」という思いを市川さんと共有しました。今回の楽曲は「近松門左衛門」を下地にしているんですが、心中するまで行かずとも「命がけで最後まで愛を貫く...その果ては...」という「最後まで燃焼しぬく男と女の世界」を描きたかったんです。今年は日本レコード大賞で市川さんが「最優秀歌唱賞」、そして私は今回、日本作詩大賞で「優秀作品賞」をいただき、二人で力を合わせて獲らせていただいたという感じで、非常に充実した年でした。

市川由紀乃 コメント

石原先生の作品は以前からファンであり、先生の作品は自分のオリジナル曲でも何度も歌わせていただいているのですが、描かれる「女心」は幸せな心情もあれば、今回のように「情念」という形もあり、今後こう言う形のものも歌わせていただきたいと思える作品でもありました。そして5年間温めていた先生の楽曲を今年出せた喜びというのが大きいです。先生の前で歌わせていただく緊張感が...でも今日はやっぱり自分の歌唱がちょっと成長しているという部分を先生に感じていただけたらなと思い、歌いました。「これからの歌手人生を頑張っていける」という力を頂いた曲なので、年を重ねるごとにこの楽曲がどうか変わっていくのか? というのを先生やお客様に感じていただけるようにしていきたいです。