12月15日にいよいよ最終回を迎えるNHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)で、1964年の東京オリンピックを盛り上げるべく、日本オリンピック委員会常任委員として尽力した岩田幸彰役を好演してきた松坂桃李を直撃。

阿部サダヲ演じる田畑政治は、失脚後も、岩田、松澤一鶴(皆川猿時)、森西栄一(角田晃広)たちと共に “裏のオリンピック組織委員会”を開き、大奮闘してきた。そして、ドラマは感動のフィナーレを迎える。松坂は、共演した阿部から大いに刺激を受けたそうだ。

  • 松坂桃李

    『いだてん~東京オリムピック噺~』岩田幸彰役の松坂桃李

――岩田は戦争の経験者で、オリンピックを目指していたが、その夢は叶わなかったという役どころでしたね。

岩田役を演じるにあたり、田畑さんの魅力だけに惹かれたわけではなく、オリンピックに対する並々ならぬ強い思いがあったからこそ、田畑さんについていったことを知れたのが、すごく大きかったです。すなわちオリンピックに選手として出られなかったが、裏方になって、東京オリンピックに参加させていただいきたい、という想いがあったので、個人的にはすごく演じやすかったです。

――今回の宮藤官九郎さんの脚本はいかがでしたか?

思わず笑っちゃうシーンもしばしばあり、緊張と緩和のバランスが絶妙なところが宮藤さんらしい脚本だなと思いました。すごく緊張しているシーンでも、いざ現場に入ってお芝居をすると、笑いが起きるんです。実際に演じてみて気づくこともありました。

――岩田が女性に囲まれているシーンもありますね。

岩田さんは実在する方なので、岩田家の方に怒られないかなと(苦笑)。ただ、歴史をひも解いていくと、こういう描写もあったんじゃないかとのことで、宮藤さんもそこを描かれたのかなと思います。そこはキャラクターの多面性を見せるうえで、エッセンスとしては必要なことだったのでしょう。当時の方々の豪快さがわかり、妙に納得しました。

――裏オリンピック組織委員会の会合は、毎回とても生き生きとしていて楽しそうでした。

毎回面白いです。裏組織委員会のあるシーンで、田畑さんが「もう我慢ならん」と怒りながら、途中でズボンを脱ぎ始めるシーンがあって。脚本で言葉だけを追っても面白いのですが、本当に可笑しかったです。「何をするんですか、田畑さん!」と驚くと、すでに田畑さんが、ほぼパンイチ状態になって家を出ていくんです(笑)。

――阿部さんならではのコミカルな演技ですね。

阿部さんのお芝居は本当に面白いです。僕は今回、岩田役を通じて、阿部さんのお芝居を間近で見られる一番のお客さんとしていられたことが、とてもいい時間だったと思いました。

  • 松坂桃李

――改めて岩田役を演じ終えてみて、彼はどういう人物だったと受け取りましたか?

長い期間にわたって、岩田という人物を知ることができて、改めて熱量がすごくある男性だったと僕自身は感じています。向き合い方としては、岩田役を通して、田畑さんと向き合うことにより、僕が岩田と向き合えた気がします。つまり、田畑さんありきの岩田みたいなところもあったのかなと。あの嵐の渦の中心に巻き込まれた1人でもあったので、田畑さんがどう動くかによって、岩田の反応も変わったりしました。僕としては、できるだけそれに対応したいと思って演じていました。

――松坂さんが感じた田畑政治の魅力についても聞かせてください。

1つのことを成し遂げるために、周りの顔色をうかがうことなく、こういうことをやろうと全面的に押し出していける田畑さんは強い人だったなと思います。その結果、いろんな人を引きつけました。今の時代にもやっぱりそういう人が必要なのではないかと思いました。

――いよいよ2020年は、東京オリンピック&パラリンピックの年となりますが、『いだてん』に出演したことで、何か心境の変化などはありましたか?

そうですね。今回『いだてん』という作品で、東京オリンピックの裏側を疑似体験させていただいたことによってオリンピックがより身近になり、自分も他人事ではない感じに思えてきました。田畑さんが言っていたように、日本の最大のお祭りになるんじゃないかなと。また、そうなればいいなと思っています。最後は選手みんなで、勝ち負け関係なく称え合う。国籍関係なくみんなで「よくやった」と言い合えるような祭典になればいいなと思っています。

  • 松坂桃李
■プロフィール
松坂桃李(まつざか・とおり)
1988年10月17日生まれ、神奈川県出身の俳優。2009年に『侍戦隊シンケンジャー』で俳優デビュー。2019年には『孤狼の血』(18/白石和彌監督)で第42回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。他の主な近年の出演作は、映画『不能犯』(18)、『居眠り磐音』(19)、『新聞記者』(19)、声の出演をした『HELLO WORLD』(19)など。NHKの大河ドラマは『軍師官兵衛』(14)に続き2度目の出演となった。

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